2015 Fiscal Year Research-status Report
情報化時代における新たな史料学構築の可能性 : 『唐六典』を例として
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15K12938
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
小島 浩之 東京大学, 経済学研究科(研究院), 講師 (70334224)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
徳永 洋介 富山大学, 人文学部, 教授 (10293276)
中村 正人 金沢大学, 法学系, 教授 (60237427)
丸橋 充拓 島根大学, 法文学部, 教授 (10325029)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 文献学 / 電子資料 / 律令制 / 天聖令 / 史料批判 / 正統論 / 官僚制 / 唐六典 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度は6月、8月、10月に東京大学経済学部、11月に富山大学人文学部において研究会を開催し、『唐六典』巻一「三師・三公・尚書都省」から巻二「吏部」の途中までを、毎回担当者を決めて精読し、文献基礎研究班、文献応用研究班のメンバーを中心に全体で討論した。その際に特に、テキスト間の異同や、典拠、過去の研究論文、新出の出土資料を含めた関連資料との比較を怠らないように留意した。特に新出資料については、写真版やインターネットでの情報を典拠としてどのように取り扱うかに注意を払った。 また平成27年11月には、富山大学人文学部東洋史研究室との共催で、シンポジウム「分裂する中国―二つの南北朝―」を開催した。シンポジムでは4本の報告に基づき全体討論が行われたが、本研究メンバーは報告者2名、コメンテーター2名、司会者2名を分担した。 4世紀から6世紀の南北朝時代と10世紀から13世紀の宋遼金時代は、中国が実質的な南北分離の状況にあった時代であり、隋代から唐代前半期におよぶ約百五十年を除けば、後漢の滅亡から元の成立にいたる千年は中国が政治的な分裂を繰り返したと見なし得る。本研究チームが分析の対象とする『唐六典』は、分裂の狭間で中国が一つであった唐代前半までをまとめたもので、かつ唐より後の王朝が政治制度の典拠として用いたという特徴をもつ。このため『唐六典』成立前後の時代の王朝の正統論や、中華意識を研究メンバー以外の専門家を交えて、総合的に討論でき、今後の当該研究チームの活動にとって非常に有意義なシンポジウムとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
テキストの異同の校合と、精読のための他資料や過去の研究論文との比較検討に、当初想定以上に時間を費やしているため。
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Strategy for Future Research Activity |
当初予定通り『唐六典』の巻二、巻五、巻四の順に精読を進めて、研究メンバー内で内容合意の得られたところから順次成果の公表に務める。 研究スピードの遅延は、史料の精読かつ多人数での多面的・総合的検討のためには、半ばやむを得ないことでもあるが、少しでも改善できるように、担当者のレジュメの事前配布などを奨励して、時間の節約に努めたい。
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Causes of Carryover |
研究の進捗の遅れから、電子テキストや訳註の公表・刊行を見合わせたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
訳註稿の刊行と、遠方からの研究協力者への旅費の支給を検討している。
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Research Products
(15 results)