2016 Fiscal Year Research-status Report
オゾン破壊に影響する海洋由来の臭化物イオンの大気エアロゾル中での挙動解明
Project/Area Number |
15K12191
|
Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
新垣 雄光 琉球大学, 理学部, 教授 (80343375)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | エアロゾル / 臭素 / 光化学反応 / 活性酸素 / 有機物 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、対流圏における反応性の高いハロゲン(Cl、Br、I)化学種の重要な役割が明らかになってきた。その中でも、大気中のオゾンは活性なBr化合物と反応することで激減する。そのため、Br化合物の起源と生成機構を解明することは、大気の酸化容量を理解する上で重要である。そこで、本研究では、Br化合物の主要な起源と考えられる海塩由来Brの大気エアロゾル中での存在形態(水溶性、水不溶性など)および存在形態に影響する反応機構を解明することで、Brの大気中での挙動を明らかにすることを研究の目的とする。本研究では、実際の大気エアロゾル中のBr化合物の存在形態や化学種の構成に影響する光化学反応及び活性酸素種の役割を追求する実験とモデル溶液を用いた実験を組み合わせることで反応機構を探る。 平成28年度は、平成27年度に引き続き、沖縄島北端に位置する辺土岬大気エアロゾル観測ステーション(CHAAMS)で採取した大気エアロゾル試料中の臭化物イオン(Br-)濃度およびその他の臭素化合物、さらに水溶性化学物質の濃度を求め、各成分間の関係性を調べた。特に、水溶性の臭素化合物の中でも、BrO3-についての測定を試みた。ろ紙に含まれる全臭素(水溶性と水不溶性を含む)については還元剤(水酸化テトラメチルアンモニウム、TMAH)とマイクロウェーブを用いて分解後、誘導結合プラズマ質量分析計(ICP-MS)で定量することで、全臭素濃度として求め、それぞれの画分に含まれる臭素の割合を調べた。さらに、実大気エアロゾル抽出液にH2O2を加え313 nmの単射光を照射する光照射実験を行うことで、エアロゾル中の臭素の化学種変化(各画分の割合変化)を明らかにする実験を開始した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請書に記載した計画通り、まず、実際の大気エアロゾル中の臭化物イオンおよびその他臭素化合物に着目し、水溶性成分と水難溶性成分に大きく分けることに成功した。さらに、水溶性成分については、イオンクロマトグラフィーとICP-MSを用いて分析することで、臭化物イオン(Br-)とその他の水溶性Br化合物(例えば、BrO3-)に分離することに成功した。BrO3-については、近隣の研究機関に分析を依頼した。また、実大気エアロゾル抽出液にH2O2を加え313 nmの単射光を照射する光照射実験を行うことで,エアロゾル中の臭素の化学種変化を明らかにする研究に着手した。よって、研究は順調に進展していると判断した。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は、モデル溶液のpHを変化させたり、環境中の有機物の代表としてフルボ酸を添加したりすることで,実験条件を変え,Br化学種変化に対する各化学種の影響の有無および影響度合いを詳細に調べる。研究成果を総合的に解析し,エアロゾル中のBrの挙動を明らかにする。
|
Causes of Carryover |
当初の計画よりも、試薬や器具等の購入数(量)を減らしても想定していた実験が進んだことと、学内の運営に関する出張等が続いたことで、想定していた学会で発表できずに旅費が残ってしまったために、予算残となった。ただし、平成29年度には、修士課程の学生2名と共に、国内・国外での学会参加や試薬・ガラス器具等の消耗品の購入を予定しているため、研究費を無駄にすることなく執行する予定である。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成29年度において、試薬および器具類(HPLCのカラムを含む)の消耗品を購入する。また、国内および外国における学会に修士課程の学生2名とともに参加し、研究成果の発表を予定している。
|
Research Products
(2 results)