2016 Fiscal Year Research-status Report
臨床検体由来Bacillus属分離率施設間比較による院内感染対策の指標作成
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15K08863
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Research Institution | National Institute of Infectious Diseases |
Principal Investigator |
鈴木 里和 国立感染症研究所, 細菌第2部, 室長 (30373400)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
東 秀明 北海道大学, 人獣共通感染症リサーチセンター, 教授 (20311227)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | Bacillus cereus / 血流感染症 / 院内感染 |
Outline of Annual Research Achievements |
厚生労働省院内感染対策サーベイランス(JANIS)事業、検査部門の2008年~2014年の入院患者由来検体を対象として解析を行った。Bacillus属菌は7年間にのべ4105医療機関由来の131,346検体より分離されていた。検体の種類として血液、糞便、呼吸器系、その他がそれぞれ約1/4ずつであった。菌種別では、B. cereusが21.0%、B. subtilisが7.8%で同定がなされていないのが71.1%であった。菌種の同定率と割合は検体によって大きく異なり、血液検体では55.3%が同定され、9割がB. cereusであった。一方、糞便や呼吸器検体では同定率は15%前後のみであった。 血液検体と糞便呼吸器検体(非無菌検体)からの100床あたりのBacillus属菌を医療機関ごとに比較したところ、相関は認めなかった。季節性について検討すると、B. cereusは血液、呼吸器、糞便とどの検体も夏季にピークを示した。B. subtilisはいずれの検体においても明確な季節性は認めなかった。Bacillus属菌全体では、検体によって異なり、血液、呼吸器系では夏季に多いが、糞便検体ではその傾向は見られず、血液、呼吸器検体由来のBacillus属菌ではB. cereusの、糞便検体ではB. subtilisの占める比率が高いことが推察された。 B. cereusの血流感染症に明確な季節性を認めたこと、セレウス食中毒の9割が夏季に発生していること、また、文献的にはB. cereus血流感染症の侵入門戸として腸管が主に指摘されていることから、カテーテル管理や採取時の汚染とは異なる要因の存在も考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の研究計画ではB. cereusの分離数を検体種別、医療機関別に比較する予定であったが、非無菌検体では7割以上で種レベルの同定がなされておらず、B. cereusの分離株数が極めて小数となってしまい、解析不可能であった。そのため、種レベルの同定を行っていない株も含めたBacillus属の分離株での比較を行わざるを得なかった。またBacillus属としてまとめた場合も、医療機関によっては分離数が極めて少なく、定量的に比較することが困難であった。一定の割合でBacillus属が分離されている医療機関に絞り、血液検体と糞便呼吸器検体(非無菌検体)からの100床あたりのBacillus属菌の分離率を比較したが、両者には相関は認められ無かった。そのため、非無菌検体のBacillus属菌分離数から血流感染のハイリスク医療機関を推測することは困難と考えらえた。非無菌検体から分離された場合に感染症の起因菌として可能性が低くなるBacillus属菌のような菌種の場合、非無菌検体からの分離は培養陰性として扱われ、株情報をJANISに登録していない医療機関が存在する可能性も示唆された。また、分離株として登録されていた場合も、Bacillus sp.として登録され菌種同定がされていない株が大半をしめ、血液検体であっても半数は菌種の同定がされていなかった。B. cereusとB. subtilisは病原性や生物学的特性が大きく異なるため、この2菌種を合わせて解析することの有意性は低いと思われ、種レベルの同定情報を含むデータの解析が必要と思われた。
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Strategy for Future Research Activity |
当初計画していた、JANISデータのみの解析では菌種の同定割合の低さから、B. cereusの分離状況の記述疫学を正確に実施することが難しい。そのため、最終年度は、協力医療機関および検査センター等に依頼し、臨床検体より分離されたBacillus属菌をすべて収集し、菌種の同定を行うこととした。これにより、検体別の菌種割合が明らかになると思われる。菌株の収集は夏季(6月-9月)にかけて行う。また、血液検体より分離された症例が報告された場合は、該当医療機関に依頼し、詳細な患者情報を収集するとともに、同時期に同病棟に入院していた患者を対照として、症例対照研究を実施する。これにより、カテーテル以外の感染経路の可能性を検討する予定である。、 一方、当初予測していなかった、強い季節性を認めたこと、および文献検索からはこれが日本に比較的特徴的であることから、その要因について、環境要因および細菌学的要因を検討することとした。
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Causes of Carryover |
当初予定されていた、分離率の高い医療機関と低い医療機関との比較が不可能であったため、本来平成28年度に計画していたこれらの医療機関からの菌株収集を行わなかった。また、これらの医療機関を訪問し、症例対照研究を行う予定であったが、これも同様に実施しなかったため、予定していた旅費を使用しなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
菌株の収集対象を変更し、固定した複数の医療機関より臨床検体から分離されたすべてのBacillus属とした。これらの菌株の菌種レベルの同定を行うことで、今回の研究において障壁となっている種レベルの同定をすべて行うこととした。特に非無菌検体由来株の菌種割合を明らかにすることが必要である。 さらに、平成28年度に予定してた症例対照研究を今年度実施するため、調査旅費として使用する予定である。
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Research Products
(1 results)