2016 Fiscal Year Research-status Report
参加型地域防災教育・活動による災害時要援護者の住民支え合い支援体制モデルの確立
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15K11947
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Research Institution | University of Shizuoka,Shizuoka College |
Principal Investigator |
江原 勝幸 静岡県立大学短期大学部, その他部局等, 准教授 (40321351)
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Project Period (FY) |
2015-10-21 – 2019-03-31
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Keywords | 地域防災 / 災害時要援護者 / 支援者養成 / 防災キャンプ / 宿泊訓練 |
Outline of Annual Research Achievements |
1.要援護者支援調査:1)熊本市「災害福祉支援活動基礎研修」及び益城町被災地見学、大阪市「災害福祉支援活動研修講座講習会」、2)浜松市「地域の防災女子力パワーアップ講座」、3)京都市「地区防災計画学会」、4)静岡市「今、地域に求められている災害対応力」に参加し、要援護者支援に関する福祉専門職か関りや住民の実践的な取り組み・具体的な支援体制について考察した。 2.支援者養成ワークショップ:昨年度の本研究で開発した基礎講座テキスト(ワークシート)を用いて、障害当事者(視覚、聴覚、肢体不自由)や支援者(精神、知的・自閉、要介護高齢者)の講和に基づく参加型「住民支え合い防災講座」を11月4日に開催した(参加者数64名)。 3.遊び防災キャンプ:静岡県立大学短期大学部学生と共にプログラムを開発し、障害児3名・保護者3名を含む計13名で1泊2日の遊びを活用した「住民支え合い防災キャンプ」を9月18日~19日に実施した。 4.宿泊型防災研修・訓練:住民支え合い支援体制モデル地区とした静岡市駿河区西豊田学区で、指定避難所である静岡市立豊田中学校体育館において、第1日目に避難所・福祉避難室設営訓練、防災研修(大人向け・子ども向け)、宿泊体験、第2日目に要援護者避難支援訓練、災害時炊飯・炊き出し実践講座、災害時トイレ対策実践講座、災害時応急救護実践講座、介護体験実践講座を主なプログラムとした1泊2日の「地域支え合い宿泊型防災訓練」を12月3日~4日に実施した(延べ参加者数約500人、宿泊55名)。 5.研究成果等の発信:1)本年度の研究成果を報告(第1部:活動報告)・検証(第2部:パネルディスカッション)を通して地域での要援護者支援体制モデルを考察する「災害時の住民支え合い体制づくりシンポジウム」を2月4日に開催した(参加者数68名)。2)本年度の本研究実績をまとめた報告書(69頁)を作成した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は平成27年度から4か年の研究であるが、初年度は10月科研費採択となったために準備期間の位置づけに変更し、平成28年度が本研究の実質的な開始となった。その準備期間があったこともあり、住民支え合い支援体制のモデル地区での活動が年度初めよりスムーズにいき、地域住民代表者や関係者で構成した「西豊田地区地域支え合い体制づくり実行委員会」の組織化や活動を中心に、その実行委員会や学生・研究協力者との連携・協働による研究実施体制が確立し、「遊び防災キャンプ」「支援者養成ワークショップ」、「宿泊型防災訓練」、「研究成果等の発信」など地域主体の要援護者支援体制づくりに向けた住民参加型の防災教育や活動を実施することができた。 以上の研究活動については当初の予定以上に進展した部分も少なくないが、「(2)おおむね順調に進展している」と評価した理由として、キャンプ、ワークショップ、宿泊訓練、シンポジウムなどの実施方法や関係者との調整など研究活動として実施・開催することに力点が置かれてしまい、各研究活動において参加者の満足度を得るためのアンケート調査は実施したもののその活動を評価するためのデータ収集が十分でなかったことから客観的な研究結果の考察が不十分となってしまったこと(参加者の満足度は非常に高く、主観的な感覚では活動内容等はよかった)、専用HPサイト開設によるより広い対象への周知・報告等が業者都合により結果として実現できなかったことが挙げられる。ただし、今年度は専用HP開設はできなかったが、研究代表者が講師を務める「静岡県ふじのくに防災士講座」の関りから、静岡県地震防災センターHPにおいてワークショップや宿泊訓練の案内を掲示して頂き、それを見たモデル地区外参加者が少なからずいたことは当初予期していないよい面での進展であった。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度が研究全体の準備期間として研究計画実施の基盤を固まり、平成28年度は実質的な研究活動が順調に進んだことを受け、今年度はより活動を進展させるフェーズとなる。その推進方策として、1)遊び防災キャンプは第2回目実施をするだけでなく、宿泊体験が難しい自閉症等の障害児及び家族を対象に自宅での被災想定下での宿泊体験(自宅内テントや駐車場車中泊)を実施し、その結果を考察する。2)支援者養成ワークショップ及び宿泊訓練については平成28年年度で組織化した住民代表者等の「西豊田地区地域支え合い体制づくり実行委員会」活動を基に、一つは西豊田学区自治会連合会及び学区防災委員会と連携してより規模を拡大した宿泊型防災研修・訓練を継続実施することと、その中でも単位自治会の規模で、地域の居場所を拠点とする要援護者の支援体制モデルを確立することを進める。その基礎講座として位置付ける支援者養成ワークショップにおいては、平成28年度の方法・内容で継続実施するとともに、それを発展させて地域住民主体で小地域での支え合い支援拠点活動や医療保健福祉専門職のケアにつなげるための実践的な講座プログラムを開発・実施する。3)これらの研究活動の結果考察に必要なデータ収集を行い、その考察を進めると同時に、専用HP開設による活動周知や研究結果の報告・公開を行う。 これまでの災害の教訓から地域で要援護者支援は大きな課題であるが、その支援体制づくりが進まない理由は、要援護者とは日常で直接かかわりのない一般住民の関心の低さと要援護者支援に取り組むことが期待されている自主防災役員・民生委員等に過多の役割感がある。一般住民には被災・避難生活に対するイメージを高め、住民代表者には要援護者支援の具体的な方法を示す宿泊型研修・訓練の啓発用DVD作成は有効であると思われるが、その実施方法・予算等は研究を遂行する上での課題である。
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Causes of Carryover |
平成27年度は10月採択となり、予定していた研究計画が遅れ、計画全体の準備期間として位置付けたため、大幅な予算を繰り越すことになった(533,948円)。平成28年度予算(700,000円)と合わせて1,233,948円の残額は、当該年度及び次年度以降の研究で必要な物品費を主に支出(1,216,825円)することができたが、それでも平成27年度及び平成28年度の助成金が大きく、特に旅費については他外部資金研究費での支出ができたために抑えることができ、年度末での支出の調整において次年度使用額を0にはすることができず、若干(17,123円)の繰り越し額となった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成29年度は研究計画期間で最も少ない600,000円であり、充実・発展期での研究機関であるので繰越金を研究活動に生かす。具体的には、平成28年度の人件費・謝金が交付決定額を上回たったが、それは災支援者養成ワークショップにおいて聴覚障害者講師が講話(午前)だけでなくワークショップも午前と午後の終日参加することとなり、予定していた手話通訳者2名が4名に増え、その報酬が約2倍となったことから、次年度でも同様のワークショップを予定しておりその手話通訳者報酬に支出する。
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