2016 Fiscal Year Research-status Report
ゼブラフィッシュによる薬物の発生毒性評価 ~マウス・ラットとの比較~
Project/Area Number |
15K09713
|
Research Institution | Kanazawa Medical University |
Principal Investigator |
坂田 ひろみ 金沢医科大学, 医学部, 准教授 (50294666)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
福井 義浩 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(医学系), 教授 (50144168)
澤田 和彦 つくば国際大学, 医療保健学部, 教授(移行) (10284324)
|
Project Period (FY) |
2015-10-21 – 2018-03-31
|
Keywords | ゼブラフィッシュ / 発生毒性 / エタノール / 5-HT神経 / アポトーシス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、化学物質の発生毒性試験におけるゼブラフィッシュの有用性を検討することを目的に実施している。まず初年度(平成27年度)は、ゼブラフィッシュ受精卵をエタノール曝露してその影響を検討した。その結果、3% (v/v)エタノール曝露群は、24時間以内にほぼすべての受精卵が死滅した。2%(v/v)エタノール曝露群でも、死滅卵の割合が多く、生存した稚魚でも単眼など著しい外表奇形が認められた。1%(v/v)エタノール曝露群(v/v)では稚魚に目立った外表奇形が認められなかった。外表奇形が認められなかった1%(v/v)エタノール曝露群稚魚でアポトーシス関連遺伝子であるcasp3とp53の発現量を定量的RT-PCR法により比較したところ、対照群と比較して高い傾向にあったが、有意差は示さなかった。セロトニン関連遺伝子であるFEVとTPHRの発現量は対照群との間に有意な差は認められなかった。5-HT合成酵素遺伝子の局在と5-HT神経細胞の局在も観察したが、対照群との間に大きな差は認められなかった。平成28年度は、外脳症および脊髄神経形成異常の発生を有意に増加させる胎生期バルプロ酸曝露の時期と投与量をマウスで明らかにした。またゼブラフィッシュで骨格形成異常を迅速に検出するための新たな骨染色法の開発を行った。標本の固定と同時に脱色・透明化を行う溶液を使用することで、従来法より短時間でゼブラフィッシュ成魚の骨染色を行うことが可能になった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究代表者である坂田は平成28年4月に金沢医科大学に異動したが、本研究に必要なゼブラフィッシュ飼育装置等の機器類は、前所属先(徳島大学)からの貸与という形で金沢医科大学に設置済みであり、継続して研究を遂行できる環境にある。また、本研究では、化学物質の発生毒性試験におけるゼブラフィッシュの有用性を、先行して行われてきたラットやマウスを用いた解析との比較をすることで考察しようとしているが、胎生期バルプロ酸曝露が外脳症および脊髄神経形成異常の発生を有意に増加させる曝露量をマウスで明らかにし、学会発表および論文投稿を行った。ゼブラフィッシュで骨格形成異常を迅速に検出するための新たな骨染色法の開発も行ったが、その成果についても既に学会発表を行い、現在論文投稿の準備を進めている。これらの状況から、本研究は順調に進行していると判断した。
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究で明らかにしたバルプロ酸がマウス胎仔で外脳症や脊髄神経形成異常の発生を有意に増加させる曝露量を基にゼブラフィッシュ受精卵をバルプロ酸に曝露し、その影響をマウスの場合と比較する。また、これまでの本研究での検討では1%(v/v)エタノール曝露群稚魚ではセロトニン神経系の異常が検出されなかったが、さらに詳細な解析を行い、既にマウスやラット等で確認されているセロトニン神経系の発達に対するエタノールの発生毒性をゼブラフィッシュで検出できるか否かを明らかにする。さらに本研究で開発したゼブラフィッシュのための迅速骨染色方法を用い、骨格形成に対する発生毒性の検出において、ゼブラフィッシュが有用か否かについてマウスやラットと比較して検討する予定である。
|