2016 Fiscal Year Research-status Report
ストレングスに焦点をあてた生活習慣病予防保健指導プログラムの開発
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15K11849
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
岡久 玲子 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(医学系), 准教授 (80515619)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岩本 里織 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(医学系), 教授 (20321276)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ストレングス / 生活習慣病予防 / 保健指導 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度は、地域住民のもつ力や強さ(以下、ストレングス)に焦点を当てた生活習慣病予防保健指導プログラムの開発過程として、1.保健指導対象者のもつストレングスの特徴の明確化、2.保健指導者が保健指導に用いるストレングスアセスメントシートの作成に取り組んだ。 具体的には、ストレングス測定尺度 Strengths Measurement Scale(以下、SMS)を用いた国内でのアンケート調査の実施、ストレングスアセスメントシート(SAS)原案の作成及び保健指導者を対象としたグループインタビューによるSAS原案の改良を実施した。 SMSを用いた調査は20歳以上65歳未満の成人1,000人を対象に実施した。健診機関の協力を得て、人間ドック及び特定健康診査(被扶養者)等の受診者に無記名自記式アンケート調査を実施した。アンケート項目は、当初計画していた基本属性、生活習慣、行動変容ステージ、主観的健康管理能力尺度8項目(5段階評価)、SMS36項目(5段階評価)に加え、過去1年間の生活習慣改善の有無とその内容、他者からの生活習慣(食事・運動)改善の勧めの有無(他者とは誰か:選択制)、定期的な健診・がん検診の受診の有無、SMS簡易版16項目を追加した。追加項目の検討においては、先にフィンランドで成人を対象に実施された生活習慣に関する同様のアンケート調査の項目を基に、本調査後に国際比較分析ができるように項目を厳選・追加した。また、SASのグループインタビューの結果よりSMS簡易版を作成する必要性がでてきたことより、新たに研究者間でSMS簡易版(16項目)を作成し、その信頼性と妥当性を検証するために追加項目として設定した。 SASの作成では研究者間でSAS原案を作成し、3回に分け計14人の保健指導者を対象にグループインタビューを実施しSAS原案についての改良案について討議・検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成28年度に実施したストレングスアセスメントシート(SAS)の開発過程において、グループインタビューに参加した保健指導者の共通した意見として、SASを構成するストレングス項目が36項目と多く保健指導場面で活用するのは難しいという意見が得られた。そこで、SMS簡易版を作成する必要性が生じ、同時に進めていたストレングス測定尺度(SMS)を使用した国内でのアンケート調査にSMS簡易版(案)16項目を追加しその妥当性・信頼性を検証することになった。このSMS簡易版(案)を作成するにあたり共同研究者らとの協議を重ねたためアンケート調査開始が遅れ、データー収集期間が平成29年3月まで延長された。平成29年度は、本調査結果を基にデーター分析を進め、妥当性・信頼性が確保されたSMS簡易版を含めたSAS完成版を作成する予定である。 SASの作成では、参加協力を得た保健指導者(保健師、看護師)の所属が、企業か行政かによっても、SASの使用に関するニーズが違っていることが明らかになった。使用ニーズとして3つのパターンが見出された。一つ目は、健康づくり場面でSMS36項目の自己評価によりタイプ分けを提示するもので、自分らしい健康づくりに活かしてもらうことを目的とする。二つ目は、企業での健診後の保健指導場面で、SMS簡易版を自己評価することで、自身の生活習慣改善目標設定に活かすことを目的とする。三つめは、行政での生活習慣病予防の保健指導場面で、保健師がストレングス視点をもち、保健指導の振り返りをするために用いることを目的とする。当初、SAS案をもとに保健指導での活用方法について意見を交わし、改良して一つの完成版を作成する予定であったが、様々な保健指導場面に応じたSASの開発の必要性が明らかになったことから、まず分析結果の整理をしてから目的に応じたSASの改良に移ることになった。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度の計画として、ストレングス測定尺度(SMS)を用いた調査に関しては、平成28年度に国内で実施したアンケート調査結果の分析結果を基に、フィンランドの先行調査結果との国際比較分析を行う予定である。その過程でフィンランドの研究協力者と両国の文化的背景も含めた協議を行い、生活習慣変容過程におけるストレングスの特徴を明らかにする。フィンランドでのSMS簡易版を用いた新たな調査と国際比較については、看護大学生を対象とする調査の可能性を協議中である。 ストレングスアセスメントシート(SAS)の開発については、妥当性・信頼性が確保されたSMS簡易版の項目を含めたSAS完成版を作成し、実際の保健指導場面でモデル的に使用してもらい、受診者側・保健指導者側双方の立場からその効果を検証する。SASを用いた生活習慣病予防保健指導プログラムにおいては、保健指導者側がストレングス視点をもち活用できるようなマニュアル作成も行う。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は、ストレングスアセスメントシート(SAS)の開発過程において、ストレングス測定尺度(SMS)簡易版の作成の必要性がでてきたことが大きい。SMS簡易版の作成とその妥当性・信頼性の検証のためにアンケート調査項目を見直すことになりアンケート調査時期が遅れた。そのため、次年度にアンケート調査のデーター分析とSAS完成版の作成が繰り越された。SMSを用いたアンケート調査結果の分析では、フィンランドとの国際比較も計画しており、これに関するメトロポリア応用科学大学(フィンランド)の研究協力者との協議も、次年度に延期された。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成29年度は、平成28年度に実施できなかったアンケート調査の分析とSAS完成版の作成及びそれを用いた生活習慣病予防保健指導プログラムのマニュアル作成のための費用が必要となる。データー分析はフィンランドとの国際比較分析も含むため、スカイプ会議用のパソコン、Webカメラ、フィンランドへの旅費を計上する。また、SAS完成版を用いた保健指導プログラムのモデル実施に係る経費として、マニュアルファイル作成、保健指導者への謝金、SAS完成版を用いた保健指導前後の評価のためのアンケート調査用紙、資料保存、データー分析に必要な物品類などを計上する。また、平成29年度までの研究成果の成果報告に関する費用として、学会出張費、論文投稿費等を計上する。
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Research Products
(1 results)