2016 Fiscal Year Research-status Report
ニコチンシグナルを介したマクロファージ依存的炎症性疾患の新規治療戦略
Project/Area Number |
15K10563
|
Research Institution | Wakayama Medical University |
Principal Investigator |
岸岡 史郎 和歌山県立医科大学, 医学部, 教授 (60137255)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
雑賀 史浩 和歌山県立医科大学, 医学部, 助教 (10644099)
深澤 洋滋 関西医療大学, 保健医療学部, 准教授 (70336882)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | ニコチン性アセチルコリン受容体 / マクロファージ / 神経障害性疼痛 / サイトカイン / ケモカイン / ミクログリア / フェノタイプ / 慢性炎症 |
Outline of Annual Research Achievements |
慢性炎症を伴う難治性疾患として、坐骨神経部分結紮による神経障害性疼痛モデルマウスを用いた検討を行った。傷害末梢神経においてマクロファージの集積が認められ、これらの多くがニコチン性アセチルコリン受容体(nAChR)α4β2サブタイプを発現していた。マクロファージ枯渇薬であるリポソーム化クロドロン酸を傷害神経周囲に局所投与すると、神経傷害に起因する機械的アロディニアが改善され、マクロファージの機能的意義が立証された。またnAChRα4β2サブタイプ特異的アゴニストであるTC-2559、SazetidineAを傷害神経周囲に局所投与した場合においても、その用量依存的に機械的アロディニアの改善効果が認められた。さらに培養マクロファージにおいてリポ多糖による炎症性サイトカイン・ケモカインの発現増加がTC-2559処置により抑制された。一方、コリンエステラーゼ阻害薬であるDonepezilおよびGalantamineの傷害神経周囲投与は顕著な機械的アロディニア改善効果を示さなかった。神経傷害後の脊髄後角において活性化されるミクログリアはCD68、interferon regulatory factor-5、interleukin-1βを高発現する炎症性(M1)フェノタイプにシフトしていた。これらの遺伝子発現増加はいずれも、TC-2559の傷害神経周囲投与により抑制されることが明らかになった。本研究により、nAChRシグナルはマクロファージおよびミクログリアのM1フェノタイプ転化を抑制し、炎症性疾患を改善する可能性が示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の計画では、2年目においてマクロファージの機能ならびにフェノタイプ制御に及ぼすnAChRシグナルの影響を明らかにすることを目標としていた。現時点では慢性炎症を伴う神経障害性疼痛においてマクロファージの特徴付けおよびnAChRの有効性を示すことができており、今後は当初の計画に沿って研究を進められると考えている。
|
Strategy for Future Research Activity |
神経障害性疼痛以外の炎症性マクロファージ依存的疾患においてマクロファージの機能的特徴付けを行うと共に、nAChRリガンドによる治療効果を明らかにする。神経障害性疼痛を含むこれら疾患に関与するマクロファージのフェノタイプ制御機構におけるnAChRシグナルの役割およびその分子機構を多角的に検討する。
|
Causes of Carryover |
初年度において本研究以外の業務が多忙であり、全額を2年目以降に繰り越した。本年度は計画に沿った実験が十分に行えたものの、一定額を次年度に使用することが望ましいと考えた。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度は当初の計画に基づく最終年度であり、種々の炎症性疾患モデルにおけるnAChRシグナルを応用した治療戦略の確立を目指して研究を進めていく。研究費は主に消耗品費や動物費として計画通りに使用し、一部を成果発表旅費に充てる。場合によっては本研究を1年延長し、研究を十分に遂行できるよう最善を尽くす。
|
Research Products
(5 results)