2017 Fiscal Year Research-status Report
抗癌治療後の男性生殖機能障害に対する漢方治療法の確立
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15K08937
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
曲 寧 東海大学, 医学部, 講師 (70527952)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊藤 正裕 東京医科大学, 医学部, 教授 (00232471)
善本 隆之 東京医科大学, 医学部, 教授 (80202406)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 精巣 / 抗癌治療 / 漢方薬 / 精子形成 / 液性因子 / 細胞因子 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度までに、抗癌治療後(抗腫瘍薬ブスルファンおよび放射線照射)によるマウスの精子形成障害に対するツムラ牛車腎気丸(TJ107)の治療効果を確認した。化学療法や放射線療法の抗癌治療後の精子形成障害に対してTJ107は有効な治療効果が示された。平成29年度は抗癌治療後精子形成障害および改善に関連する液性因子と細胞因子について調べた。ブスルファン処置後の生殖細胞の障害により、Toll-like receptor 2・4の経由で精子形成を支持するセルトリ細胞のサイトカインの分泌が上昇し、これにより精巣間質にマクロファージの浸潤が増え、精巣内炎症反応により精子形成障害がさらに進む悪循環が証明された。TJ107群ではではToll-like receptor 2・4の低下および間質のマクロファージ浸潤の低下、精細管内精子形成の回復が見られた。一方、放射線照射マウスでは萎縮した精細管と生殖細胞に自己抗体の上昇が見られ、血液精巣関門を構成する上皮タイト結合蛋白Claudin11の低下が示された。TJ107群ではClaudin11の回復により生殖細胞の抗体反応が抑えられ、同時に精細管内に精子形成の回復が確認された。 以上の結果により、抗癌剤投与と放射線照射後の精子形成障害に関連した液性因子と細胞因子が異なる。牛車腎気丸は関連の液性因子或いは細胞因子に影響し、抗癌剤投与と放射線照射後の精子形成障害に回復効果が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
抗がん治療の副作用対策としての漢方薬の効果について、科学的に検証した結果が報告されたが、抗がん治療後の精子形成障害については有効な治療効果を持つ漢方薬の報告はまだありません。今まで結果により、化学療法や放射線療法の抗癌治療後の精子形成障害に対してTJ107は有効な治療効果が示された。さらに、抗癌剤投与および放射線照射後のマウスは異なった作用機序による精子形成が障害されたことが明らかになった。また、牛車腎気丸が関連の液性因子或いは細胞因子に影響し、両方に有効な治療効果を示した。今年度の結果は精子形成改善に関与している精巣内免疫環境の変化と精子形成の機構解明に大変有用と考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度までにヒト投薬量を体重換算して5倍牛車腎気丸を含めた餌のみを用いて抗癌治療後精子形成障害の改善効果を調べた。今年度は1倍・3倍の牛車腎気丸餌の改善効果を調査する予定し、1倍・3倍牛車腎気丸餌と5倍牛車腎気丸餌の精子形成改善の差について比較検討する。 また、今まで証明した精子形成改善に関連する液性因子と細胞因子以外に、精子形成に関連する精巣間質のライディッヒ細胞と精細管内のセルトリ細胞に対する抗癌治療の影響についても調べる。4週齡C57BL/6j雄マウスにブスルファン(40 mg/kg)を腹腔注射あるいは放射線6 Gy照射後、120日まで経時的に精巣からRNAを抽出し、生殖細胞やセルトリ細胞、ライディッヒ細胞の関連遺伝子(Germ cell: Tnp1, Spo11, Stra8; Sertoli cell: Amh, Aqp8, Cldn11, Clu, Ccnd2, Espn, Fyn, Inhba, Il1a, Rhox5, Testin, Sox9, Trf; Leydig cell: Hsd3b6, Star, Lhr, Pdgfa)について調べる。次に、経時的に精巣を摘出し電子顕微鏡切片を作成し、電子顕微鏡解析および免疫組織化学的解析により、ライディッヒ細胞やセルトリ細胞などの精巣組織の微細形態変化の観察を行う。
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Causes of Carryover |
昨年度までにヒト投薬量を体重換算して5倍牛車腎気丸を含めた餌のみを用いて抗癌治療後精子形成障害の改善効果を調べた。昨年度は1倍・3倍の牛車腎気丸餌の改善効果を調査する予定だったが、所属変更があったため動物実験計画を変更し、精子形成改善効果のある液性因子と細胞因子について調べた。またマイクロアレイを予定していた解析をReal-Time RT-PCRを用いて実験した。マイクロアレイでは1献体約10万円強、Real-Time RT-PCRは1献体約5000円と1/20の値段である。また上記は外注した場合の目安であり、Real-Time RT-PCRに関しては、当教室で設備が整っていて自ら実験するため、さらに使用金額が抑えられたことが理由に挙げられる。次年度は、研究経費として総額1344千円の研究経費を計上した。1倍・3倍牛車腎気丸餌と5倍牛車腎気丸餌の精子形成改善について比較検討するため、実験動物のためのマウス代(食餌含)500千円として使用予定である。また、消耗品として包埋剤・プラスチック・ガラス器具350千円、分子生物・生化学関連試薬および免疫・組織学関連試薬(抗体、ELISAやリアルタイムRT-PCR関連試薬、2次元電気泳動関連試薬)494千円として使用する予定である。
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Research Products
(10 results)