2016 Fiscal Year Research-status Report
脳動脈瘤発生における血行力学的因子の役割検討および瘤形成抑制への試みに関する研究
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15K10323
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Research Institution | Department of Clinical Research, National Hospital Organization Kyoto Medical Center |
Principal Investigator |
福田 俊一 独立行政法人国立病院機構(京都医療センター臨床研究センター), その他部局等, 主任研究員 (10600546)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
下權谷 祐児 東北大学, 学際科学フロンティア研究所, 助教 (30552575)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | wall shear stress / P2X4 purinoceptor / CFD / cerebral aneurysm / disturbed flow |
Outline of Annual Research Achievements |
動物実験では、平成27年度に血管内皮細胞のずり応力センサーであるP2X4プリノセプターの遺伝子欠損マウスでは、脳動脈瘤誘発処置後の動脈瘤発生率がコントロール群と比較して有意に低いことが示され、また免疫染色学的に脳動脈瘤形成関連因子であるiNOS, MCP-1, COX-2などの発現も著しく抑制されていることが示唆された。そこで平成28年度では、このP2X4プリノセプター阻害因子であるparoxetineを脳動脈瘤誘発処置を施したラットに投与し、非投与群と動脈瘤誘発率を比較し、さらにPCR法によって脳動脈瘤形成関連因子の発現量を比較検討したところ、paroxetine投与群では非投与群と比較して有意に脳動脈瘤発生率が抑制されていることが示された (p=0.031)。また、PCR法では非投与群と比較して、COX-2 (p=0.00085)及びIL1-b (p=0.038)でparoxetine投与群では有意に低下していた。 CFD解析では、すでに脳動脈瘤破裂危険因子として判明している脳動脈瘤の長径と発生部位の危険因子としての原因を血行力学的に説明できるかどうかを検討した。臨床研究で登録された90症例の前交通動脈瘤及び中大脳動脈瘤に対して、ずり応力の程度を表す力学指標群と乱流の程度を表す力学指標群について多変量解析を行ったところ、長径7mm以上の瘤は7mm未満の瘤に比べて有意に低ずり応力で (p=0.0135)、乱流の程度を表す各指標が有意に高値であった (OSI, GON, NtransWSS全てp<0.0001)。また、前交通動脈瘤は中大脳動脈瘤に比べて有意に低ずり応力であった (p=0.0007)。低ずり応力や強い乱流は血行力学的に破裂に関与していると報告されており、脳動脈瘤の長径と発生部位が破裂危険因子である理由を血行力学的に説明することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
動物実験に関しては、27年度でやや遅れていた分野であるparoxetine投与による脳動脈瘤誘発率への影響に関する実験が完了し、優位な結果を得られた。さらに、PCR法に関してもいくつかの脳動脈瘤形成関連因子について有意な結果を得ることができた。 CFD解析に関しては、臨床研究では460症例が登録され、現在観察期間中である。観察期間終了は平成31年3月の予定であり、最終結果を得られるのは平成31年度の見込みである。そこで、28年度は新たな試みとして、すでに判明している動脈瘤破裂危険因子の理論的背景をCFD解析を用いて血行力学的に説明できるかどうかを検討し、有意な結果を得た。この結果から、CFD解析によるsimulationが破裂リスクの検討に有用であることが示唆された。
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Strategy for Future Research Activity |
動物実験に関しては、PCR法を進めて個体数を増やし、論文としてまとめて年度内に投稿したいと考えている。 CFD解析については、28年度に行った解析結果をまとめて論文に投稿し、さらに動脈瘤内の局所的な乱流の発生状態についての検討を行いたい。
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Causes of Carryover |
平成28年度にに使用予定であった実験費用が予定よりも少額であったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
CFD解析ソフトの保守費用、ラット購入及び飼育費、免疫染色及びPCR法を行うための試薬の購入費用、国際学会発表費用に用いる予定である。
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