2016 Fiscal Year Research-status Report
末梢及び中枢神経再生のための人工基質と成長因子の応用
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15K10960
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Research Institution | The Tazuke Kofukai |
Principal Investigator |
平井 達也 公益財団法人田附興風会, 医学研究所 第5研究部, 研究員 (50465952)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鈴木 義久 公益財団法人田附興風会, 医学研究所 第5研究部, 研究主幹 (30243025)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 神経再生 / 人工材料 / ヘパリン / 成長因子 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでに脊髄損傷の治療方法として、脊髄損傷部位での空洞化を補うために私達の考案した人工材料を用いてきた。また人工材料にヘパリンを共有結合させることで、塩基性繊維芽細胞成長因子を人工材料から徐放させることを可能とすることにより、更に神経軸索の伸長を確認することができた。以上のことから私達は、更なる神経軸索伸長の早期再生と、伸長距離を少しでも伸ばすことを可能にするための実験に取り組んできた。 人工材料に塩基性繊維芽細胞成長因子を結合させるためにヘパリンを使用してきた。人工材料にヘパリンを共有結合させることで、ヘパリン結合性蛋白である塩基性繊維芽細胞成長因子は人工材料と結合し、人工材料が生体内で分解吸収される期間内で塩基性繊維芽細胞成長因子が徐放されるものと考えてきた。更に、これまでの実験結果から、対象として人工材料のみを移植した群に比べて、ヘパリンを用いた人工材料では出血が多く、新生したと思われる毛細血管が無数に見られた。以上のことから、人工材料にヘパリンを加えるということは、ヘパリン結合性蛋白である様々な成長因子を結合させるだけでなく、新生毛細血管から供給される種々の栄養因子等により細胞再生の環境を整えていたと考えた。 今後のことを含めて、現在この人工材料の改良を進めているが、ヘパリン結合性蛋白である種々の成長因子を利用するかどうかに関わらず、ヘパリンを共有結合させた材料の工夫が必要と考える。また、このことから、ヘパリン結合性蛋白である成長因子以外の有効な因子の同定と神経軸索伸長抑制因子の関わりを検討中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
脊髄損傷部位での神経軸索伸長において。 現在までの実験結果から導かれることとして、人工材料の残存期間は生体に与える影響を考慮し、短期間が好ましいと考えてきた。然し、充分な神経軸索の伸長を誘導するためには、ある程度の人工材料の残存期間が必要と思われる結果を得られた。また、この人工材料の残存期間を延ばすことにより、塩基性繊維芽細胞成長因子の徐放効果の延長も期待できるものと考え、ヘパリンを共有結合させた人工材料の改良を行っている。この改良が終われば、種々のヘパリン結合性蛋白である成長因子を用いた神経軸索の伸長を可能にできるものと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
神経軸索伸長に最も効果のある因子を検討する。これまでに塩基性繊維芽細胞成長因子が神経軸索伸長に有効であることを報告してきたが、詳細な顕微鏡観察を重ねた結果、人工材料に塩基性繊維芽細胞成長因子を結合させるためのヘパリンの存在も有効な因子であることが解った。このことからヘパリン結合性蛋白である種々の成長因子だけに着目せず、様々な成長因子を利用して神経軸索伸長を試みる。今後HIF-1を用いた実験系を計画しているが、それ以外の因子の検討も考えている。特にN-カドヘリンについては、既に神経再生において重要な因子であることが報告されており、これらの報告からN-カドヘリンによる神経再生はN-カドヘリンの濃度勾配により、神経軸索を一定方向へ伸長させることができると考え、今後の検討課題とする。
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Causes of Carryover |
現在までに利用してきた実験動物の病理学的解析を中心に行ってきたため、新たな実験モデルラットを作成するまでに至らなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
人工材料の改良が終了次第、新たな実験モデルラットを作成していく。
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