2016 Fiscal Year Research-status Report
視床下部弓状核における局所糖質コルチコイド作用増強の代謝制御への影響の検討
Project/Area Number |
15K09428
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
園山 拓洋 京都大学, 医学研究科, 客員研究員 (70582112)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | 視床下部 / ステロイド / レプチン / レプチン抵抗性 |
Outline of Annual Research Achievements |
メタボリックシンドロームや肥満症の病態はクッシング症候群におけグルココルチコイド(GC)の過剰による病態に酷似しているが、多くのメタボリックシンドローム患者や肥満症患者においてはGCの過剰は観察されない。一方、メタボリックシンドロームや肥満症においては脂肪組織内での11beta hydroxysteroid dehydrogenase 1(11beta HSD1)の発現と活性の亢進が認められ、この酵素による細胞内GC活性化の亢進が代謝異常の発症に病因論的に重要であることが既に確立している。本研究は、エネルギー代謝制御の中枢である、視床下部局所におけるGCの細胞内活性化・不活性化が視床下部機能にどのような影響を及ぼすかを明らかにすることを目指している。われわれは高脂肪食給餌マウスの視床下部各神経核における網羅的遺伝子発現解析のデータを既に保有しており、この中からGCの下流で誘導される遺伝子群の発現亢進を発見してきた。平成28年度には、高脂肪食負荷マウスの視床下部神経核における遺伝子発現を定量RT-PCR法により検証すると同時に、視床下部系の培養細胞株を用いたin vitro機能実験を行った。その結果、マウス視床下部にはGC活性化にかかわる11beta HSD1と不活性化にかかわる11beta HSD2の両方の発現が確認され、これらと細胞内酸化還元状態と関連するNADPHにより規定される細胞内GC活性化・不活性化のバランスが視床下部ニューロンの細胞機能調節に関わる可能性が示唆された。一方、視床下部細胞の細胞機能として、末梢脂肪組織由来の摂食調節ホルモンであるレプチンへの細胞応答性を検討したところ、11beta HSD1の過剰発現によりレプチン応答性は有意に障害されたことから、この酵素の発現と視床下部細胞機能との関連が実証された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
マウス視床下部を用いた解析も培養細胞の実験もおおむね順調に進展している。しかし、摂食調節ホルモンであるレプチンに良好な応答性を示す視床下部系の培養細胞系の構築に予想以上の困難を伴った。年度後半に培養条件の改善により問題は克服されたため、現在では支障なく実験が遂行可能な状態となっている。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は、培養細胞を用いた検討を繰り返すことにより、培地中のグルココルチコイド濃度依存性や酵素の活性依存性とレプチン応答性との相関関係を詳細に明らかにしてゆく。さらに現在コンストラクトを構築中の視床下部11beta HSD1過剰発現トランスジェニックマウスの作製を進め、in vivoでの細胞内グルココルチコイド活性化とメタボリックシンドローム・肥満症発症との因果関係の証明を目指す。
|
Causes of Carryover |
本研究の遂行には、摂食調節ホルモンであるレプチンに良好な感度で応答する視床下部系の培養細胞株の安定的供給が必須である。しかし、これまでに報告のある細胞株の多くでは、実験条件や継代数に依存したレプチン応答性の低下が認められている。平成28年度も当初は予定通りのレプチン応答性の安定的な確認に困難を伴ったことから、培養細胞を用いた実験の反復回数が当初の予定よりも少なくなった。しかし年度後半に、培養条件の最適化を行うことで、現在では安定的な結果を得ることが可能となっている。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
上述のとおり、現在では安定的な培養細胞実験が可能となっていることから、平成28年度に使用予定であった額については、平成29年度により注力して平成28年度に予定していた実験を実施することにより使用する計画である。
|