2017 Fiscal Year Research-status Report
感受概念の言語化に注目した教育実習生の実践知獲得プロセスの研究
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15K12913
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
長嶺 寿宣 熊本大学, 教育学部, 准教授 (20390544)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
飯田 敦史 群馬大学, 大学教育・学生支援機構, 准教授 (50622122)
藤枝 豊 共愛学園前橋国際大学, 国際社会学部, 教授 (60406288)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 英語教師 / 教師成長 / 教育実習 / 実践的知識 / リフレクション / 情動 / 感情 / 認知 |
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度も,研究代表者1名,研究分担者2名の計3名から成る組織で研究を遂行した。熊本地震の影響で前年度に遅延していた工程を効率よく前に進め,研究者全員で入手済みのすべての質的データの分析結果を統合し,研究成果を複数の媒体で公表することを主たる目的とした。本研究のテーマである「暗黙知の言語化と実践的知識の獲得プロセスの解明」に関しては,被験者(教育実習生)の認知的因子に感情・情動を範疇とする様々な因子が社会文化的な外的因子と複雑に絡み合っていること,「授業を振り返り経験から意味を見出す行為」は単なる認知的活動ではなく,感情・情動的活動でもあることが明らかとなった。被験者は,教職経験が不足しているがゆえに,授業を振り返る際の着眼点が教室で経験した「ネガティブな事象」となる傾向が強く,またそのネガティブな事象を思惟するプロセスが,被験者にとって「影響力のある他者」(被験者の親【理想の教師像】)の存在による多大な心理的影響を受けていることがわかった。教師としての成長に不可欠とされるリフレクション(振り返り,省察)を通して実践的知識を顕在化させるには,経験の感情・情動的側面を意識的に探求することが重要であり,身体感覚を通して形成される「感受概念」を基に言語化することが効果的であることが示唆された。当該年度は,研究者間の連携強化を図るためにコラボレーション・ツール Stride(Atlassian)を導入し,各種文書・資料の共有とオンライン・ミーティングを複数回実施した。したがって,先述の研究結果は,各研究者が導き出した解釈・結論の相違・類似点の検証を経たものであり,研究者間における間主観性を確認済みである。なお,当該年度の研究成果は,国内学会等での口頭発表2件,国際学会での口頭発表2件,研究論文1本,学術図書(和書)の分担執筆1件として公表することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度を通して複数回開催したオンライン・ミーティングによって,研究計画全体の見直しと進捗状況の確認をスムーズに行い,協働作業を効率よく進めることができた。結果として,前年度に遅延した工程をほぼ計画通りに完了することができ,複数の媒体で研究成果を公表することができた。加えて,研究実施期間の延長(補助事業期間の延長)申請が認可されたため,次年度も中・長期のスパンで震災による研究活動への影響を払拭することが可能となった。当該研究はおおむね順調に進展していると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
研究代表者は,次年度以降,一般社団法人大学英語教育会(JACET)の研究会(SIG)言語教師認知研究会の代表を務める。当該SIG研究会メンバーと本研究組織の連携を推進し,研究成果の共有やフィードバックの入手を試みることで本研究のさらなる進展を目指すとともに,本科研を発展させた共同研究プロジェクトの立案(本科研完了後の新たな科研申請)にも鋭意努力する。
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Causes of Carryover |
震災による影響で遅延したが,当該年度に刊行予定であった書籍の製作に必要な諸経費に充てる。この書籍(和書)は,本研究の研究成果(パイロット・スタディおよびメインの研究)を総括する形で次年度に刊行する。
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Research Products
(6 results)