2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K08780
|
Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
望月 仁志 宮崎大学, 医学部, 講師 (50501699)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | 砒素中毒 / 神経生理学 / 感覚障害 / 体性感覚誘発電位 / 神経学的所見 / 末梢神経障害 |
Outline of Annual Research Achievements |
宮崎県高千穂町土呂久鉱山における慢性砒素中毒患者は、1973年以降住民検診が続けられている。神経学的診察および神経伝導検査は主に宮崎大学神経内科診療グループにより長年実施され、現在においても毎年30-80名が受診している。砒素曝露後40年以上経過を追った研究は世界に例がなく、この分析で得られる知見は全て世界初の報告である。 神経学的診察所見の分析では、それぞれの項目を定量数字化し、生理学的検査の結果も含めて、経時的経過を電子データとして入力した。その中の分析で、神経線維径が大きい深部感覚は砒素曝露後40年間で進行性に悪化している一方で、表在覚は一定の傾向がみられず、線維径により経過が異なることが示された。 慢性砒素中毒患者の感覚障害には、四肢遠位部のみならず、体幹部に強い感覚障害を認めることが一定の割合で存在した。そこで、内科的な他の合併症のない症例に対して、体性感覚誘発電位を実施した。年齢を一致させた正常群と比較して、慢性砒素中毒患者群は、中枢感覚伝導時間が有意に延長していることが証明された。これまで知られていた慢性砒素中毒による感覚障害は、末梢神経障害のみならず、中枢神経障害による要素も関連していることが初めて示された。曝露後40年以上経った現在においても、中枢神経障害が残存していることが世界で初めて報告した。この事項については英文論文にて成果を発表した。 現在は、視覚フリッカー試験、自律神経障害の定量化を実施しており、データが蓄積されつつあり、慢性砒素中毒がどの経路に強く障害をもたらすかが明らかになりつつある。動物実験に関しては、砒素投与系の研究がスタートした。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
住民検診のデータは電子データ化し、容易に分析可能な状態となった。神経障害については、分析を多方面から行い上記の成果を得たが、内科的所見については、分析はまだしていない。 神経生理学的解析、脳機能分析は一部実施済みであるが、今後行う項目が残っている。 動物実験での検証については、ヒトにおける障害がある程度判明した時点での開始が望ましいと考え、現時点では緒についたところである。意義のある研究結果が見いだせるかどうかは不明である。
|
Strategy for Future Research Activity |
住民検診のデータは電子データ化し、容易に分析可能な状態となった。神経障害については、分析を多方面から行ったが、内科的所見については、今後実施する。 神経生理学的解析、脳機能分析は一部実施済みであるが、今後行う項目が残っている。これらの解析により砒素による障害がどの経路に生じやすいのかを特定できるようになる。 動物実験での検証については、現時点ではスタートした段階であり、意味のある研究結果が見いだせるように、投与する砒素濃度の工夫を行う。当初は神経系のみの解析をする予定であったが、肝臓などの実質臓器の分析も追加予定である。
|
Causes of Carryover |
動物実験の試薬をまだ購入していない分が多数あるため、次年度にまとめて購入予定である。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
ヒトに対する研究と動物に対する研究を並行して実施する。試薬も早期に購入する予定である。
|