2016 Fiscal Year Research-status Report
共同注意の発達的意義に基づく社会性認知機能の解明:ウィリアムズ症候群との比較研究
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15K09609
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Research Institution | Institute for Developmental Research, Aichi Human Service Center |
Principal Investigator |
中村 みほ 愛知県心身障害者コロニー発達障害研究所, 機能発達学部, 室長 (70291945)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
稲垣 真澄 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター, 精神保健研究所 知的障害研究部, 部長 (70203198)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ウィリアムズ症候群 / 理解語彙 / 表出語彙 |
Outline of Annual Research Achievements |
ウィリアムズ症候群(以下WS)においては表出言語は比較的流暢とされるが、その初期発達は遅れる。初期の言語発達と社会性の発達やその他の認知発達の関係を知るうえで、視空間認知障害が強いこと、「過度のなれなれしさ」とも表現され社会性の認知特性を示すとされるWSを対象に初期言語発達を検討することは意義深いと考え、本研究を実施している。昨年度までの研究では日本語においても欧米同様に視空間に関わる語彙の獲得が遅れることを36カ月レベルの語彙発達を示すWS患児について明らかにした。本年度はより年少児を対象に理解語彙、表出語彙の両面についてその発達を認知特性との比較のもとに検討した。 研究協力の同意が得られたWS乳幼児の保護者にマッカーサー言語発達質問紙(語と身振り版)の記入を依頼。定型発達における18か月の言語理解レベルに至るまで数か月ごとに理解・表出語彙の記録をしえたWSの幼児15名(女児7名)を対象に、理解語彙が18か月レベルとなった時点での各言語領域の理解語彙、表出語彙を定型発達と比較した。その結果、理解語彙においては「位置と場所」に関わる語彙の獲得が定型発達と比して有意に遅れていた。また、表出語彙においては「日課と挨拶」「体の部位」に関わる語彙の獲得が定型発達児よりも有意に進んでいた。 以上のように、より初期の日本語言語理解語彙においても、表出語彙におけると同様、WSにおいては視空間認知を反映する「位置と場所」に関わる語彙の獲得が遅れていた。また、より初期の日本語表出語彙に関して「日課と挨拶」に関わる言葉の獲得が定型発達に先んじていることは新知見であり、WSにおいて指摘されている「過度のなれなれしさ」とも表現される社会性の認知発達の特徴を反映するものと考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
WS における語彙発達の検討は順調に経過しているが、言語発達に関係すると思われる社会性の認知発達を客観的指標を用いて検討することを目指して計画した視線追跡実験に遅れが認められる。 初期の言語発達に共同注意の発達が強く関与していることは知られているが、その前提として、児があるものから別のものへ視線を移す過程を視線追跡装置で測定することを試みている。しかしながら、当初の予定よりも想定された年齢のWS患児の参加が得られなかったこと(現在2名)、実験場所周辺の工事の雑音などにより、実験デザイン以外の音に参加者の注意が向いてしまい安定した結果が得られないことなどにより、報告できる結果を得るに至らなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、視線追跡実験への参加者を募る。 また、実験実施場所を変更するなどの工夫を行う。
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Causes of Carryover |
経費の必要な使用は行われたが、当初の見積もり額よりも低価格での物品購入が可能であったため、184円の残高が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
繰り越しの金額は少額であり大幅な使用計画の変更はない。
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