2016 Fiscal Year Research-status Report
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15K09332
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
三須 建郎 東北大学, 医学系研究科, 講師 (00396491)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | アクアポリン4 / アストロサイト / 視神経脊髄炎 / 脱髄 / アクアポリン4抗体 |
Outline of Annual Research Achievements |
視神経脊髄炎(NMO)は視神経と脊髄に病変の首座を有する炎症性疾患である。近年、NMO患者の中に中枢神経の血管周囲や軟膜に特異的に反応する抗体(NMO-IgG)が存在することが見いだされ、NMO-IgGは星状神経細胞に存在するアクアポリン4(AQP4)に特異的に反応することが明らかとなった。我々はNMOの剖検脊髄におけるアクアポリン4の免疫組織学的検討を行い、NMO剖検脊髄の活動期病変においては、補体(茶色)の沈着がみられ、その血管周囲ではAQP4(ピンク)の発現が欠落していること、さらに早期NMO病変においてはAQP4およびアストロサイトのマーカーであるGFAPが欠落する一方、髄鞘蛋白は保たれており、脱髄に先行してアストロサイト障害が起こる病態である事を報告し、NMOは一次性にアストロサイトを標的とする疾患と考えられ、MSとは根本的に異なる病態を有する疾患である事が病理学的に示唆されたが、そのアストロサイト傷害機序や脱髄機序は充分には解っておらず、疾患の病態研究や治療研究に用いる動物モデルが求められている。 我々は、本研究によりヒト由来AQP4抗体ないしAQP4の細胞外ドメインを認識する特異的リコンビナント抗体を用いて、主に実験的自己免疫性脳脊髄炎モデル、脳局所注入モデルによるアストロサイト傷害の検討を行い、極めて再現性の高いNMOモデルの作成を行う事に成功した。この抗体によるNMO病変は、ヒトNMO剖検脳脊髄標本で見られる特徴をほぼ網羅しており、典型的なAQP4やGFAPの染色性の脱落やNMO剖検例にみられる多様性のある脱髄・組織傷害を呈した。病変は特徴的な血管中心性病変を認め、各病変は相互に癒合して脊髄や視神経、脳幹部など、NMO患者で診られやすい病変分布を呈していることを見出し、国際学会で報告するとともに学会誌に報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ヒト剖検脳における解析により、好中球や好酸球が病変組織に浸潤して病態に関わることが示唆されている。また、脱髄病態においては虚血関連因子である虚血関連蛋白1αなどが関連することを、本研究に関連するバロー病や多発性硬化症の検討から明らかにし、本研究で行われた脱髄モデルにおいても病変拡大において強く発現を認めており、関連することを見出している。 また、脱髄病変の進展において重要な役割を担うと考えられる細胞性免疫の関与については、実際にNMO動物モデルでも再現良くこれらの細胞が関与するとの研究結果は出ていなかったが、今回、AQP4抗体の用量依存性に病変が拡大し、その際に好中球が病変の拡大に関与することが示唆された。今後、好中球等の炎症を抑える事が病態の抑制に重要と考え検討を進めている。また、局所注入モデルについても解析を行い、局所に抗AQP4抗体を注入することで、アストロサイト傷害性病変の形成および二次的脱髄機序において、脱髄に先行してアストロサイト傷害を来すこと、その機序において細胞性免疫中でもマクロファージを誘導する各種サイトカインMCP1などの関与が示唆され報告を行った。 脱髄において、抗AQP4抗体と同様かそれ以上に関与が疑われる抗ミエリンオリゴデンドロサイト糖蛋白(MOG)抗体が重要な脱髄関連因子であることが判明し、現在抗AQP4抗体に加えて抗MOG抗体の病態への関与について解析を進めている。これらの病態の違いが判明すれば、よりアストロサイト関連脱髄と古典的脱髄の病態の違い、臨床病理学的相違が明らかになることが期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き動物モデルにおける解析、剖検脳脊髄標本による病態解析、さらには臨床的なアクアポリン4抗体関連脳脊髄炎や新たな知見として脱髄に関連する抗ミエリンMOG抗体による脱髄機序との比較解析を行うことにより、アストロサイト傷害における組織傷害機序を明らかにしていく予定であるため、本研究における比較対象として抗MOG抗体による実験を行っているところであり、今後も進めていく予定である。これらの方法としては、血清抽出された免疫グロブリンや高力価特異的NMO抗体を用いた脳局所注入モデルや脳脊髄炎モデルさらにはMOG抗原を用いた実験的自己免疫性脳脊髄炎モデルなどの解析を追加し、それらの病理学的検討を行うこと、免疫組織学的に脱髄やアストロサイト傷害機序を明らかにし、そこに介在する抗体や補体、炎症メディエーターなどの因子を分析することによりNMOアストロサイト傷害機序の解明を進めていく予定である。
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Causes of Carryover |
本研究に関連する複数の研究費を使用しており、予想以上に他研究費からの支出が多くなり本研究費の支出が下回ったため。また、予定していた国際学会の参加による研究発表の一部は他研究費から支出したこともあり予定額に満たなかった。研究の遂行上必要な物品旗の研究費も使用したうえで順調に進んでいる。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
引き続き本研究費を使って研究を継続し、成果については国内や国際学会等で報告する予定である。複数の研究費の執行上の偏りが生じないよう当該分野で使用した研究費を着実に執行して行く予定としている。
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[Journal Article] Impact of the Great East Japan Earthquake in 2011 on MS and NMOSD: a study in Sendai, Japan.2017
Author(s)
Kanamori Y, Nakashima I, Takai Y, Misu T, Kuroda H, Nishiyama S, Takahashi T, Sato S, Fujimori J, Higuchi J, Itoyama Y, Aoki M, Fujihara K.
