2015 Fiscal Year Research-status Report
紀伊半島ALS・パーキンソン認知症のデータベース化による病態・病因研究への活用
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15K09364
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Research Institution | Suzuka University of Medical Science |
Principal Investigator |
葛原 茂樹 鈴鹿医療科学大学, 看護学部, 教授 (70111383)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小久保 康昌 三重大学, その他の研究科, その他 (60263000)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 紀伊半島 / 筋萎縮性側索硬化症 / パーキンソン・認知症複合 / データベース / 臨床所見 / 神経病理所見 / tauopathy |
Outline of Annual Research Achievements |
紀伊半島南部沿岸の熊野灘に面した牟婁地方には、筋萎縮性側索硬化症(ALS)の多発地が存在することが明治以来知られていた。1960年代に、和歌山県立医科大学の木村・八瀬らの研究者によって、和歌山県のK地区と三重県のH地区は、他地域の40~100倍近い発生頻度を示し、グアム島と並ぶALS高集積地として注目されたが、1980年代に両地域とも発生数の激減を見て、多発地は消滅したと考えられていた。 主任研究者者らは、1990年以降にも、かつての多発地在住者や出身者にALSが多発していることに気づき、1994年から再調査を開始した。その結果、ALS多発の持続と、グアム特有疾患であるパーキンソン・認知症複合(PDC)が、紀伊半島多発地区にも発生していることを確認して報告した。しかし、2000年以降にALS、PDC共に新規発生が激減し、近年は散発的発生をみるだけになった。また、紀伊ALS研究を担っていた和歌山県立医科大学と三重大学の研究者達も、世代交代で研究者が減少し、かつて収集された貴重な資料が散逸する事態となっている。 本研究の対象は、主任研究者が三重大学教授として在職中にで収集した、主に高集積地のH地区の患者に関係する資料であるが、和歌山県立医科大学研究者保管の関連資料もまとめてデータベース化し、本疾患の病態を研究すると共に、後世の研究者の研究に資することが目的である。初年度は、主任研究者の手元に保管されている資料、三重大学地域イノベーション研究科の共同研究者によって保管されている資料、および、我々が保管していたが今は愛知医科大学加齢医学研究所に保管を委託している脳と脊髄の病理標本について、保管資料のリスト作りと、紙ベース資料のPDF化に取り組んだ。年度途中で、資料リストづくりとPDF作成の研究補助者を雇用することができたので、既に判明している資料のPDF化は予定通り進んでいる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
主任研究者と分担研究者によって、過去の資料は十分には整理されていない紙ベースではあるが保存されている。これらをまとめて一覧できるリストを作成中である。また、個々の患者データについては、リスト作りとは独立にPDF化を進めている。 神経病理学的所見については、2010年以前に作成された病理標本は、現在の基準からみて不完全な点があるので、研究協力者である愛知医大の神経病理学者の援助をえて、標本の作り直しと再評価を実施している。これらは、代表的な写真と所見を合わせてデータベース化する予定である。 さらに、明治以来の紀伊半島のALSとPDCに関する文献のデータベースも作成中である。
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Strategy for Future Research Activity |
1.散逸しかかっている資料をできるだけ集めて、三重県H地区で発生したALSあるいはPDCとして登録されているすべての患者の一括したリスト作りを行う。1990年以前は、定期的住民検診と調査は和歌山県立医科大学研究者によってなされていたので、当時の記録の利用に関して協力を得ることが可能となった。 2.過去の患者の病歴と臨床症状を一定のリストに沿ってチェックして、臨床所見の標準化を図ると共に、家族歴をできるだけ正確に作成し、特に家族発生例を中心に臨床的特徴を明らかにする。これに関しては、特に個人情報保護と匿名化に注意を払って進める。 3.脳標本が得られている約20例について、現在的な研究手法(免疫組織化学など)による病理所見と、分子生物学的解析、遺伝子解析を通じて、病気の本質を明らかにし、得られた臨床データと病理学的・生化学的・分子生物学的知見をデータベース化する。 4.紀伊半島のALSとPDCに関する明治以来の古い文献についてもデータベース化して、研究者の利用に供することを計画している。
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Causes of Carryover |
H27年度は物品費として予定していた脳病理標本作成のための消耗品(免疫組織化学染色用の特異抗体、標本作成用ナイフなど)を、共同研究者が負担してくれたために、申請者の負担が大きく軽減された。また、論文投稿用に用意したその他の研究費も、まだデータベース作製途上であるために、未使用である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
H28年度は、脳標本作成費を負担する必要があることと、データ整理と入力のための研究補助者への謝金が増加する見込みであるので、年度の早い時期に繰り越し金すべての使用が終了する見込みである。
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[Journal Article] Neutron activation analysis of scalp hair from ALS patients and residents in the Kii Peninsula, Japan.2015
Author(s)
Kihira T, Sakurai I, Yoshida S, Wakayama I, Takamiya K, Okumura R, Iinuma Y, Iwai K, Kajimoto Y, Hiwatani Y, Kohmoto J, Okamoto K, Kokubo Y, Kuzuhara S.
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Journal Title
Biol Trace Elem Res
Volume: 164(1)
Pages: 36-42
DOI
Peer Reviewed
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