2016 Fiscal Year Research-status Report
口腔細菌がインフルエンザ感染に及ぼす影響の解明とそれを基盤とした感染予防への応用
Project/Area Number |
15K11430
|
Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
神尾 宜昌 日本大学, 歯学部, 准教授 (60546472)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | インフルエンザウイルス / Porphyromonas gingivalis / ジンジパイン |
Outline of Annual Research Achievements |
インフルエンザと口腔は密接に関連しており、口腔ケアがインフルエンザの予防に有効とされているが、その分子メカニズムは不明である。本研究では、ウイルスの宿主細胞感染機構に注目し、口腔細菌がウイルスの感染性に及ぼす影響を検討した。 A型インフルエンザウイルス(IAV)が宿主細胞に感染するには、ウイルス表面のヘマグルチニン(HA)のアルギニン部がプロテアーゼにより開裂して膜融合能を獲得することが必須である。このプロテアーゼは主に宿主由来と考えられているものの、黄色ブドウ球菌由来のプロテアーゼによっても開裂する。口腔ケアがインフルエンザ発症のリスクを低下させる事実から、口腔細菌由来のプロテアーゼがHAを開裂することにより、IAV感染に関与している可能性が考えられる。主要な歯周病原菌であるPorphyromonas gingivalisはアルギニンを切断するジンジパイン(Rgp)とリシンを切断するジンジパイン(Kgp)を産生しており、HAを開裂する可能性がある。そこで本年度は、ジンジパイン欠損株を用いて、ジンジパインがIAVの感染に及ぼす影響を検討した。その結果、wild-typeおよびKgp欠損株(KDP129)の培養上清によりHAの開裂が認められ、さらに蛍光免疫染色ならびにプラークアッセイによる解析により感染が拡大することが認められた。一方Rgp欠損株(KDP133)およびKgp/Rgp欠損株(KDP136)の培養上清では影響を認めなかった。以上の結果から、P. gingivalisが産生するプロテアーゼの1つであるRgpはIAVのHA開裂活性を持ち、ウイルスの感染性獲得に関与することが示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ジンジパイン阻害薬ならびにジンジパイン欠損株を用いた実験により、RgpがIAVのHAを開裂し感染性獲得に関与していることが明らかになったことから、進捗状況はおおむね順調と判断した。
|
Strategy for Future Research Activity |
IAV感染前に細胞が口腔細菌にさらされることで、インフルエンザの重症化を促進させる可能性がある。申請者は口腔細菌代謝産物により、IAVの感染が拡大すること、また炎症性サイトカインの誘導が増強されることを見出している。そこで今後は代謝産物がIAV感染拡大に働くメカニズムの解明、ならびに炎症性サイトカインや抗ウイルスタンパクの誘導に及ぼす影響ついて検討する。
|
Causes of Carryover |
研究を遂行して行く上で、必要に応じて執行した。本年度は、炎症性サイトカインや抗ウイルスタンパクの解析が遅れたため、抗体等試薬の使用が少なく済んだため、当初の見込額と執行額が異なった。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
研究計画に変更はなく、口腔細菌がIAV感染に及ぼす影響を検討するため、次年度において研究試薬等に繰越した研究費も含めて使用する。
|
Research Products
(4 results)