2016 Fiscal Year Research-status Report
社会的コンテクストの中での協調及び利他的行動の認知神経基盤
Project/Area Number |
15K12987
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
加藤 淳子 東京大学, 大学院法学政治学研究科(法学部), 教授 (00251314)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | 神経科学 / 社会的行動 |
Outline of Annual Research Achievements |
再分配における平等の問題は、福祉国家の実証研究で現実の政策形成やその効果を通して研究される一方、哲学や思想などにおいても多くの関心を引いてきた。その一方で、その背後にある動機付けや心理過程については、直接のデータをもって分析されることはほとんどない。本研究は、福祉国家の所得階層構造(高中低所得層)を踏まえ実際の再分配の問題を考えるのに呈した実験課題を設定し、その際の参加者の脳の活動を計測することで、平等をめぐる心理過程の解明を目的とする。具体的には、参加者が仮想的な社会において与えられた社会的位置(所得階層)がわかっている場合とわかっていない場合(無知のベイルがない場合とある場合)に所得分配をどのようにするか個人として投票する際、また投票による社会的決定を知らされた際の能の活動に焦点を当てる。本年度は、データの解析を進め、個人として決定(投票)を行い際の脳の活動に関しては論文の形でまとめ学会誌に投稿中である。無知のベイル下の平等の支持の背景には、自らの将来の状況を予想したり他者の観点や考えを理解する心理的投影に関わる脳内過程(具体的にはそれぞれ尾状核と前帯状回の活動)が関わることがわかった。また実験前に、事前質問票により、参加者の平等への選好を数値化し、実験とは独立した態度指標により、参加者を平等への選好が高い集団と低い集団に分けた。その集団間で、評価の際の脳の活動(島皮質など)が、異なることがわかり、こちらの成果は脳神経科学の学際的研究をテーマとしたシンポジウムで発表(ポスター)した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「概要」で詳述したように、データの解析は終わり、学術専門誌への投稿とシンポジウムの発表まで行えたため。
|
Strategy for Future Research Activity |
学術専門誌への決定側面の分析の論文の発表を進めるとともに、評価側面の分析の論文もの執筆を進める。
|
Causes of Carryover |
論文の学術誌への掲載に関わる費用を計上していたが、論文の審査過程が長引き翌年度にずれ込んだため。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
論文の学術誌への掲載に関わる費用として使用する。
|
Research Products
(1 results)