2016 Fiscal Year Research-status Report
Dドーパクロムトートメラーゼの脂肪組織特異的発現・作用機序
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15K11040
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
岩田 武男 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(歯学系), 助教 (10350399)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
水澤 典子 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(歯学系), 助教 (80254746)
吉本 勝彦 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(歯学系), 教授 (90201863)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | アディポカイン / 脂肪細胞 / 転写調節 |
Outline of Annual Research Achievements |
D-dopachrome tautomerase (DDT)は脂肪組織から分泌される生理活性物質アディポカインの一つで、インスリン抵抗性改善作用を有している。肥満者の脂肪細胞ではDDT発現が低下していること、前駆脂肪細胞から脂肪細胞への分化過程で発現が上昇することが知られているが、遺伝子転写の分子機序は不明であった。そこで本研究ではDDT遺伝子の転写調節に関わる分子の同定を目的に実験を行った。 約1,500種の化合物からなる薬物ライブラリーからDDT遺伝子の転写に影響を与える薬物のスクリーニングを行ったところ、AMP-activated protein kinase(AMPK)の賦活薬がDDT遺伝子転写調節活性を高めたことから、DDT遺伝子の転写調節へのAMPKの関与が示唆された。 AMPKはSIRT1を介して転写調節因子FOXO1を活性化することが知られている。DDT遺伝子の転写調節領域のFOXO1結合モチーフへのFOXO1の結合を認めたが、FOXO1常時活性化変異体の過剰発現系およびFOXO1阻害薬を用いた検討では、FOXO1が前駆脂肪細胞株SGBS細胞およびその分化脂肪細胞でDDT遺伝子の転写を抑制することが示された。一方、ヒト胎児腎線維芽細胞株HEK293細胞ではFOXO1によるDDT遺伝子の転写促進を示すデータが得られた。以上の結果よりFOXO1のDDT遺伝子転写調節は細胞特異的であること、脂肪細胞でのAMPK活性化によるDDT遺伝子転写促進にはSIRT1/FOXO1経路以外のシグナルが関与することが示唆された。 AMPK賦活薬を作用させたSGBS脂肪細胞ではシグナル分子mTORの活性が低下する。さらにmTOR阻害薬がDDT遺伝子の転写活性を上昇させたことから、脂肪細胞でのDDT遺伝子転写調節へのAMPK/mTOR経路の関与が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
肥満者の脂肪細胞でDDT発現が低下していること、DDTはインスリン抵抗性を改善する作用をもつことから、脂肪細胞でのDDT発現を上昇させる薬物は肥満によるインスリン抵抗性を改善する治療薬として応用が期待される。本研究ではAICAR(5-aminoimidazole-4-carboxamide-1-β-D-ribofuranoside)とその誘導体がDDTの転写活性を促進することを明らかにすることができた。さらにその薬物によるDDT遺伝子転写促進にはAMPK/SIRT1/FOXO1経路、AMPK/mTOR経路が関与すること、さらにその転写調節には細胞特異性があることを明らかにした。 DDTは近年、MIF(macrophage migration inhibitory factor)の機能的ホモログとして認識されるが、脂肪組織ではインスリン抵抗性を惹起するMIFと相反する作用と異なる発現様式をもつ。本研究はその臓器特異的なDDT作用あるいは発現機序の解明の足がかりになるものと考えられる。 以上の点を考慮して、本研究は概ね順調に推移していると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
DDTは脂前駆脂肪細胞に作用して脂肪分化を抑制する。興味深いことにこのDDT抑制作用はマウス前駆脂肪細胞株3T3-L1では認められないことから、ヒト特異的であることが示唆される。そこでこのDDTのヒト特異的脂肪分化抑制機序の解明を試みる。ヒト特異的に糖質コルチコイド依存性に脂肪細胞で発現誘導されるLMO3は脂肪分化促進作用をもつが、これまでの予備実験でDDTはLMO3発現を低下させることを明らかにしている。そこでDDTのLMO発現抑制機序について検討を行う。 またDDT受容には構造が類似するMIFの受容体複合体の一つであるCD74を介することが知られている。CD74は様々な受容体と相互作用することで異なるシグナルを細胞内に伝達する。そこでDDT受容に関するCD74のパートナーの同定を試みる。
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Causes of Carryover |
既存の消耗品や機器を使用したことや、実験の効率化を図ることで出費を抑えることができた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
遺伝子解析様試薬、蛋白質解析用試薬、免疫染色用試薬等の消耗品購入費や、学内共同利用施設に設置されている機器・動物施設を使用するための機器使用料、施設料、学会での成果発表のための旅費、外国語論文の校閲、論文投稿料を予定している。
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Research Products
(2 results)