2015 Fiscal Year Research-status Report
なぜゴカイ類を食べるのか?:アジア・太平洋島嶼部における食料選択の総合的地域研究
Project/Area Number |
15K12783
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
古澤 拓郎 京都大学, アジア・アフリカ地域研究研究科, 准教授 (50422457)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
清水 華 東京大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (80401032)
小谷 真吾 千葉大学, 文学部, 准教授 (90375600)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ゴカイ類 / 生殖群泳 / 在来暦法 / 小スンダ列島 / ロンボク島 / スンバ島 |
Outline of Annual Research Achievements |
世界的なゴカイ類の生態と分類を明らかにするために、広範な資料を収集するとともに、国内においてゴカイ類の採取および同定の作業を行った。特に生殖群泳に関わる環境要因を分析し、群泳時期を推定するための因子を整理した。 ゴカイ類の生殖群泳に伴いアジア太平洋各地で行われる儀礼について、広範な資料を収集し、その共通点・相違点を整理した。在来暦法における役割、とりわけ置閏法としての機能を分析し、数理的な分析も加えた。 インドネシア小スンダ列島におけるフィールドワークを実施した。ロンボク島ではバウ・ニャレという、ゴカイ類採集を伴う儀礼を観察した。儀礼の記録とともに、その食料としての消費方法、その時の日時・天体の動き、人々との生活とのかかわりを明らかにした。またスンバ島西部では、ゴカイ類群泳までの重層的な数々の儀礼を記録し、群泳とともに行われるパソーラ祭りを観察した。スンバ島ではさらに、在来暦法におけるゴカイ類群泳の位置付けを調査した。また、ゴカイ類採取を行う社会とそうでない社会、ゴカイ類を食する社会とそうでない社会を比較文化的に調査した。 さらに人工衛星画像や、気温・降水データを組み合わせ、気象と農耕とゴカイ類群泳の時間的関係についても解析した。 研究メンバーでの情報交換を活発に行い、国内外のゴカイ類専門家との交流も行った。 結果の一部は第33回日本オセアニア学会で発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初予定通り、ゴカイ類の生態についての研究、ゴカイ類食の研究、在来暦法の研究、「楽しみ」についての研究、生活との関係についての研究を一通り行うことができた。とりわけ、予測困難なゴカイ類生殖群泳に立ち会うことができ、さらに年に1回の大祭にも参加することができ、当初の計画以上に進展することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究から、小スンダ列島で、祀られ・食される対象となるゴカイ類の種が、これまでに記載されてきたものとは異なる可能性が明らかになっており、その生態と分類についてさらなる研究が必要である。また、サモアやパプアニューギニア・トロブリアンド諸島など、他地域の比較調査を進める必要がある。 一方、食料としての摂取量が極めて少ないことも明らかになったため、栄養学的分析は控えめにして、儀礼、在来暦法、楽しみという観点からの調査に重点を置いていく。
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Research Products
(4 results)