2015 Fiscal Year Research-status Report
乳癌術前化学療法の治療効果における局所ならびに全身性の免疫応答の意義の解明
Project/Area Number |
15K10077
|
Research Institution | Hyogo Medical University |
Principal Investigator |
今村 美智子 兵庫医科大学, 医学部, 助教 (50567211)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
三好 康雄 兵庫医科大学, 医学部, 教授 (50283784)
盛本 浩二 大阪女子短期大学, その他部局等, 教授 (00599996)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | 乳癌 / 治療効果 / 免疫応答 / サイトカイン / 免疫チェックポイント |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、乳癌の治療効果に関与する免疫機構を局所と全身の免疫応答によって明らかにする。全身の免疫応答の評価として、血清中サイトカインをBio-Plex2200マルチプレックス検査にて測定した。サイトカインは、IL-1β, 1ra, 4, 6, 7, 8, 9, 10, 12(p70), 13, 17, Eotaxin, FGF basic, G-CSF, IF-γ, IP10, MIP-1α, MIP-1β, PDGF-bb, PANTEC, RANTEC, TNF-α, VEGFである。対象は53例で、25例は術前化学療法(NAC)の前後で測定し、残り28例のうち、12例の無再発症例、16例の再発症例の手術時血清サイトカインを測定し、再発に関与する因子を検討した結果、ベースラインの血清中RANTES値は、再発群で無再発群に比べて有意に高値を示した(p=0.0062)。RANTESにより生じる炎症反応が乳癌の増速や進展に関与し予後に影響する可能性が推測される。また、NAC25例を対象に治療前、後でサイトカインを測定し治療効果と相関する因子を検討した。25例のうち病理学的完全奏効(pCR)群7例とNon-pCR群18例で検討した結果、pCR群では、IL-1ra(p=0.0082)とTNF-α(p=0.023)が有意に高い値を示し、IL-9(p=0.018)とFGF basic(p=0.028)値が有意に低下したことから、ベースラインで免疫応答のある乳癌では、より治療効果が高い可能性があり、免疫応答が治療反応性に関与している可能性がある。 局所における免疫応答と治療効果を評価するため、NAC前の生検組織、NAC後の手術検体において免疫組織染色を行った。既に70症例の免疫組織染色を行っており、今後CD8, FOX-P3, PD-1, PD-L1を評価する予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成27年度は、患者の化学療法前および術後の腫瘍検体を集積することと、局所における免疫応答を解析することであった。当施設では年間約50例に対して、術前化学療法を施行している。乳癌局所における免疫応答を評価するために、NAC前の針生検で採取した組織ならびに、NAC後の手術検体において免疫組織染色を行った。評価する項目は、ヘルパーT細胞マーカーのCD8, 抑制性T細胞マーカーのFOX-P3, 免疫チェックポイントのマーカーのPD-1, PD-L1である。すでに70症例において免疫組織染色を終了しており、さらに症例数を追加して評価の予定であったが、予定より症例数の集積が不足したため免疫組織染色自体が当初の予定より遅れていて評価できなかったこと、ヘマトキシリン・エオジン染色による組織でのリンパ球浸潤の評価もできなかったことで遅れが生じた。そこで先に平成28年度に行う予定であった全身性の免疫応答の評価として末梢血液中のサイトカインの評価を先に開始した。ところがこちらも症例数の集積不足により血清中サイトカイン測定が少数となったこと、測定の条件設定に時間がかかったために今年度は一部しか測定できなかったことから全体的に遅れが生じた。
|
Strategy for Future Research Activity |
次年度は、さらに症例を追加してBio-Plex2200マルチプレックス検査にて末梢血液中のサイトカインを測定し全身性の免疫応答に関して評価を深めていく。条件設定はおおむねできているので測定は可能と判断する。また、局所における免疫応答の評価としては、ヘマトキシリン・エオジン染色によるリンパ球浸潤の程度を評価していき、局所の免疫組織染色を行った因子と全身の免疫応答として測定した血清中の因子との相関の有無を検討する。そして、局所での免疫反応、全身性の免疫応答を組み合わせて評価し、化学療法の治療効果や予後との相関を検討する。具体的には病理学的治療効果(pCR群 vs Non-pCR群)、臨床的効果(奏効群(完全奏効+部分奏効 vs 非奏効群(不変+増悪))別に、それぞれの群と相関する因子を同定する。局所の免疫組織染色に関しては、さらに症例を追加して予定通り行う努力を最大限にして、CD8とFoxp3の比や、PD-1やPD-L1といった他の因子を組み合わせることで相関が認められるかどうかに関しても検討を行う。血清因子に関しても同様に評価する。追加で化学療法の種類ごと、また、乳癌のサブタイプや臨床病理学的な因子と、免疫応答との相関に関しても解析を行う。本年度は研究の遂行に遅れが生じたため、今後は本研究が計画に沿って達成される様に最大限の努力をする。そのため、それぞれの実験において熟練した研究分担者と相談し、効率的に計画を遂行していく。
|
Causes of Carryover |
学会に出席できなかったので旅費を使用せず、次年度使用額が生じた。 局所の免疫応答の評価として、症例数の集積が不足したため免疫組織染色が当初の予定より遅れていること、リンパ球浸潤の評価ができなかったことで遅れが生じた。また、全身の免疫応答の評価として、症例数の集積不足により血清中サイトカイン測定も少数になったこと、測定の条件設定に時間がかかったために今年度は一部しか測定できなかったことから全体的に遅れが生じ、次年度使用額が生じてしまった。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度は、局所の免疫応答評価として、症例数を増やして免疫組織染色を予定通りできるように遂行していく。またリンパ球浸潤の評価もおこなっていく。全身の免疫応答の評価としてbioplexで血清サイトカインを測定するにあたり条件設定はほぼできているので、次年度は順次症例を増やして測定していく。そして、その成果を学会で発表できるようにしていく。
|