2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K12886
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
岸江 信介 徳島大学, 大学院ソシオ・アーツ・アンド・サイエンス研究部, 教授 (90271460)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
桐村 喬 東京大学, 空間情報科学研究センター, 助教 (70584077)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 地域言語 / SNS / twitter / 大学生調査 / 新方言 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、代表的なソーシャルネットワークサービス(SNS)であるツイッターの投稿データを、日本の地域言語研究のための資料として活用し、言葉の地域差の実態を解明することを目指す。ツイッター投稿データ収集と合わせて、新方言に着目するため、大学生へのアンケート方式を採用した。 1.ツイッター投稿データ・・・2012年2月-2015年4月,日本国内2億5千万件のデータである。 2.大学生アンケート調査・・・全国各県の大学においてアンケートを行った。アンケートは、Googleフォームを採用し、回答を収集した。全てのデータは、コンピュータで集計を作成している。 ツイッターに投稿されたことばは、口語的性格を帯びている点で、地域言語に関するデータとしても活用できる可能性を秘めている。本稿では、この点を明らかにするため、ツイッターからの抽出結果と、全国の老年層を対象に実施した方言調査の結果および全国の大学生を対象に実施した方言アンケート調査結果等との比較を行い、どのような違いがみられるかについて検討を行った。その結果、全国の老年層で使用される方言がツイッター上で忠実に反映されているとは言い難いが、大学生を対象としたアンケート調査結果とは、概ね一致した。この点から、ツイッターデータをことばの地域差を見出すための資料として十分活用できる可能性があることが判明した。伝統方言の地域差の解明とまでは必ずしもいかないにしても、例えば、若者世代を中心に用いられる新しい方言や表現形式の分布のほか、「気づかない方言」などの地域差を知る手がかりになるといえるだろう。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度は、研究課題遂行のため国際学会2回、国内学会1回、研究発表をすることができた。主に、国際学会では、SNSの一つであるツイッターによる投稿データを利用した言語研究の可能性について示唆した。ツイッターとして発信されたデータが地域言語の研究に有効なのかどうかを探るため、ツイッターの投稿データから抽出した結果と、全国各地の方言研究者と連携して行った大学生を対象としたアンケート調査結果とを比較し、両者の結果にどのような差異がみられるかについて検討を行った。また、ツイッターの投稿データが地域言語の研究、特にバリエーション研究に有効であるのかどうかについて言及することができた。比較対象とするのは、共通語とは異なる非標準形式である新方言や、方言とは意識されにくい気づかない方言のほか、日本の東西で対立する伝統方言などである。相互の比較は、ともに地理的分布にもとづいている。ただ、ツイートデータは、発信地=発信者の出身地ということではないので地理的分布が正しく反映されないという指摘も予想されるが、夥しい数の回答を拠り所とし、ともに地理空間情報システム(GIS)を活用して可視化することで、各々の地理的分布がほぼ一致するという結論を導くことができる。このようにして、伝統的な方言分布の対立や、昨今、SNSで使用されるようになった新語や新方言および気づかない方言などの分布を明らかにするためには必ずしもアンケートや面接による調査によらずとも、ツイートデータを活用することによってその目的がある程度は果たせること、すなわち地域言語研究にツイートデータが有効であるといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、引き続き国際・国内学会で研究発表を行うとともに、2年目の進捗状況に応じて、引き続きツイッターデータ収集、大学生調査収集およびデータ整理を行う。データを整理しまとめることで、GIS上に映し出される言語地図から、相対的変化を示し、新たな理論の検証、構築を試みる。また、学会発表を積極的に行い、多くの研究者から有益を意見を得るチャンスをつかむ。それを参考に持論を改善し、研究発表で取り上げた内容のいくつかを、論文にまとめ公刊をする。
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Causes of Carryover |
当初予定していた、国際学会が2016年度開催となったため、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
繰り越し分については、旅費と合わせて使用する予定である。
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Research Products
(10 results)