2015 Fiscal Year Research-status Report
インスリン受容体2段階切断機構がもたらす病態メカニズムの解明
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15K09391
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
湯浅 智之 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部, 特任准教授 (50304556)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 可溶性インスリン受容体 |
Outline of Annual Research Achievements |
インスリン受容体はインスリン結合部位であるαサブユニットとチロシンキナーゼドメインを持つβサブユニットからなり、インスリンが結合すると細胞内インスリンシグナルを活性化しインスリン作用を発揮する。我々は、インスリン受容体細胞外ドメインがヒト血中に遊離し可溶化していることを発見し、可溶性インスリン受容体(soluble Insulin Receptor; sIR)と名付けた。この分子のELISA測定法を独自に確立し、糖尿病患者群において健常者群より血液中のsIRが有意に増加していることを見出した。すなわち、sIRは生体の血糖値の水準を反映して血中および尿中の濃度が変動するため新たな血糖値マーカーとしての可能性を有している。一方、細胞レベルではある種のタンパク質分解酵素が細胞膜上でインスリン受容体を切断し、高グルコース(高血糖)状態がこれを促進していると予想された。我々はこの分子機構を解明するためインスリン受容体切断のモデルとなる培養細胞系の構築を行った。本研究では、インスリン受容体切断モデル培養細胞系を用いてインスリン受容体の切断を担うカルシウム依存性蛋白分解酵素の同定に成功し、本酵素が細胞外でインスリン受容体を切断する背景を明らかにした。さらに、インスリン受容体は細胞外での切断に続いて細胞膜通過ドメインが切断されることを分子生物学的に証明した。前者はshedding、後者はregulated intramembrane proteolysis (Rip)と呼ばれ生化学的に既に知られた事象であるが、本研究成果はインスリン受容体二段階切断モデルを分子生物学的に実証するものとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年はカルシウム依存性蛋白分解酵素を同定し、その細胞外での働きを実証することによりインスリン受容体二段階切断仮説を分子生物学的に証明できた。さらに、本成果はインスリン抵抗性改善剤の新たな作用機序の解明の一端に進展しており概ね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
インスリン受容体二段階切断機構の分子生物学的実証に基づき、今後はその全体像の解明を進める。具体的には、インスリン受容体の切断を担うカルシウム依存性蛋白分解酵素の細胞外局在機構の詳細を明らかにする。一方、本年の成果を踏まえ臨床研究にも着手し検体の収集を開始する。
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Causes of Carryover |
予定していたin vitro系の検討事項について一部実施できていない実験があるため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
未検討の事項につき順次実験を進めていく。
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Research Products
(2 results)