2016 Fiscal Year Research-status Report
胎児期から出生後早期の環境が、小児肥満、成人の生活習慣病に与える影響の疫学的検討
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15K08731
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Research Institution | Aichi Medical University |
Principal Investigator |
鈴木 孝太 愛知医科大学, 医学部, 教授 (90402081)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
平田 修司 山梨大学, 総合研究部, 教授 (00228785)
山縣 然太朗 山梨大学, 総合研究部, 教授 (10210337)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 疫学 / コホート研究 / 母子保健 / マルチレベル解析 / DOHaD説 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度は、妊娠期についての研究を中心に、以下のような研究を実施した。まず、妊娠期については、以前より収集していた山梨県内の3医療機関における妊婦健診データを用いて、低出生体重児や早産児の母親における妊娠中の体重増加が、そうでない児とどのように異なるかを、マルチレベル解析を用いて検討した。さらに、妊娠中の体格別に、分娩後の体重減少にどのような因子が影響しているのか、また、妊娠中の喫煙が妊娠前の体格や妊娠中の体重増加とどのように関連して、出生体重に影響しているのかを検討した。一方、昨年から新たに研究対象地域となった和歌山県御坊市で収集した、地域における母子保健情報を用いて、妊娠中の喫煙が出生体重に与える影響の地域差についての検討や、妊娠期から乳幼児健診にかけて収集した、母親の喫煙状況に関するデータなどを用いて、地域における喫煙状況の検討などを実施した。さらに、学童期にかけての検討については、山梨県甲州市と山梨大学大学院総合研究部医学域社会医学講座で実施されている母子保健縦断調査のデータを用いて、妊娠中の喫煙が子どもの発育に与える影響が、出生体重によってどの程度異なるかを検討した。 これらの研究成果については、平成28年度に行われた国内学会、またアメリカで行われたSER、SPER、さらに、北九州で行われた環境疫学に関する国際学会(PPTOX)で発表した。また、平成29年度に行われる複数の国際学会に演題を応募し、採択されている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在までに、山梨県内3医療機関から1000例以上、延べ10000回以上の妊婦健診データを収集しており、さらにこのデータから、妊娠中の体重増加が妊娠中期以降はほぼ直線的であること、さらに、妊娠中の喫煙者で体重増加量が大きいことと、一方でこれまでの研究と同様、児の出生体重が小さいことなどを明らかにしてきた。平成28年度は、低出生体重児の母親では、妊娠中の体重増加が少ない一方で、早産児の母親では妊娠中の体重増加は正期産児の母親と同様であることなどを明らかにした。今後、体重増加だけではなく、妊婦健診で推定されている胎児の体重や、母親の血圧の変化などについてもマルチレベル解析を用いて検討し、平成29年度に行われる国際学会で発表する予定である。 次に、妊娠中の喫煙が出生体重を減らす一方で、児の発育に関しては肥満傾向となりやすいことが示唆されているが、出生体重を基準に妊娠中の喫煙とその後の発育を検討したものはないことから、出生体重を四分位で層化し、それぞれの群における妊娠中の喫煙が児の発育に与える影響をマルチレベル解析により検討し、平均よりも出生体重がやや小さい群で、妊娠中の喫煙が体格に与える影響が大きいことを明らかにし、国際学会で発表した。 以前から使用してきた山梨県で収集していたデータに加え、新たな研究対象地域である和歌山県での調査を進めており、新たな知見も得られていることから、研究の達成度としてはおおむね予定通りであると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度までの結果をもとに、平成29年度は、研究代表者が執筆責任者として利用することが可能である、エコチル調査の出生時全固定データ(約10万人分)を用いて、妊娠中の体重増加が、妊娠中の喫煙と胎内発育との関連などについて、より詳細な検討を進めていく予定である。このエコチル調査のデータや、21世紀出生児縦断調査のデータを用いて、社会経済的状況が、妊娠中の喫煙と出生体重の関連においてどのような役割を果たしているかも検討する予定である。また、これまで山梨県で収集してきたデータについても、これまでの研究成果はもちろんのこと、より詳細な解析を進め、原著論文としてまとめていく予定である。 さらに、新たな研究対象地域である、和歌山県御坊市や御坊保健所管内の市町、さらには母子保健データの利活用を進めている地域でも、妊娠中の喫煙が胎内発育に与える影響に加えて、さまざまな母子保健の課題を抽出し、DOHaD説に沿った検討を進める予定である。その一方で、研究成果を地域へと還元するために、研究成果をもとにしたリーフレット作成や、地域での啓発活動などを、地域の保健担当者と共に行う。 成人期に関する検討については、研究代表者が異動したため、新たに産業医を務めている事業所などの健診データなどを収集し、後ろ向きではあるが、幼少期の健康状態などとの関連を検討する予定である。
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Causes of Carryover |
研究代表者が平成28年5月に現所属に異動し、それに伴い、データ入力など、前所属で使用を予定していた分の人件費、また購入を予定していた消耗品費などが使用できなくなったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成29年度は、平成28年度までと同様、御坊市での母子保健縦断調査にかかる、入力作業などの人件費(アルバイト)や調査用紙、報告書の印刷費用、また、御坊市や新たな研究対象地域での研究打ち合わせに関する費用、さまざまな消耗品購入を目的に研究費を使用する予定である。さらに、平成29年度は、これまでの成果を、学会で発表したり、国際誌へ投稿したりすることにかかる費用についても、研究費から使用する予定である。
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