2017 Fiscal Year Research-status Report
臨床検体由来Bacillus属分離率施設間比較による院内感染対策の指標作成
Project/Area Number |
15K08863
|
Research Institution | National Institute of Infectious Diseases |
Principal Investigator |
鈴木 里和 国立感染症研究所, 薬剤耐性研究センター, 室長 (30373400)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
東 秀明 北海道大学, 人獣共通感染症リサーチセンター, 教授 (20311227)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | Bacillus cereus / 季節性 / 敗血症 / 院内感染 |
Outline of Annual Research Achievements |
院内感染対策サーベイランス事業(JANIS)検査部門データベースを用いて国内の入院患者からのB. cereusの分離状況、特にその季節性と分離検体の関係を検討した。全提出検体数に占める対象菌陽性検体数を対象菌の分離率と定義し、検体種類別に月別分離率を求め、5カ月中央移動平均により季節性を評価した。2008年から2014年の、のべ4,105医療機関の入院患者に由来する検体を対象とした。Bacillus属菌の分離検体の内訳は血液24.5%、糞便26.5%、呼吸器23.4%であった。一方、B. cereusに限った検体別内訳は血液49.5%、糞便4.9%、呼吸器7.4%と血液に多かったがB. subtilisは分離検体に大きな偏りはなかった。B. cereusの月別分離率は、血液検体、糞便検体、呼吸器検体ともに8月をピークとする季節性を認めた。一方、B. subtilisに関してはいずれの検体でも明確な季節性を認めなかった。Bacillus属菌全体では、血液検体、呼吸器検体が8月をピークとする季節性を認める一方、糞便検体に季節性を認めずB. cereusの季節性がBacillus属菌の季節性の主な要因と考えられた。都道府県別のB. cereusの月別分離率を検討したが、季節性に地域差は認めなかった。 また国内の2医療機関から年間を通じて臨床検体由来Bacillus属菌の分与をうけ、菌種同定を行った。分与された182株のうちB. cereusは31株(17%)で、6-8月にそのうちの23株(74%)が分離されJANISデータの解析結果と一致した。臨床検体、特に呼吸器検体からのBacillus属菌分離率の増加はB. cereusによる院内環境の汚染の指標となる可能性が示唆され、特に夏期における増加に留意し通年での評価が必要と考えられた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
平成28年度から平成29年度にかけ、協力医療機関にて分離されたBacillus属の同定およびゲノム解読を行い、JANISデータと合わせた解析を実施する予定であった。 しかし平成29年4月に所属組織の再編とともに、4月から9月にかけ研究実施場所が移転となり、研究代表者が移転業務を主に担当した。さらに、実験室が数か月にわたり限定的な使用となったことから、菌株の解析が滞り、予定した解析、研究打ち合わせおよび成果発表が実施できなかったため。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成29年度に実施できなかったB. cereusの病原因子の検出およびMLSTを行い、共同研究者らと検討しているハイリスククローンの鑑別を実施する。ハイリスククローンの可能性が高い場合はゲノム解析を行い、その原因遺伝子検索を行う。また、病院環境汚染の要因として食品が考えられるため、食品由来B. cereusを食品微生物検査センターより入手し、臨床検体分離株との比較を行う。
|
Causes of Carryover |
平成28年度から平成29年度にかけ、協力医療機関にて分離されたBacillus属の同定およびゲノム解読を行い、JANISデータと合わせた解析を実施する予定であった。 しかし平成29年4月に所属組織の再編とともに、4月9月にかけ研究実施場所が移転となり、研究代表者が移転業務を主に担当した。さらに、実験室が数か月にわたり限定的な使用となったため、平成29年度に主に予定していた菌株の解析が滞った。特に、菌株の同定後の遺伝子検査についてはほとんど実施できなかったため、平成30年度にこれらの解析を行う。 また、これまでの研究により、食品に付着したB. cereusが病院環境汚染の要因となる可能性が考えられたため、食品由来のB. cereusを新たに収集し、解析をする予定である。
|