2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K12052
|
Research Institution | Tokyo Woman's Christian University |
Principal Investigator |
田中 章浩 東京女子大学, 現代教養学部, 准教授 (80396530)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | 音声 / 言語理解 / 非言語情報 / 感情 / 魅力 |
Outline of Annual Research Achievements |
内容が理解され,記憶に残りやすいのはどのような音声であろうか.常識的には,魅力的で感情豊かな声は理解や記憶を促進し,笑顔でしゃべれば話の内容の理解や記憶も促されると考えるだろう.しかし,本研究ではそうした話し方はむしろ逆効果である可能性に着目する.具体的には,(1) 音声の感情情報処理が音声言語の理解・記憶に及ぼす影響,(2) 音声の魅力情報処理が音声言語の理解・記憶に及ぼす影響,(3) 視覚情報処理が音声言語の理解・記憶に及ぼす影響,以上3点の検討を通して,記憶に残りやすい音声の要件を明らかにすることを目的とする. 初年度である平成27年度は,上記(1)に関する検討を進めた.音声の感情情報処理が音声言語の理解および記憶に及ぼす影響について検討するため,さまざまな感情価で読み上げられた発話の内容に関する記憶および理解度を測定する実験を実施した. 一連の実験に先立って,30秒程度の文章を読み上げた発話音声を多数収録した.それぞれの文章は4種類の感情(中立,喜び,怒り,悲しみ)を込めて読み上げられた.続いて,収録した音声を刺激として用いる予備実験を実施し,内容の理解・記憶の難易度を統制した. 本実験では発話音声をヘッドホンから呈示し,呈示後に内容の記憶を問う課題への回答を求めた.実験の結果,中立感情の音声と比べて、喜び音声と悲しみ音声では文章の記憶成績が低下した.喜びと悲しみで成績が低下するとの結果は,トレードオフ仮説によって説明できる.すなわち,感情が込められた発話を聴取すると音声の感情情報への注意が喚起され,その結果として言語情報に十分な注意が向けられなくなり,内容の理解と記憶が阻害された可能性を指摘できる.一方で怒り音声では中立音声と成績が変わらなかったことから,怒り音声は注意を喚起するために,トレードオフによる成績低下が補償された可能性が想定される.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定していた実験を完了し、次の実験に向けた準備も順調に進展している.
|
Strategy for Future Research Activity |
項目(1)では音声のもつ非言語情報として感情に着目し,感情情報処理が音声言語の理解と記憶に及ぼす影響について検討した.本年度は項目(2)を実施し,項目(1)の知見を一般化する.具体的には,音声のもつ非言語情報として声の魅力に着目し,音声の魅力情報処理が音声言語の理解・記憶に及ぼす影響について検討する.こうした検討を通して,項目(1)の知見が感情に特異的であるか,それとも他の非言語情報にも共通するのかという問題に対して,一定の見通しを得ることができる. 実験に先立って,まず項目(1)と同様の手順で文章の発話音声を収録し,文章リストを作成する(感情は中立のみ).続いて,声の魅力を評定する予備実験を実施し,魅力の評定値に応じて発話者を高・中・低の3群に分ける.本実験では魅力の異なる発話音声をヘッドホンから呈示し,発話内容の理解と記憶を問う課題への回答を求める.声の魅力度によって課題成績がどのように異なるかを検討する.
|
Causes of Carryover |
人件費および被験者謝金に余裕が生じたため、次年度に使用する.
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
初年度の研究から、実験刺激の作成には想定以上の時間を要することがわかったため、人件費を当初予定より増加する.
|
Research Products
(3 results)