2015 Fiscal Year Research-status Report
週間リズムの視点の運動科学・栄養科学による肥満予防
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15K12710
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
柴田 重信 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (10162629)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 週間リズム / 体内時計 / 時差ボケ / 肝臓 |
Outline of Annual Research Achievements |
マウスの飼育の明暗比を一時的に変えることは一時的に体内時計を遅らせたり進めたりすることである。ヒトの場合、平日は就寝時間が遅いにも関わらず例えば6時と早く起きる必要があり、明期が延びた状態にある。一方、週末は例えば10時と遅く起きる場合が多く明期が短い、あるいは明暗が後ろに伸びた状態になる。このように平日と週末で体内時計の時間と実時間(生活時間)のずれが起こる。この差が大きいと社会的時差ボケといわれる状態になる。本年度は、この週間リズムを意識した社会的時差ボケマウスの作成に成功した。このマウスの特徴は、3-6時間の明暗の後退で土日に体内時計が遅れてしまうと、次の月曜から金曜にかけて、補正することが困難になり、常に2-3時間遅れた状態になっていることが分った。中心時計の視交叉上核のリズムをex-vivoで観察すると、金曜日には体内時計の遅れは戻る方向であったが、末梢時計の肝臓は遅れたままであった。末梢時計の位相はIVISで観察することができた。また、この社会的時差ボケモデルマウスを高脂肪食下で飼育すると、対照の正常明暗飼育マウスに比較して、肥満になることが分った。 次に、1週間7日間すべて高脂肪食を与える群(1)、普通食を与える群(2)、5日間は高脂肪食で2日間は普通食を与える群(3)、2日間は高脂肪食で5日間は普通食を与える群(4)の4群を用意した。この状態で4-5週間飼育し、餌を切り替えるときに体重を測定した。その結果、(1)、(3)、(4)、(2)の順番に体重が重かった。特に(1)と(3)の差は小さく、また(4)と(2)の差も小さかった。また面白いことに、(3)のグループは、高脂肪提示の5日間は体重が急速に増大し、普通食提示の2日間は体重増加が止まった。すなわち、マウスは5日、2日の提示間隔を学習することができた。このように、マウスでも後天的に1週間のスケジュールを学習することが判明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
まず、1週間単位である社会的時差ボケマウスの開発ができたことは研究目標を大いに達成できたことになる。また、このモデルマウスの妥当性を視交叉上核のリズムの位相をex-vivoで明らかにし、かつ肝臓などの末梢臓器の体内時計の位相変位はIVISにより明らかにすることができた。社会的時差ボケでは視交叉上核の時計は週の後半では少し戻る傾向が見られるが、肝臓などの末梢時計は遅れたままであり、このことが、生体の不調和をもたらすことを強く示唆できた。このような研究成果により、初期の目標は十分に達成できたと考えられる。 一方で、週間リズム形成のために5日間あるいは2日間の高脂肪食負荷のモデルを作り、マウスに1週間の食生活パターンを覚えさせることに成功した。本方法によりマウスは、高脂肪食と普通食の提示パターンを学習し、7日間の高脂肪食マウスと同様に肥満することが分った。このモデルの開発も非常にユニークであり、週間単位のモデル動物の作成に大いに貢献でき、目標は十分に達成できた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究方針としてはまず、社会的時差ボケを軽減させる方法の開発をあげることができる。この時差ボケは土日に明期が延長し、体内時計が遅れることが原因である。そこで、光入力を断ち切るために、光情報を担う伝達物質であるグルタミン酸の拮抗薬、MK801やテアニンを投与し、防ぐことが可能か否かを調べる。一方で、遅れを戻す力が弱いため、金曜日になっても時計が遅れたままである。そこで、月から金までをマウスの起床に合わせてカフェインを投与する。我々の最近の研究ではカフェインが体内時計の位相を変えることを報告しているので、この効果を利用する。さらに社会的時差ボケマウスの新規物体学習能力を調べることにより、認知機構に異常があるか否かについて明らかになる。高脂肪食5日、普通食2日のモデルの肥満に対して、運動による抗肥満効果を試す。具体的には高脂肪食を摂取する日時に合わせて輪回し運動を負荷する。このことによって、体重増加が抑制されることを期待し、これをヒトの健康行動パターンに挿入する。
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Research Products
(8 results)