2017 Fiscal Year Annual Research Report
The effects of chronic arsenic toxicity on nervous system
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15K08780
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Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
望月 仁志 宮崎大学, 医学部, 講師 (50501699)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 砒素 / 神経学的評価 / 末梢神経障害 / 体性感覚誘発電位 / 土呂久 / ミャンマー |
Outline of Annual Research Achievements |
慢性砒素中毒症は多臓器にまたがる障害を呈し、近年多くの国において健康被害の大きな脅威となっている。宮崎県高千穂町土呂久鉱山では、かつて砒素鉱山があり、1920年から1962年までの間、間欠的な亜砒酸ガスの大量飛散により高濃度の慢性砒素中毒患者が生じた 。その障害に対する住民検診として、1973年以降詳細な神経内科診察および神経伝導検査が40年以上実施され、現在でも毎年30-80名が受診している。 これまでの研究結果から、神経学的診察においては、著明な温痛覚(小径線維)障害を中心とした末梢神経障害を呈し、重症例では深部感覚(大径線維)障害を併発することが判明した。しかしながら、一部の症例では末梢神経障害だけでは説明困難な全身の感覚障害を呈する患者がいる。そこで中枢神経系の誘発電位法を利用して、慢性砒素中毒症においては軽度ではあるが、有意に中枢伝導時間の遅延が認められ、最終曝露から40年以上も中枢神経障害が残存していることを示した。 最終年度の研究では、低濃度ではあるが飲料水砒素汚染が広がっているミャンマー国において、2000人規模の住民検診を現地医師と協力して、飲料水の砒素濃度、神経学的評価を実施した。WHOが定める10ug/Lを越えた飲料水を飲んでいる群では痛覚(小径線維)における末梢神経障害が推測された。50ug/Lを越えた飲料水を飲んでいる群では振動覚(大径線維)における末梢神経障害と中枢神経障害を含む2点識別覚が、コントロール群に対して有意に障害を呈した。 低濃度から高濃度における砒素中毒においては、小径線維、大径線維、中枢神経系の順番で障害を呈することが示唆された。また、中枢神経障害に関しては長期間その障害が残存する可能性が示された。これらの結果は、世界で初めての知見であり、世界に数千万人と言われる砒素中毒患者の診療にとって極めて重要な情報となる。
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Research Products
(8 results)