2015 Fiscal Year Research-status Report
プロテイナーゼ活性化型受容体1を介する血管機能障害の分子機構解明
Project/Area Number |
15K09159
|
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
平野 真弓 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (80336031)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
平野 勝也 香川大学, 医学部, 教授 (80291516)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | プロテイナーゼ活性化型受容体1 / 血管内皮細胞 / 血管平滑筋細胞 / 血管バリアー機能障害 / ミオシン軽鎖リン酸化 / トロンビン / 血管病 / 肺高血圧症 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、プロテイナーゼ活性化型受容体1(PAR1)の観点から血管病の発症・進展に関わる分子機構を明らかにし、新たな治療法を開発することを目的とする。 1.内皮バリアー機能障害の分子機構を明らかにする。 トロンビンによりPAR1が活性化されると血管内皮細胞のバリアー機能が障害される。トロンビン刺激直後、細胞辺縁部にミオシン軽鎖2リン酸化が局在する。また、アクチンはストレスファイバー形成に先立って細胞辺縁部に線維束を形成する。このアクチン線維束形成はMLC 2リン酸化と時間的・空間的に一致し、バリアー機能障害の初期事象となることを明らかにした。その後、ミオシン軽鎖2リン酸化は消失した。バリアー機能障害の持続相では、細胞辺縁部に局在していたアクチンはストレスファイバーへと再編成され、ミオシン軽鎖1リン酸化と共局在した。バリアー機能障害においてMLCの1リン酸化と2リン酸化が時間的・空間的に異なる関与を果たすことを明らかにした。さらに、細胞辺縁部にアクチン線維束が形成されるか、細胞質でストレスファイバーが形成されるかは細胞間接着の成熟度により制御されていることを明らかにした。 2.PAR1を標的とした血管病治療法の開発 モノクロタリン誘発肺高血圧モデルラットを作製した。トロンビン受容体アゴニストペプチドTFLLR-NH2に対して正常肺標本では圧上昇反応が認められないのに対して肺高血圧症モデルラットの肺標本では圧上昇が認められた。さらにトロンビン受容体PAR1の発現を解析すると、モデル動物肺において有意な発現上昇が認められた。これはPAR1が肺高血圧症の病態形成に重要な役割を果たし、新たな治療標的となることを示唆するものである。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1.内皮細胞収縮によるバリアー機能障害の分子機構を明らかにする。 これまで多くの報告では、血管内皮細胞のバリアー機能障害にはアクチンストレスファイバー形成が重要であるとされていたが、初期相と持続相ではミオシン軽鎖リン酸化とアクチン線維束やストレスファイバー形成が時間的・空間的に異なる制御を受けていることを明らかにした。特にミオシン軽鎖2リン酸化はCa2+非依存性、Rho kinase依存性でバリアー機能障害の初期事象に関わること、また2相性を示すミオシン軽鎖1リン酸化の初期相はCa2+依存性、後期相はRho kinase依存性でバリアー機能障害の維持に関わることが示唆された。これらの知見からそれぞれのリン酸化酵素の同定のための見通しを立てることができた。BMP2によるバリアー保護作用を明らかにするため、ノックダウン法やシグナル伝達に関わるリン酸化蛋白質の検証法を確立した。 2.病態におけるPAR1の活性亢進機序を、発現亢進と脱感作障害の両面から明らかにする。モノクロタリン誘発肺高血圧症モデルラットにおいて、PAR1の肺動脈収縮作用が亢進する。また、このモデルラットの肺動脈でPAR1受容体の発現が亢進していることから、肺高血圧症の発症においてPAR1活性化が重要な役割を果たすことが検証できた。
|
Strategy for Future Research Activity |
内皮細胞収縮によるバリアー機能障害の分子機構を明らかにする (1)バリアー機能障害の初期に生じるRho kinase依存性のミオシン軽鎖2リン酸化、さらに2相性を呈するミオシン軽鎖1リン酸化を薬理学的阻害剤、RNA干渉法、変異体の導入、免疫沈降法、Two-hybrid法などを用いて解析し、それぞれのリン酸化に関わる酵素を同定する。(2)BMPR2のノックダウンや変異体を導入し、バリアー保護作用のメカニズムを明らかにする。 病態におけるPAR1の活性亢進機序を、発現亢進と脱感作障害の両面から明らかにする (1)肺高血圧モデルラットにおいてPAR1の発現が亢進していることから、PAR1ノックアウトマウスの機能解析を行い、肺高血圧症の病態形成におけるPAR1の役割を明らかにする。(2)PAR1の脱感作障害を示すラット大動脈平滑筋細胞株A7r5を用いてCa2+反応性や細胞膜上のPAR1発現、受容体のリン酸化、βアレスチンとの結合、ミオシン軽鎖のリン酸化や細胞増殖を検証し、脱感作障害と病態形成との関連を明らかにする。
|
Causes of Carryover |
研究成果を国際学会で発表するための旅費15万円を予定していたが、H27年度は国際学会への参加をしなかったため、繰越金が生じた。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
培養細胞実験に使用する血清・培養試薬・培養器具類に40万円、病態モデル動物実験に使用する動物・飼育費等に35万円、一般実験および遺伝子導入実験に使用する試薬類に45万円、学会での成果発表に10万円を使用する。
|
Research Products
(10 results)