2016 Fiscal Year Research-status Report
人工多能性幹細胞を用いた先天性表皮水疱症に対する遺伝子・細胞療法の確立
Project/Area Number |
15K09789
|
Research Institution | Jikei University School of Medicine |
Principal Investigator |
伊藤 宗成 東京慈恵会医科大学, 医学部, 講師 (20408371)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | iPS細胞 / 先天性表皮水疱症 / 遺伝子治療 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度の到達目標は、①遺伝子変異を修復したiPSCの表皮細胞(KC)、線維芽細胞(FB)、骨髄由来幹細胞(BMSC)への分化誘導、②iPSC由来細胞のin vivoでの機能解析であったが、昨年度までに到達予定であった「遺伝子相同組み換えを利用した、患者由来iPSC内での遺伝子変異の修復(遺伝子治療)」が終了しておらず、まずはそちらの達成が第一の目標となった。 昨年度までに、鋳型DNAとCRISPR発現vectorをElectroporationにて患者由来iPSCに導入し、薬剤耐性による選別を経て、遺伝子変異の修復がなされていると確認された細胞株を獲得していた。そのため本年度は、遺伝子改変後のiPSCから薬剤耐性遺伝子の除去を行うことから着手していた。しかしながら、Transposaseを細胞内で発現させても薬剤耐性遺伝子が除去できず、現在まで明らかな原因の特定にも至っていない。そのため現在は、もうひとつの遺伝子変異をターゲットとした新たな鋳型DNAを作製し、改めて遺伝子治療を試みているところであり、残念ながら計画に遅れが生じている。 本年度中の到達目標①については、昨年度までKCへの分化を中心に研究を進めていたが、共同研究者による近年の報告によると、先天性表皮水疱症の治療に対する間葉系幹細胞(MSC)の有用性が示されていることから、iPSCをMSCに分化させるプロトコールを試行中である。現在までにiPSCからMSCに類似した紡錘形細胞を分化誘導することに成功しており、遺伝子レベルではMSC特異的な表面マーカーの発現が確認されている。今後はFACSを用いた表面マーカーの確認、間葉系三系統への分化能の証明などを行い、さらなる細胞特性の解析を進める予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
当初の計画と比較すると大幅な遅れが生じている。これは遺伝子変異の修復で得られたiPSCから薬剤耐性遺伝子が除去できないという想定外の問題が生じたことによる。さらに、この問題の解決のために検証実験を行ったこと、最終的に新たな鋳型DNA作製にまで遡って研究を再出発させたことなどに、大幅に時間が費やされたことも影響していると思われる。遅れた要因として、人的要素や経済的要素、エフォートの低下は考えていない。
|
Strategy for Future Research Activity |
今回の失敗を活かし、新たに作製した鋳型DNAには、万が一薬剤耐性遺伝子が除去できなかったときにも対応できる仕組みを組み込んだため、同様の失敗は生じないと思われる。またその新たな鋳型DNAで遺伝子治療を施した患者由来iPSCもすでに取得しており、現在その解析を進めている。今後はさらに推進されていくものと思われる。 昨年度まではKCへの分化がうまくいっていないことが懸念材料であったが、MSCへの分化実験にシフトすることで、現在のところ順調に推移していると考えている。
|
Causes of Carryover |
年度末に次年度使用額を上回る試薬の購入があり、請求は発生しているが、残金不足のため支払いが行われなかったためである。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
繰り越すこととなった請求額については、来年度支給額と合算して支払う予定である。
|