2017 Fiscal Year Research-status Report
神経線維腫症2型はなぜ難病?孤発例神経鞘腫との比較による分子機序解明と治療法開発
Project/Area Number |
15K10340
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Research Institution | Fukushima Medical University |
Principal Investigator |
斎藤 清 福島県立医科大学, 医学部, 教授 (00240804)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
森 努 福島県立医科大学, 看護学部, 准教授 (60244373)
岩味 健一郎 愛知医科大学, 医学部, 講師 (80534841)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 神経繊維腫症2型 / 髄膜腫 / 悪性髄膜腫 / 神経鞘腫 / 遺伝子発現解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
神経線維腫症2型(NF2)は常染色体優性の遺伝性難病であり、神経系に多数の神経鞘腫や髄膜腫が発生して長期予後も不良である。国内807名の臨床調査個人票の解析から、6割は最近の経過が悪化しており、若年発症、家族歴あり、治療歴ありが臨床症状スコアーの悪化に関与していた。NF2に伴う腫瘍は病理学的に良性であるが、孤発例とは異なることが知られている。そこで、NF2に伴う神経鞘腫に特徴的な発現遺伝子群を同定し、新規治療に結びつけることが本研究の目的である。 平成29年度には更新されたTCGAデータベースを用いた解析を行い、パスウェイ予測から核内レセプター、ミトコンドリアと酸化的リン酸化、翻訳制御など、機能予測からDNA修復に関わる癌抑制遺伝子の重要性が指摘された。また前年度にフランスのINSERMとMTA契約を締結して入手した神経鞘腫SC4細胞株に加えて、UCLAとのMTAによりHEI193細胞株も入手し、実験に用いるために継代培養し保存した。 同時に研究を進めている髄膜腫については、先の報告で髄膜腫の再発例にメチル化の頻度が高かったIGF2BP1遺伝子に着目し、悪性髄膜腫のcell lineであるHKBMM細胞に対して、CRISPR-Cas9法を用いてIGF2BP1遺伝子のknock out細胞を作成し、各種ストレス耐性、放射線感受性に関して検討し、遺伝子学的特性について解明を行った。IGF2BP1遺伝子をknock outしたHKBMM細胞は、wildのHKBMM細胞と比較して遊走性が亢進しているか、細胞接着が低下している可能性があり、さらに解析をすすめている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成29年度には更新されたTCGAデータベースを用いた解析を行い、パスウェイ予測から核内レセプター、ミトコンドリアと酸化的リン酸化、翻訳制御など、機能予測からDNA修復に関わる癌抑制遺伝子の重要性が指摘された。また神経鞘腫SC4細胞株に加えてHEI193細胞株も入手し、実験に用いるために継代培養し保存した。一方で、NF2に多発するもう一つの神経系腫瘍である髄膜腫に関しては研究を継続している。先の報告で髄膜腫の再発例にIGF2BP1遺伝子のメチル化の頻度が高かったことからIGF2BP1遺伝子に着目し、悪性髄膜腫細胞であるHKBMM細胞に遺伝子改変を行い解析した。sgRNAを用いてIGF2BP1遺伝子をknock downした細胞ではcontrol細胞より放射線照射後に死亡する細胞が著明に多く、放射線感受性が高まることが予想された。さらに、CRISPR-Cas9法を用いてIGF2BP1遺伝子のknock out細胞を作成して、IGF2BP1の悪性髄膜腫における機能を解析した。IGF2BP1遺伝子をknock outしたHKBMM細胞は、wildのHKBMM細胞と比較して遊走性が亢進しているか、細胞接着が低下している可能性があり、関連する因子について解析を現在すすめている。
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Strategy for Future Research Activity |
NF2に多発する良性脳腫瘍である神経鞘腫と髄膜腫を研究対象としている。髄膜腫については、これまでに再発や悪性転化、浸潤性に関係する遺伝子を同定した。それらの中でIGF2BP1に着目してその機能を解析し、IGF2BP1遺伝子のknock downおよびknock out細胞を作成した。放射線感受性、遊走性および細胞接着との関連など、引き続き機能解析を継続して治療法開発に結びつける。同様の手法を用いて神経鞘腫の研究も進めるため、細胞株を2種類準備した。TCGAデータベースを用いた解析の機能予測からDNA修復に関わる癌抑制遺伝子の重要性が指摘されており、解析のターゲットとすべき遺伝子を絞り込んで研究を行う。また、bevacizumabの効果については医師主導治験の準備を進めている。臨床例が蓄積されれば、その後に摘出した腫瘍についてもVEGF関連遺伝子とともにターゲット遺伝子の発現を確認する。 髄膜腫および神経鞘腫は良性脳腫瘍の代表であるが、時に治療が困難で患者の予後も不良のことがある。良性脳腫瘍については悪性転化を予防し、成長制御ができれば治療に苦慮することはない。NF2を対象として、良性脳腫瘍に対する新しい治療法の開発に結びつけたい。
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Causes of Carryover |
神経鞘腫の研究が進行しなかったために次年度使用額が生じた。 次年度には悪性髄膜腫の研究を継続し、神経鞘腫についても研究を行い、使用する計画である。
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[Presentation] Our struggle for Neurofibromatosis type 22018
Author(s)
Saito K, Iwatate K, Ichikawa M, Nemoto M, Jinguji S, Yamada M, Kuromi Y, Sato T, Sakuma J, Watanabe T, Fujii M
Organizer
The 8th International Mt.BANDAI Symposium for Neuroscience
Int'l Joint Research
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[Presentation] 神経線維腫症2型に対する治療:最適な治療は何か?2017
Author(s)
齋藤 清, 藤井正純,岩楯兼尚, 山田昌幸, 黒見洋介, 村上友太, 古川佑哉, 神宮字伸哉, 市川優寛, 佐藤 拓, 佐久間潤
Organizer
第26回日本聴神経腫瘍研究会
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[Presentation] 聴性脳幹インプラント(ABI)の施行経験2017
Author(s)
蛭田 亮, 佐久間 潤, 小祝 萌, 長井健一郎, 根本未緒, 飯島綾子, 佐藤祐介, 岩楯兼尚, 神宮字伸哉, 市川優寛, 小島隆生, 藤井正純, 齋藤 清, 森田明夫
Organizer
第81回福島脳神経外科談話会