2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K11368
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
上田 公子 (山口公子) 徳島大学, 病院, 助教 (40335807)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岩本 勉 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(歯学系), 教授 (90346916)
長谷川 智一 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(歯学系), 講師 (50274668)
北村 尚正 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(歯学系), 助教 (50614020)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 基質小胞 / 歯原性間葉細胞 / 歯原性上皮細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
象牙芽細胞やエナメル芽細胞、骨芽細胞、軟骨細胞は、それぞれ象牙質、エナメル質、骨、軟骨の形成を担う細胞であるが、これらの細胞がどのように硬組織を形成していくのか詳細な分子機構については不明な点も多い。これらの細胞はそれぞれ硬組織形成の基盤になる基質蛋白質の合成を担っているが、それだけでは石灰化は起きない。それらと同時に分泌される様々な酵素や生理活性物質を含む脂質二重膜で囲まれた基質小胞が石灰化部位の決定と初期石灰化に重要な役割を担っている。本研究では基質小胞の分泌メカニズムの解明とその応用方法の開発を目指す。 今年度も基質小胞の回収から研究をスタートした。歯原性間葉細胞株としてmDP細胞、歯原性上皮細胞株としてSF2を用いた。これらの細胞培養上清サンプルから、基質小胞を分離、回収するため、Total Exosome Isolationを使用した。培養液はウシ胎児血清(FBS)由来の基質小胞の混入をさけるため、FBSなしと、FBSを100,000gで18時間超遠心を行い、基質小胞を除去し、その上清を回収したFBSを使用した。培養液の量、培養時間、FBSの濃度の設定について検討した。目指す基質小胞が単離できたかどうかの確認として、タンパクを回収し、ウエスタンブロット法を行った。基質小胞中に含まれるタンパクの発現を確認するため、1次抗体としてCD9とCD81を用いた。培養細胞からもタンパクを回収し、同抗体を用いて、ウエスタンブロット法を行った。 結果、歯原性間葉細胞株mDPの培養上清からは、CD9とCD81の発現は確認できなかった。一方歯原性上皮細胞株SF2では、培養細胞でCD9とCD81の発現が確認され、さらに、培養上清においてもCD9のわずかな発現を認めた。 これらの結果より、歯原性間葉細胞より、歯原性上皮細胞の方が、基質小胞発現により関与している可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
今年度も、歯原性間葉細胞や歯原性上皮細胞の培養上清から基質小胞の分離、回収を目指し実験を始めた。今年度は基質小胞を超遠心にて除去したFBSを使用し、わずかな基質小胞の回収が可能になった。しかし、回収できた基質小胞はごくわずかで、今後の実験を行うための十分な量の基質小胞の回収は難しかった。 理由として、基質小胞を除去したFBSを使用する際の、培養時間、培養細胞数、培養上清量、FBSの濃度などの細胞を培養する条件の設定がうまくゆかず、今年度中に試みた条件設定では、わずかな量の基質小胞回収しかできず、細胞培養上清から十分な量の基質小胞を分離するための培養条件を確立できなかったことが原因として考えられた。また、より簡便で効率的な基質小胞の回収をめざし、市販のキットを試したが、十分な量の基質小胞の回収はできず、キットの変更や超遠心を用いた方法を先に試みた方が良かったかもしれない。また、今年度は歯原性間葉細胞と歯原性上皮細胞についての実験となったが、骨芽細胞株、軟骨細胞株についても同様の実験を試みる必要があったと考えられた。 回収した基質小胞のプロテオーム解析を行い、それぞれの細胞に発現するタンパクの解析を行い新規分子の同定を目指す予定だったが、基質小胞の回収がうまくゆかなかったため、タンパクの解析が進まなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
1)基質小胞の回収:前年度の結果より、歯原性細胞については、歯原性上皮細胞を中心に、細胞培養条件の見直し、新たなキットの使用、超遠心により、基質小胞の分離、回収を目指す。骨芽細胞株、軟骨細胞株からも基質小胞の回収をめざす。回収した基質小胞のプロテオーム解析を行い、それぞれの細胞に発現するタンパク質の解析を行い新規分子の同定を目指す。また、骨芽細胞、軟骨細胞、歯原性間葉細胞それぞれを比較することによって、それぞれの特異的な膜蛋白の発現の同定を試みる。 2)基質小胞の効率的回収法の開発:超遠心法に免疫沈降法を応用し、パネキシン3あるいはプロテオーム解析にて得られた膜タンパク質を利用して、効率的回収法・精製方法の開発を試みる。骨芽細胞、軟骨細胞、歯原性間葉細胞によって、それぞれ標的分子が異なる可能性がある。 3)新規石灰化誘導法の開発:精製した基質小胞をそれぞれの細胞株またはそれぞれの初代培養系に加えることによって、石灰化に及ぼす影響を検討する。添加する濃度、添加するタイミング等の検討を行い、効率的な石灰化誘導効果の方法を検討する。さらにはこれまでにない基質小胞のみを用いた新規の石灰化誘導法を開発する。これを基盤にし、マウスモデルでの石灰化誘導能について検討を行う。マウスモデルとしては、頭蓋冠開削モデルまたは歯の歯髄露髄モデルマウスを用いて、石灰化誘導効果について検討を行う。
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Causes of Carryover |
前年度、歯原性間葉細胞や歯原性上皮細胞の細胞上清から基質小胞の分離、回収を目指したが、年度中の十分な量の回収は難しかった。その後、回収した基質小胞のプロテオーム解析を行い、それぞれの細胞に発現するタンパク質の解析を行い新規分子の同定を目指す予定だったが、基質小胞を回収するところで研究が予定どおり進まず、タンパクの解析が進まなかった。前年度の予定で実行できなかった部分があるため、若干の次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
前年度十分行えなかった研究と合わせて、今年度の実験を行うため、次年度使用額については、実験の消耗品費として使用予定である。
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