2016 Fiscal Year Research-status Report
日本人高齢者連続剖検例を用いた疾患感受性遺伝子多型の病理フェノーム関連解析
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15K08712
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Research Institution | National Center for Global Health and Medicine |
Principal Investigator |
池田 仁子 国立研究開発法人国立国際医療研究センター, その他部局等, 上級研究員 (20415508)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | PheWAS / 日本人高齢者 / 連続剖検例 / 病理フェノーム情報 / SNV / Lp(a) / 悪性腫瘍 |
Outline of Annual Research Achievements |
心筋梗塞以外の心血管疾患のPheWAS解析を行った。既知のGWAS研究で同定された心筋梗塞関連遺伝子の中から、いま世界的に注目を集めているが、日本ではほとんど研究されていないLp(a)遺伝子に焦点を当ててPheWASを検討した。Lp(a)遺伝子多型の中から、日本人集団(HapMap-JPTや既報の論文など)における各多型のマイナーアレル頻度(MAF)が20%以上の候補遺伝子多型を13個選出し、約2300検体の日本人高齢者連続剖検例から得たDNAを使って、exome-chipにより判定した。判定後、除外検体を除いた1925検体のジェノタイピング判定結果に、粥状硬化指数、冠状動脈硬化指数等の臨床病理情報や生活習慣情報などを統合して、PheWAS解析用のデータセットを作成し、各フェノーム情報と多型の関連を検討した。その結果、日本人高齢者集団において、4つの多型で様々なタイプの癌との関連を新規に見出すことができた。さらに、統計学的に癌と有意な関連が見られた多型では、血清Lp(a)値とも、有意な関連が見られた。これらの結果は、日本人において初めて得られたものである。欧米では血清Lp(a)値が心血管リスクの判定に用いられるほど、一般的な一般的な検査項目だが、日本ではほとんど測定されていない。本研究におけるPheWASの結果は、これまで報告が無かったLp(a)遺伝子と悪性腫瘍の新たな関連を見出し、これまで言われていたLp(a)の血栓形成及び炎症促進効果以外に、腫瘍効果を持つことを示す事ができた。この研究結果は、2016年5月にオーストリアのインスブルックで記載されたヨーロッパ動脈硬化学会の中に特別に設けられた国際Lp(a)サテライトミーティングで発表し、多くの欧米の研究者と有意義な議論を繰り広げ、論文化に向けて非常に良い意見をもらう事ができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度の結果を受け、本年度には新たな心血管疾患関連遺伝子の新たな疾患関連を見出す事ができ、計画通り、研究は概ね順調に進捗していると判断している。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度(平成29年度)は、脳血管疾患(脳出血、脳梗塞、血管性痴呆症など)のPheWAS解析を検討する。痴呆症の既知疾患感受性遺伝子としてGWASで同定されているTOMM40遺伝子とAPOE遺伝子に焦点を当てて、遺伝子多型を選出し、脳動脈狭窄指数(ICAI)等の病理フェノーム情報や神経病理データとの関連をPheWAS法で解析する。 選出する遺伝子多型はAPOE遺伝子では痴呆症のリスク因子として有名な3つのイプシロン(ε) アレルε2, ε3, ε4を判定するのに使われるrs7412多型とrs429358多型の解析を予定している。TOMM40遺伝子については、APOE遺伝子多型イプシロン(ε) アレルとのgene-gene間の関連が見られているポリT多型などを予定している。他にも、脳出血や脳梗塞の感受性遺伝子の中から、日本人集団でMAFが20%以上のSNVを幾つか選出する予定である。 候補遺伝子のSNVは約2300検体の日本人連続剖検例から得たDNAを使って、TaqMan SNP Genotyping Assay及びTaqMan CNV Assay、あるいはexome-chipによりジェノタイプ型を判定し、病理フェノーム情報等と結合して、統計解析用データセットを作成する。PheWAS解析にはSAS統計解析ソフトウェアを用いて、Chi-square test, Fisher test, ANOVA, logistic regression等により各多型とフェノームとの関連を解析する。全ての解析結果はP-値が0.05未満の時に統計学的に有意であると判定する。 病理フェノーム情報には脳動脈狭窄指数(ICAI)や神経病理データ(脳重量、厚み、石灰化の有無等)があり、これらと各多型の相互関連を詳細に解析してゆく。
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