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Journal Title
J Neurol Neurosurg Psychiatry.
Volume: 88
Pages: 362-364
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] MOG antibody-positive, benign, unilateral, cerebral cortical encephalitis with epilepsy.2017
Author(s)
Ogawa R, Nakashima I, Takahashi T, Kaneko K, Akaishi T, Takai Y, Sato DK, Nishiyama S, Misu T, Kuroda H, Aoki M, Fujihara K.
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Journal Title
Neurol Neuroimmunol Neuroinflamm
Volume: 4
Pages: e322
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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[Journal Article] Aquaporin 4-specific T cells and NMO-IgG cause primary retinal damage in experimental NMO/SD.2016
Author(s)
Zeka B, Hastermann M, Kaufmann N, Schanda K, Pende M, Misu T, Rommer P, Fujihara K, Nakashima I, Dahle C, Leutmezer F, Reindl M, Lassmann H, Bradl M.
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Journal Title
Acta Neuropathol Commun
Volume: 8
Pages: 82
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research
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[Journal Article] Lesion length of optic neuritis impacts visual prognosis in neuromyelitis optica.2016
Author(s)
Akaishi T, Nakashima I, Takeshita T, Mugikura S, Sato D, Takahashi T, Nishiyama S, Kurosawa K, Misu T, Nakazawa T, Aoki M, Fujihara K.
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Journal Title
J Neuroimmunol
Volume: 293
Pages: 28-33
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Hypoxia-like tissue injury and glial response contribute to Balo concentric lesion development.2016
Author(s)
Takai Y, Misu T, Nishiyama S, Ono H, Kuroda H, Nakashima I, Saito R, Kanamori M, Sonoda Y, Kumabe T, Mugikura S, Watanabe M, Aoki M, Fujihara K.
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Journal Title
Neurology
Volume: 87
Pages: 2000-2005
Peer Reviewed / Open Access
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[Presentation] Hypoxia-like tissue injury and glial response contribute to the development of Balo's concentric demyelination2016
Author(s)
Takai Y, Misu T, Nishiyama S, Ono H, Kuroda H, Nakashima I, Saito R, Kanamori M, Mugikura S, Watanabe M, Aoki M, Fujihara K.
Organizer
Pan-Asian Comittee of Treatment and Research in Multiple Sclerosis
Place of Presentation
バンコク(タイ)
Year and Date
2016-10-27 – 2016-10-29
Int'l Joint Research
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[Presentation] Chronological change is the main cause of histopathological diversity in neuromyelitis optica with anti-AQP4 antibody.2016
Author(s)
Takai Y, Misu T, Nakashima I, Kuroda H, Takahashi T, Nishiyama S, Kaneko K, Akaishi T, Ogawa R, Fujihara K, Aoki M.
Organizer
日本神経学会
Place of Presentation
神戸(神戸コンベンションセンター)
Year and Date
2016-05-18 – 2016-05-21