2015 Fiscal Year Research-status Report
歯髄炎における炎症・抗炎症バランス制御機構の解析とTh17細胞の役割
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15K11115
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
中西 正 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部, 准教授 (00217770)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
湯本 浩通 徳島大学, 大学病院, 講師 (60284303)
細川 義隆 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部, 助教 (90346601)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 歯髄 / 炎症 / IL-17 / 象牙芽細胞 / ケモカイン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、歯髄炎におけるTh17細胞の役割を解析することを目的とし、まず炎症歯髄中のTh17細胞から産生されるインターロイキン(IL)-17の発現を検討することとした。歯髄に到達するう蝕を有し、重度の歯周疾患を罹患せず、臨床的に不可逆性歯髄炎と診断されたヒト抜去歯より炎症歯髄組織を採取し、ホルマリン固定・パラフィン包埋したのち、薄切組織切片を作製し、組織学的検索のための試料とした。歯髄の炎症状態を確認するため、ヘマトキシリン・エオジン染色を行った後、活性化T細胞に発現するCD45ROに対する免疫染色を行い、T細胞の集積が認められる領域を確認し、本年度はIL-17染色の条件設定を行った。 また、歯髄の最外層に位置する歯髄構成細胞である象牙芽細胞に着目し、象牙芽細胞様細胞として樹立されたラットKN-3細胞を用いたときのIL-17に対する反応性、特にリンパ球浸潤に関与するケモカイン産生について検討した。実験方法として、KN-3細胞をサブコンフルエントになるまで培養後、IL-17を加え24時間刺激したのち上清を回収し、ケモカインであるCCL20濃度をELISA法にて定量した。さらに、炎症性サイトカインであるIL-1と共刺激したときのCCL20産生についても検討を加えた。その結果、KN-3細胞にIL-17を作用させたときCCL20産生はほとんど認められなかった。一方、IL-1はKN-3細胞におけるCCL20産生をIL-1濃度依存的に上昇させた。さらに、IL-17とIL-1を共刺激させたところ、相乗的にCCL20産生が増強することが示された。これらの結果より、象牙芽細胞様細胞は炎症条件下においてCCL20を産生し、さらにTh17細胞から産生されると考えられるIL-17との共刺激によりCCL20産生誘導を増強することにより、歯髄炎局所のケモカイン産生調節や細胞浸潤に関与している可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
炎症歯髄組織におけるIL-17の解析に関しては、作製試料数の要因により、その発現を確認するための条件設定を行うにとどまった。従って、培養細胞を用いた研究を当初の予定より前倒しで開始することとし、樹立された象牙芽細胞様細胞に対するIL-17の作用について検討し、ケモカイン産生能が調節される可能性が示されたが、現在の進捗状況としてはやや遅れていると評価している。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度は、実験に必要とされる試料数が十分に採取できなかったが、研究を推進するには今後も引き続き試料収集を継続し免疫染色に適した条件設定を検討していく必要がある。なお、十分な試料数が得られない場合を考え、平成27年度に前倒しで行ったように、象牙芽細胞様細胞を用いた培養実験をさらに展開していくことも視野に入れており、IL-17の作用について、他の抗炎症性サイトカインと比較しながら、炎症関連因子の発現様式を検討していく。
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Causes of Carryover |
本年度は、採取できる試料数が十分に得られなかったことや免疫染色における抗体反応性の要因から研究が一部進展しなかったこともあり、次年度への研究費が生じる状況となってしまった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度に使用する研究費の使用計画として、本年度に十分に行えなかった試料採取後の免疫組織化学実験の検討を引き続き行うとともに、本年度に前倒しで行った培養細胞を用いた実験をさらに推進すべく、合わせて使用していきたいと考えている。
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Research Products
(1 results)