2015 Fiscal Year Research-status Report
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15K11914
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
唐原 一郎 富山大学, 大学院理工学研究部(理学), 教授 (60283058)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 微小重力 / 過重力 / 宇宙環境 / 生活環 / 植物 |
Outline of Annual Research Achievements |
国際宇宙ステーション(ISS)内において2009年に行った植物の生活環を全うさせるSpace Seed実験において,シロイヌナズナの野生型植物体を軌道1 G区およびµG区で63日間生育させたところ,長角果形成が影響を受けることが示唆されている.筆者らはこの実験において,軌道上でRNAlater処理された野生型の花芽試料を解析することはできなかったが,Columbiaをバックグラウンドに持つlefty/tua6変異体の花芽は得られた.そこでこれを用いて,宇宙環境において長角果形成が影響を受けた原因の手掛かりを得るため,トランスクリプトーム解析を行い,花芽における遺伝子発現に宇宙環境および微小重力環境が与える影響について解析を行った.宇宙1 G区,µG区,および地上1 G区(富山)で33日間栽培し地上に帰還後,回収されたlefty/tua6変異体の植物体より,花芽を切り出し,RNA抽出を行った.マイクロアレイ解析はAgilent Arabidopsis 2 Oligo Microarray (44K; Agilent Technologies)を用いて行った. まずµG 下および 宇宙1 G下で形成された花芽におけるトランスクリプトームの比較を行った結果,µG 下では111遺伝子の発現が2倍以上増加しており,光応答の遺伝子群などが含まれていた.また104遺伝子の発現が1/2倍以下に減少しており,防御応答に関連する遺伝子群が比較的多く含まれていた. 次に宇宙1 G下および地上1 G下で形成された花芽におけるトランスクリプトームの比較を行った.その結果,宇宙1 G下において,946遺伝子の発現が2倍以上増加しており栄養状態や飢餓応答に関する遺伝子群などが含まれていた.また1057遺伝子の発現が1/2倍以下に減少しており,高温・光および酸化ストレス応答に関する遺伝子群に加え,花粉形成に関わる遺伝子群が多く含まれていた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
栄養成長に関しては,長期過重力植物栽培システムのための栽培容器の改良や環境整備を進めると同時に,長期過重力が根系に与える影響については,側根形成などをふくめて詳細を再検証中である.葉のクロロフィル蓄積については,予備的ではあるが,色相の変化の解析結果を得ており,現在クロロフィル抽出により検証中である.支持組織の発達に重力環境が与える影響の解剖学的解析およびX線CTによる非侵襲解析の準備ができた.生殖成長に生殖成長に関しては,微小重力環境の影響解析であるSpace Seed宇宙実験の解析を優先的に行い,現時点では概要に述べた結果を得られており,概ね順調に進展していると判断される.
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Strategy for Future Research Activity |
ロックウール中の根系の解析については,試料によってはロックウールとの区別が困難なため想定よりも難航しており,何らかの打開策が必要となっている.栄養成長に関する長期過重力が根系に与える影響については,側根形成などをふくめて詳細を再検証をすすめる.支持組織の発達に重力環境が与える影響の解剖学的解析およびX線CTによる非侵襲解析の準備ができたので,その解析を進める.長期植物栽培システムについては,栽培容器の改良を進め,生殖成長までの解析を目指す.種子のプロテオミクスも進める.
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Causes of Carryover |
新たに,長期過重力植物栽培システムのための環境整備において振動評価の必要性,過重力栽培装置における重力環境が栄養成長に与える影響について,その影響の普遍性を確かめる必要が生じた.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
理由に述べた項目の実施を行う.具体的には,長期過重力植物栽培装置の振動評価とその対策に加え,振動過重力栽培装置における重力環境が栄養成長に与える影響シロイヌナズナ以外の植物での調査が必要で有り,次年度には新たな研究分担者の参加要請および研究協力者への謝金支出を計画している.
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[Journal Article] 宇宙における植物の生活環2015
Author(s)
唐原一郎, 村本雅樹, 篠原弘徳, 玉置大介, 久米篤, 蒲池浩之, 西内巧, 矢野幸子, 谷垣文章, 嶋津徹, 笠原春夫, 曽我康一, 吉田久美, 神阪盛一郎
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Journal Title
Space Utilization Research
Volume: 29
Pages: 67-68
Open Access
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[Journal Article] コケ植物を用いた宇宙実験に向けて:スペース・モスの活動報告2015
Author(s)
藤田知道, 蒲池浩之, 唐原一郎, 久米篤, 坂田洋一, 高林厚史, 田中歩, 長嶋寿江, 西山智明, 橋本博文, 長谷部光泰, 半場祐子, 日渡祐二, 松田修, 本村泰三, 矢野幸子
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Journal Title
Space Utilization Research
Volume: 26
Pages: 19-20
Open Access
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[Presentation] 宇宙における植物の生活環2016
Author(s)
唐原一郎, 玉置大介, 高橋郁佳, 西内巧, 久米篤, 蒲池浩之, 矢野幸子, 谷垣文章, 嶋津徹, 笠原春夫, 曽我康一, 吉田久美, 神阪盛一郎
Organizer
第30回宇宙環境利用シンポジウム
Place of Presentation
相模原
Year and Date
2016-01-19 – 2016-01-20
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[Presentation] 微小重力環境がシロイヌナズナの花芽におけるトランスクリプトームに与える影響 -lefty変異体を用いた解析-2015
Author(s)
玉置大介, 唐原一郎, 西内巧, 矢野幸子, 谷垣文章, 嶋津徹, 笠原春夫, 桝田大輔, 曽我康一, 若林和幸, 橋本隆, 保尊隆享, 神阪盛一郎
Organizer
日本宇宙生物科学会第29回大会
Place of Presentation
東京
Year and Date
2015-09-26 – 2015-09-27
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[Presentation] X線マイクロCTによるシロイヌナズナ吸水種子観察へのイオン液体の応用2015
Author(s)
福田安希, 橋本静佳, 唐原一郎, 山内大輔, 竹内美由紀, 玉置大介, 桑畑進, 星野真人, 上杉健太朗, 竹内晃久, 鈴木芳生, 峰雪芳宣
Organizer
日本顕微鏡学会第71回記念学術講演会
Place of Presentation
京都
Year and Date
2015-05-13 – 2015-05-15