2017 Fiscal Year Research-status Report
美術の著作者保護の観点からの著作権法の再検討-追及権導入の戦略的立法論
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15K12983
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
高林 龍 早稲田大学, 法学学術院, 教授 (90277765)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 追及権 / 欧州連合 / 美術の著作者 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、平成27(2015)年度の開始時点より、シンポジウムを2年間継続して行ってきた。平成29(2017)年度においては、追及権試案を基に、国内外への試案の提示と検討が行われた。ここでいう「追及権試案」とは、追及権を日本に導入するとすれば如何なる形で導入すべきかといった観点から本研究チームによって策定され、同年2月のシンポジウムで発表したものであり、同シンポジウムでの各参加者の意見と本研究チームによるこれまで継続してきた研究内容をもとに再検討された。 平成29(2017)年度の主要な活動としては、国内外に本試案を知らしめたことが挙げられる。まず、2017年4月に世界所有権機関(WIPO)は、WIPOの著作権関連常設委員会(SCCR)において追及権を今後の議題として取り上げるか否かといった点を検討するために、5月のSCCR34 の直前に追及権に係る国際シンポジウムを主催した。そこには、各国を代表するアーティスト、著作権管理団体代表、および学者等が招かれそれぞれの立場から追及権制度導入に係る意見を述べたが、本研究の協力者である早稲田大学招聘研究員小川明子氏も招聘され、本研究助成をもとに策定された追及権試案を発表するという機会を得ている。そして、国内に向けては、追及権試案に係る論考を2本発表している。 また、平成27年10月にニューヨークで開催されたCISACの視覚芸術部門の国際会議The International Council of Creators of Graphic, Plastic and Photographic Arts (CIAGP)には、小川明子招聘研究員が招聘されている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
三年目以降の研究実施計画は、最初の二年間の検討を基に、日本版追及権試案を作成することが予定されていた。しかし、二年間ですでに2回の国際シンポジウムを開催し、2年目の終わりに追及権試案の原案が提示され、3年目である平成29(2017)年度には、国内外における追及権試案の発表が行われた。 研究の進捗という観点からすれば、当初の計画は2年目ですでに達成し、現在は、この試案をさらに詳細に分析し、今後どのような形で立法に結び付けられるかを検討する段階に入っているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
本挑戦的萌芽研究の当初の目的である日本版追及権試案の策定の第一段階はある一定レベルで完了しつつある。ただし、実際の法制度として導入するためには、このような試案を実際の美術品市場関係者や美術家の間に浸透させ、かつ、市場と試案との間の乖離をできる限り狭めていくことが必要である。今後は、試案を拡大させて、より具体的な点にも踏み込んだ法試案を確立していくことを目指す。
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Causes of Carryover |
初年度である平成27(2015)年度内に、当初の予定よりも早くシンポジウム開催が可能となったため、予算の一部を前倒しした。翌平成28(2016)年度にもシンポジウムを開催したが、共催者である著作権協会国際連合(CISAC)の開催費用負担があったため、平成28(2016)年度内に予算を使い切っていなかった。 最終年度である平成29(2017)年度には、世界知的所有権機関(WIPO)からの招聘に依り追及権コンフェレンスに参加したが、先方からの招聘であることから予算を使用することはなかった。従い、平成30(2018)年度に、これまでの総括としてのセミナーあるいはシンポジウムを開催する経費に充てることにしたい。
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Research Products
(3 results)