2016 Fiscal Year Research-status Report
東日本大震災被災者を悩ます口腔乾燥・味覚障害に関する疫学調査と災害医療への提言
Project/Area Number |
15K11407
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
佐藤 しづ子 東北大学, 歯学研究科, 助教 (60225274)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
笹野 高嗣 東北大学, 歯学研究科, 教授 (10125560)
庄司 憲明 東北大学, 大学病院, 講師 (70250800)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 東日本大震災 / 震災ストレス / 口腔乾燥 / 味覚障害 / 高齢者 |
Outline of Annual Research Achievements |
東北大学病院には、東日本大震災の復興遅延による長期ストレスによる口腔乾燥および味覚障害に起因する全身状態の悪化や生き甲斐の喪失を訴える高齢患者が数多く訪れている。口腔乾燥は、特にストレスとの関連が強く、唾液分泌量増加に関わる副交感神経を抑制して唾液分泌量を低下させることが知られている。一方、味覚障害とストレスとの関連は、未だ不明であるが、味覚障害の原因の一つが口腔乾燥であることを鑑みると、震災後の長期ストレスが副交感神経活動を抑制して自律神経調節を障害し、味覚障害を惹起する可能性は高い。また、味覚障害は、抑うつ状態と関連することが知られているが、長期ストレスと抑うつ状態との関連、さらに長期ストレスと味覚障害との関連は明らかにされていない。このように、東日本大震災による長期ストレスが、高齢者に口腔乾燥や味覚障害を惹起する可能性は高いが、その実態は、現在まで明らかにされていない。一方、高齢者にとって、口腔乾燥や味覚障害は、摂食障害や食欲低下を引き起こし、高齢者の全身健康を害することが知られている。東日本大震災の長期ストレスによって引き起こされた口腔乾燥ならびに味覚障害は、口腔状態悪化や感覚異常にとどまらず、高齢者の全身健康に影響を及ぼしている可能性が高いが、この健康障害の危険性は、現在、全く認識されていない。 そこで、本研究は、口腔乾燥症の判定指標として総唾液分泌量ならびに小唾液腺分泌量測定を、また、味覚障害の判定指標としてうま味を含む基本5味の味覚感受性検査を用いて、震災長期ストレスに因る口腔乾燥ならびに味覚障害について研究を行う。 これまでに、東北大学病院歯科に、口腔乾燥または味覚障害を主訴に来院した患者に、アンケート調査、唾液分泌量測定、味覚検査を行い、その関連性がある患者の存在が示された。今後、さらに症例数を増やして検討をすすめる予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
東日本大震災から6年を経た現在も、災害復旧は遅れており、今なお、仮設住宅への居住を強いられている被災者も少なくない。現在、被災地への赴いての疫学調査を申請しているが、参加を拒む被災者も多く、被災地での疫学調査が難しく、研究は遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、被災地での支援活動を行っている法人を検索し、支援活動の一貫として、「測定による現状把握とその対策の援助」を働きかけ、測定に協力の得られる被災者を確保する努力を行っている。今後さらに、被災地で診療を行っている歯科医院や総合病院歯科との連携をすすめ、長期ストレスで口腔乾燥症や味覚障害を生じている被災者を確保する方法を検討する。
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Causes of Carryover |
今年度は、思いがけず研究参加を拒否する被災者が多かったため、被験者数が少なく、研究が遅延し、使用研究費が少なくなった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度は、被災地の医療機関に研究協力を依頼し、被験者の人数を増やす予定である。実際、本研究に理解を示す医療機関が見つかっており、次年度は研究が推進される予定である。
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Research Products
(6 results)