2015 Fiscal Year Research-status Report
放射性セシウムの土壌沈着深さがわかるガンマ線カメラの開発
Project/Area Number |
15K12208
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
片岡 淳 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (90334507)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 土壌汚染 / 3D深度分布 / 散乱ガンマ線 / ガンマ線カメラ |
Outline of Annual Research Achievements |
Geant4シミュレータを用いて、様々な素材・厚みの散乱物質が存在する場合に、137Cs からの直接ガンマ線(662keV)、散乱ガンマ線の寄与を詳細なデータ・テーブルに纏めた。これまで、直接ガンマ線から僅かに低いエネルギー(光電ピークとコンプトンエッジの境界 500 keV付近)を散乱成分として用いた研究は知られている。本研究では、これより遥かに低い50-150 keV のほうが、散乱成分の検知に感度が高いことを発見し、これを実験とシミュレーションから検証した。続いて、厚みの異なる土壌やコンクリート中に線源を埋め込んだ場合、散乱ガンマ線の画像が広がる様子(分散の値)をシミュレーションで求め、直接ガンマ線による広がりと比較した。いずれも非破壊かつ独立な手法であり、。二つの異なる手法でガンマ線源の位置(深さ)を5ミリ程度の精度で特定できることが示せた。実際に福島・浪江の森林部で取得したスペクトルに対して上記手法を適用し、指数関数的分布(∝ exp[-z/β])を仮定した場合のbuffer depth としてβ=2.2±0.5 cm を得た。これは、スクレーパープレートによる直接的調査で求めた値である約 3cm と概ね良く一致している。さらに、実験室で厚みの異なるコンクリート板 (0cm, 3cm, 6cm)で線源を挟み、Ce:GAGGシンチレータ と MPPC アレイを用いたピンホールカメラを用いて上方から撮影した。この実験から、実際にガンマ線の空間分布がコンクリートの厚みとともに増加する結果を示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
散乱体を置いた場合、実測による散乱ガンマ線のスペクトル変化はシミュレーション通りであり、非常に高精度で深さが推測できることが分かった。また、福島実地のスペクトルもシミュレーションからほぼ完璧に再現され、本研究の手法の有用性が示された。散乱ガンマ線のイメージングについて、既存のコンプトンカメラは200keV以下に感度が無く、新たな装置開発が必要である。そこで、0.5mm角 42x42アレイの高精細シンチレータとピンホールコリメータからなるカメラを新たに製作し、実験室環境でイメージを取ることに成功した。これらは一年目の計画範囲を既に超えているが、一方で散乱物質はコンクリート、水、土壌を細かく網羅できているわけではないため、全体として「おおむね順調に進展している」と自己評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度については、基本的に点線源のみを仮定したシミュレーションと実測を行ってきた。しかしながら、実際のフィールドでは様々な深さに強さと広がりが異なる放射性核種が分布していることも珍しくなく、平成28年度はこのような複雑な状況についても考察と検証を始める。詳細なシミュレーションと実験検証が不可欠であり、まずは実験室で強度の異なる複数線源を様々な深さに埋め込んだ場合を想定し、その結果をチューニングしたうえで、福島・浪江等の実測データへと応用展開したい。また、ガンマ線カメラについても平成27年度はコンプトンカメラ(直接成分:662keV)とピンホールカメラ(散乱成分:50-150keV)の直接的な画像比較には至っていない。平成28年度はこれら二つを加味したフュージョン画像を作成するなど、スペクトルと画像解析の両面から迅速かつ正確に、線源深さを決定する手法を確立したい。
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Research Products
(3 results)