2015 Fiscal Year Research-status Report
自立高齢者における口腔カンジダ症リスク要因究明のためのコホート研究
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15K11425
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Research Institution | Iwate Medical University |
Principal Investigator |
岸 光男 岩手医科大学, 歯学部, 教授 (60295988)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 口腔カンジダ菌 / 地域高齢者 / 追跡調査 / 定着要因 / アンケート調査 |
Outline of Annual Research Achievements |
【対象と方法】2015年5月と11月に、岩手県某町において、2014年調査時に60歳以上であった住民を対象として調査を行った。臨地調査に先立ち、2014年度に調査対象となった266名に対して再調査の依頼文書、同意書ならびに口腔カンジダ症に関するアンケート(2014年度と同様)を郵送した。歯科健康調査を市町村が行う特定健康診査と同時に実施し、診査会場で同意書が得られた205名(男性88名、女性117名、平均年齢73.3±6.8歳)を対象に舌背と頬粘膜から口腔試料を採取した。得られた試料を滅菌PBSに浸漬、氷中保存後8時間以内にクロモアガーカンジダ培地(CHROMagerTM Candida)に接種し、37℃、48時間培養後にCandida albicansとC. glabrataおよびその他のカンジダ菌を弁別計測した。 【結果と考察】 2015年度に何らかのカンジダ菌が検出された者は舌背で64.4%(前年度62.4%)、頬粘膜で45.4%(前年度48.3%)であり、調査年による検出率の差は認められなかった。さらに検出率の差は、C. albicansとNon-albicans(C. albicans以外のすべてのカンジダ菌)に区分した場合にも認められなかった。しかし個別の結果では前年度の検出(-)から今年度(+)に、反対に検出(+)から(-)に転化した者が少なからず存在していた。さらに、コロニー数による定量的評価で、C. albicansについて差はなかったが、Non-albicansで2015年度の方が多い傾向が舌、頬粘膜ともに認められ、特に頬粘膜においては有意な差が観察された。アンケート調査結果と検出、量的増加についての関連を現在分析中である。これら、変化の要因を把握することができれば、口腔カンジダ菌の定着・増量予防のための知見が得られるものと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
対象地域は沿岸の被災地であり、人口の流出が続いているにもかかわらず、前年度調査対象の約77%を追跡調査することができた。現在、復興住宅への入居などが始まっており、今後著明な人口流出がないことが期待でき、本年度の調査同意者に次年度も協力してもらえる可能性が高い。さらに口腔試料採取からの口腔カンジダ菌の分離定量までの方法は確立され、現在の調査系列におけるデータの精度は高いものと自負できる。一方、前年度の断面調査結果の分析がまだ進行中であり、今年度の調査結果を詳細に分析するには到っていない。また口腔カンジダ菌症の前兆を捉えるためのアンケートの開発は、口腔カンジダ症発症が観察されていないため困難なことが予測される。現在定量的PCRの手技については、岩手県立生物工学研究所の指導を受け、ほぼ確立されたが、実際に臨地サンプルを適用するには到っていない。
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Strategy for Future Research Activity |
臨地調査のこれまでの流れの中に、定量的PCRのためのサンプルの採取と運搬方法をどのように組み込むかが当面の課題である。また、口腔内診査、アンケート結果と口腔カンジダ菌検出率ならびに量との関連を多変量で解析する必要がある。さらに断面調査の結果の解析だけでなく、本年度の結果で示した変化の要因もまた解析対象とする。
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Causes of Carryover |
想定した消耗品の使用につき、以下の理由で消費できなかった。定量的PCRが主義確立段階に留まり実際の採取サンプルに適用しなかったため、試薬消費量が少なかったこと。またPCRとサンプルならびにデータ管理に適切な人材が見つからなかったため、人件費を支出できなかったこと。また、論文校正料、投稿料を想定していたが、論文作成に到らなかったこと。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度は、定量的PCRを臨地採取試料に適用できる環境を整え、同時に適切な研究補助要員を確保して、2015年度の保管試料についても分析を行う予定である。また、論文の作成も行うことにより、次年度使用額については2016年度中に消費する見込みである。
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Research Products
(3 results)