2016 Fiscal Year Research-status Report
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15K10942
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
古賀 沙緒里 九州大学, 医学研究院, 助教 (80590249)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ダイオキシン受容体 / トリプトファン / 細胞遊走 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでに我々は,FICZが表皮細胞の遊走を増強し,マウス皮膚の創傷治癒を促進することを明らかにしている. そこで本年度は,目的のひとつであるFICZの産生意義の解明に向けて,FICZがトリプトファンから産生されることに着目し,トリプトファンとの比較実験を行った.近年,慢性ストレス負荷マウスにおいて,トリプトファンがTNF-αおよびIDOの発現を抑制して,創傷治癒を促進するという報告がなされた.そこで,FICZがTNF-αおよびIDOの発現に影響を与えるか検討を行った.FICZが既知の標的遺伝子であるCYP1A1の発現を上昇させる条件下で検討した結果,表皮細胞(HaCaT)およびマウス(balb/c, C57BL/6)のいずれにおいてもFICZはTNF-αおよびIDOの発現に影響しなかった.次に,トリプトファンとFICZの創傷治癒に対する効果の比較を行った.HaCaT細胞を用いて遊走能への影響を検討した結果,トリプトファンは100 µMで促進傾向を示したのに対して,FICZはわずか100 nMで有意に細胞遊走を促進した.したがって,トリプトファンから産生されたFICZは親化合物よりも顕著な細胞遊走促進能を有することが明らかになった.今後は,トリプトファン由来化合物7種に同様の効果があるか検討する予定である. また,FICZの臨床応用へ向けて,安全性を確認するため,FICZ処理によって創傷治癒の促進が認められたマウス皮膚組織の瘢痕を確認した.組織染色(HE, EVG, MT)による評価の結果,対照群とFICZ処理群の瘢痕に差は認められなかった.したがって,FICZが創傷治癒を促進することによる悪影響はないと考えられる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の課題は3つあり,(1)FICZの作用機序の解明,(2)FICZの産生意義の解明,そして(3)臨床応用へ向けた検討である.昨年度は(1)を中心に実施し,FICZがAhRリガンドであることから,FICZの作用機序としてAhRを介しているのか検討し,AhRの関与がないことをin vitroおよびin vivoで証明した.今年度は(2)を中心に検討し,FICZがトリプトファンから産生されるものの,トリプトファンとは異なる機序でより顕著な細胞遊走促進効果を示すことを明らかにした.また,(3)に関連して,FICZ処理により創傷治癒が促進したマウスの瘢痕が対照群と差がないことも示した.したがって,当初の計画内容とは少し異なる部分もあるが,本研究の課題解決に向けて順調に研究を進められていると考えている.現在,(1)および(2)の関連実験を行っているが,予備検討の結果,作用機序が明らかになりつつあり,引き続き検討を行いたい.
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は最終年度であるため,FICZの作用機序の解明を目指す.現在,予備検討でFICZにより活性化されるシグナル分子の探索を行っているが,特定条件下である分子の活性化が認められている.この現象が間違いないか多面的に検討し,この分子がFICZの細胞遊走能と関係しているのか明らかにしたい.また,FICZ以外でトリプトファンから産生される化合物7種を用いて,これらの細胞遊走への影響を検討する予定であり,トリプトファンから産生されるFICZの特異性についても明らかにしたい
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Causes of Carryover |
昨年度に生じた次年度使用額分があったことと,昨年度に購入した物品等や研究室所有の試薬類があったため.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度は当初の計画通り,主に消耗品費が大半を占めると予想される.また,FICZの作用機序の解明に向けたシグナル分子の解析が中心となるため,抗体および阻害剤等の試薬類の購入も予定している.研究期間全体を通じて,使用予定物品の大きな変更はない.
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