2016 Fiscal Year Research-status Report
ストレスによる性ホルモン分泌異常の神経性機序の解明
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15K08928
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Research Institution | University of Human Arts and Sciences |
Principal Investigator |
鍵谷 方子 人間総合科学大学, 人間科学部, 教授(移行) (50291133)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 副腎皮質 / 性ホルモン / 交感神経 / ストレス |
Outline of Annual Research Achievements |
副腎皮質由来の性ホルモン分泌が,ストレスによって交感神経を介して影響を受ける可能性を明らかにすることを目的とする本研究において,平成27年度は,まず,副腎皮質からの主要な性ホルモンの1つであるデヒドロエピアンドロステロン(DHEA)の分泌を直接的に,かつ経時的に,安定に評価する方法を確立した.本年度は,その方法を用いて,副腎支配交感神経活動の亢進が副腎皮質からのDHEA分泌に及ぼす影響について検討した. 実験は,Wistar系成熟雌ラットを用い,麻酔下,人工呼吸下で体温,血圧などを生理的に安定に維持した状態で行った.副腎支配交感神経を刺激するために,大内臓神経を分離後,横隔膜直下で切断し,末梢端を遠心性に電気刺激した.副腎静脈に挿入したカテーテルから,副腎静脈血を間欠的・経時的に微量(各70マイクロリットル)採取した.各血漿サンプル中のDHEA濃度を酵素免疫法(EIA法)により測定した.副腎皮質からのDHEA分泌の変化を評価するため,採血時に測定した副腎静脈血漿流速との積を求めることで,DHEA分泌速度を算出した.発情期のラットにおいて大内臓神経を10V,20Hzで5分間電気刺激すると,副腎静脈血漿流速は著しく減少し,刺激終了後に回復した.この反応は,全身血圧の上昇を伴っていた.副腎静脈血漿中のDHEA濃度は,副腎静脈血漿流速が遅くなったにも関わらず刺激前と比べほとんど変化しなかった.DHEA分泌速度を比較した結果,刺激前に比べ刺激中にDHEA分泌速度が約30 %減少した.これらの結果から,副腎支配交感神経は,DHEA分泌を調節する可能性が考えられた.今後は,他の周期でも同じ傾向があることを確認する.さらに,ストレス刺激として皮膚に機械的侵害刺激を加えた際に,DHEA分泌が変化する可能性と,その変化における副腎交感神経の関与を調べることを計画している.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該研究は,近年性ホルモン源として重要視されている副腎皮質からの性ホルモン分泌が,ストレスによって交感神経を介して影響を受ける可能性を明らかにすることを目的とする.具体的には,まず,副腎支配交感神経活動亢進が,副腎皮質からの性ホルモン分泌に影響を及ぼす可能性を検討し,次いで,ストレス刺激が交感神経を介して副腎皮質からの性ホルモン分泌に及ぼす影響を調べる計画である.この目的を達成するためには,副腎皮質からの性ホルモン分泌を直接的に評価する必要がある.平成27年度は,麻酔ラットの生理的状態を安定に維持しながら,副腎静脈に挿入したカテーテルから副腎静脈血を間欠的・経時的に繰り返し採血し,得られた血漿サンプル中の性ホルモンを酵素免疫法(EIA法)によって安定に測定する方法の確立を目指した.その結果,副腎皮質から分泌される主な性ホルモンの1つであり,その重要性が指摘されているデヒドロエピアンドロステロン(DHEA)について,測定方法を確立することができた.そこで平成28年度は,本方法を用い,交感神経の活動亢進が,DHEA分泌に影響を及ぼす可能性を検討した.その結果,副腎支配交感神経を含む大内臓神経の電気刺激(10V,20Hz,5分)により,副腎静脈血漿流速が減少し,全身血圧が上昇するとともに,副腎皮質からのDHEA分泌速度が減少する傾向がみとめられ,副腎支配交感神経によるDHEA分泌調節機構の存在可能性が見いだせた.今後は,他の周期においても同様の傾向がみとめられるか確認し,さらに,交感神経刺激によるDHEA分泌速度変化の定量的解析と時間経過の解析,アドレナリン受容体の関与など詳細な解析を進め,副腎支配交感神経性のDHEA分泌調節の機序を解明する予定である.ストレスの際に交感神経を介してDHEA分泌に影響を及ぼす可能性を検討する本研究課題は,おおむね順調に進展していると考えている.
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は,性ホルモン源として重要視される副腎皮質からの性ホルモン分泌が,ストレスによって交感神経を介して影響を受ける可能性を明らかにすることを目的とする.平成27年度~28年度のこれまでの2年間の研究により,副腎皮質から分泌される主要な性ホルモンの1つであるDHEAの分泌を,副腎静脈から採血することにより,直接かつ経時的に安定に評価する方法を確立し,さらに,副腎支配交感神経がDHEA分泌を調節する可能性を見出した.今後は以下のことを検討し,本研究目的を達成する. まず,1.交感神経刺激によるDHEA分泌速度の変化の定量的解析,反応の時間経過の解析,この反応におけるアドレナリン受容体の関与の検討など,詳細な解析を進め,副腎支配交感神経によるDHEA分泌調節の機序を解明する.次いで,2.1の結果を踏まえ,ストレス刺激として皮膚への機械的侵害刺激を加えた際に,交感神経を介してDHEA分泌が変化する可能性を経時的に調べる.方法としては,副腎交感神経の切断実験を行い,切断前後での皮膚侵害刺激によるDHEAの分泌速度の変化の度合いを比較する.さらに,3.皮膚侵害性刺激によるDHEA分泌速度の変化が循環血漿中DHEA濃度へどのように反映されるかを明らかにする予定である.そのために,末梢静脈中DHEAの濃度の経時的測定を行い,皮膚侵害性刺激時の濃度変化を安静時と比較し検討する. 以上の研究により,本研究の期間内に「ストレスが交感神経を介して副腎皮質からのDHEA分泌に及ぼす影響」について明らかにする.
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Causes of Carryover |
海外製品の購入により,納品が予定より遅延し,次年度使用額として計上されることとなった.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
納入次第,平成29年度の消耗品費として使用する.
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