2015 Fiscal Year Research-status Report
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15K12411
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
溝上 慎一 京都大学, 高等教育研究開発推進センター, 教授 (00283656)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
本田 周二 島根大学, キャリアセンター, 講師 (00599706)
森 朋子 関西大学, 教育推進部, 准教授 (50397767)
三保 紀裕 京都学園大学, 経済経営学部, 講師 (80604743)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | アクティブラーニング / 反転授業 / 教育効果 / 授業デザイン |
Outline of Annual Research Achievements |
昨今の大学教育改革はますます教育方法の改善にその重きを置いている。2014年度末に発表されたいわゆる高大接続答申では、大学入試改革の指針に付随し、大学における「教育改革の断行」が謳われており、その際に推奨するアクティブラーニングの事例として挙がっているのが反転学習である。しかし日本においてはまだその効果や学びの構造は明らかになっていない。 研究は、実際に授業を行う授業担当者と、その効果を質的・量的に調査する研究者がグループとなり、次の調査を行った。1)個々の授業の成果を測る受講者対象のプレポストアンケート、2)授業デザインのタイプ分け、3)授業における学習者同士の発話分析、である。1)は個別の授業に関するプレポストではあるものの、共通様式を用いることによって反転学習受講者全体の学びの傾向を明らかにすることができる。ここでは、1)と2)について報告する。 1)反転学習を採り入れた7授業に協力を頂き、プレ・ポスト調査を実施した。分析の結果、授業内でアクティブラーニングを通じた学びのプロセスが生じている度合いが高い授業では、深い学習アプローチや学習意欲の上昇がみられたこと、そして、予習の仕方にも内容理解を深めるような形での変化が生じていた。内容理解を深めるための予習の仕方が、授業内でのアクティブラーニングをより活発なものとする役割を担っているようであった。 2)13の反転学習を取り入れた授業において、その授業デザインの類似性で取りまとめを行ったところ、3つのタイプに区分された。1)完全習得学習型、2)高次能力育成型、3)ダブル・ティーチング型である。反転授業は、事前学習に講義動画等を用いることに注目が集まるが、1)と2)のタイプで理解の向上や知識の活用などの深い学習がより促進された授業は、対面授業のアクティブラーニングが影響している場合が多い(森 2014)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
・反転学習を導入している十数の授業を対象として、プレポストのデータをしっかり収集することができている。 ・分析の視点も、1)プレポストの量的分析、2)授業デザインのタイプ分け3)学習者の発話分析、と多次元的に設定し、反転学習の実証的検討を重ねている。 ・本課題は、申請当時より、反転学習をアクティブラーニングの1つとして理論的に位置づけ、その上での実証的検討を進めているが、この理論的な体系化作業もかなり進められて、2年目の成果に繋げられているから。
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Strategy for Future Research Activity |
・1年目の授業データを分析する作業がけっこう残っている。これをしっかり進めることが1つ。 ・学習者の発話分析がかなり大変な作業だが、これもしっかり進めたい。 ・引き続き、反転学習を取り入れている授業のプレポストのデータを収集しており、反転学習の知見の安定性を確認したり、新しい知見を得たりすることに努めたい。
・申請書ではSD研修まで含めて「反転学習」という用語を用いていたが、近年主唱者のひとりであるバーグマンが「反転学習」を、「反転授業」のより精度を上げた学習概念として提示しており、概念のコンフリクトを起こしている。この概念的問題を今年は解決したい。
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Causes of Carryover |
データ入力で雇用していた事務補佐員が持病の発作で自宅療養となったため、支払と作業が予定通りおこなわれなかったため。また、研究分担者の一人に、出張予定が1つ変更になったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
事務補佐員は仕事に復帰して、遅れた作業を取り戻すべく、作業をしてくれている。研究分担者の出張(学会参加・発表)も翌年度でなされる予定である。
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Research Products
(14 results)