2016 Fiscal Year Research-status Report
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15K13004
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
岡田 章 京都大学, 経済研究所, 教授 (90152298)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
今井 晴雄 大正大学, 地域創生学部, 教授 (10144396)
米崎 克彦 同志社大学, 研究開発推進機構, 研究員 (70599183)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 社会規範 / 交渉理論 / 実験とアンケート |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、社会規範を取り入れて既存の交渉理論を再構築し、理論と実験の両面から社会規範が交渉行動と交渉帰結に及ぼす影響を分析することである。平成28年度の研究成果は次の通りである。 (1)経済学、社会学、社会心理学、政治学、文化人類学、ゲーム実験などの関連分野の文献サーベイや研究情報の探索を行い、規範の定式化の理論的可能性と対応する実験の手法や結果等を検討した。(2)交渉主体が一定の社会規範の制約を受ける下での交渉問題を、相手の規範に関する認識が不完全であるようなケースに拡張する可能性について予備的分析を行った。とくに、出発点として、互いの規範が異なることを認識として共有している場合を考え、さらに、相手の規範について不確実であるような単純な不確実性の導入を検討するという方針を確認した。(3)外部性を伴う提携交渉問題における利得分配のコア概念を考察した。社会規範からの経済主体の提携による離脱に対して他の経済主体の反応行動自体が社会規範の制約を受けることを考慮して、新しい協力ゲーム解の性質を分析した。(4)社会規範と交渉行動のダイナミックスを分析するために確率的進化モデルの分析を発展させ、提携形成と提携内公平戦略が進化的に安定である条件を明らかにした。(5)分配に関する社会規範、状況の認識識別および規範の共有度の評価の調査のためのアンケート調査とその方法についての検討も継続して実施した。また、学生を対象とした授業内実験という形で、事前の行動選択の内容が予期せず事後の交渉の条件-パイのサイズ-に影響するという場合に、その与える効果を調べた。この実験では、行動選択の内容の影響が強く見られなかったと同時に、行動選択内容に十分なバラエティを与えることができなかったために、実験デザインについてのさらなる改善が必要であることを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実施計画は、(1)文献サーベイ、(2)社会規範を取り入れた交渉モデルの構築、(3)新しい協力ゲーム解の提示、(4)社会規範と交渉行動の進化モデルの構築、(5)人々の分配に関する社会規範等に関するアンケート調査、から構成されており、いずれの項目においても一定の研究進展を見た。 (1)の文献サーベイにおいては、アメリカ経済学会でのカラゴゾグル他による実験結果が大いに参考になった。とくに、実験内容と直接には関わりがないが、被験者グループには何らかの差異を認められるであろう結果を被験者に知らせることによって、実験結果に有意な差を生み出すことに成功しているからであり、今後の実験デザインに大いに期待できる。同様に、バランスキーの未公刊論文からも、過去の行動に由来する交渉への影響を吟味する枠組みが用いられており、実験デザインの上で参考となった。(2)社会規範を取り入れた交渉モデルの構築では、実験のフレーミングを操作変数として取り込むような解を検討するとよいという着想が生まれた。(3)新しい協力ゲーム解の提示については、社会規範と非対称情報の関係についてさらに分析を進める必要がある。(4)社会規範と交渉行動の進化モデルの研究については、確率的進化モデルの分析に進展があり、提携形成と提携内公平戦略が進化的に安定である条件を明らかにできた。(5)人々の分配に関する社会規範等に関する実験では、問題とすべき規範を過去の行動選択としてとらえる方向性が確立されてきて、実験そのものは、内容と多様な被験者の調達においてまだいっそうの進展が必要ではあるが、ほぼ予定通りの段階にあるといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度の研究成果を基に、理論と実験の両面から社会規範が交渉行動と交渉帰結に及ぼす影響を分析する。とくに、予備的な実験結果と共通した枠組みを設定するような他での実験研究の結果を合わせながら、交渉実験の研究を重点的に推進する。実験の結果での過去の行動選択内容としてとらえた規範の効果が弱かったために、これを克服する可能性をもつ追加ステージの利用について、予備実験を再度実施してから実験を行うことを計画している。また、多様な被験者を用いた比較が望ましいことを考慮しながら、そのような実験が可能な施設もしくは実験場の探索や、そのためにも必要となる被験者からの事後フィードバックの採集方法などについて、経済―ゲーム実験関係者からの意見聴取を行う予定である。また、フィールド交渉の結果についても、その観察を継続して行う。上述の交渉実験データを分析し、理論研究にフィードバックさせる。さらに、交渉理論の応用研究を実施する。応用として、貿易交渉、地球温暖化交渉、企業提携交渉などのテーマを予定している。
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Causes of Carryover |
交渉実験デザインのための文献収集のための出張旅行が一部、来年度に延期されたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度中止された交渉実験デザインのための文献収集のための旅費に支出する計画である。
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Research Products
(5 results)
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[Book] Advances in Happiness Research -A Comparative Perspective-2016
Author(s)
Toshiaki Tachibanaki(編), Tadashi Yagi, Kunio Urakawa, Katsuhiko Yonezaki, Bruno Frey, Jana Gallus, Ian Bache, Louise Reardon, Conchita D’Ambrosio, Tim Tiefenbach, Florian Kohlbacher, Andrew E. Clark, Dimitris Ballas, Danny Dorling, Tomoki Nakaya, Helena Tunstall, Kazumasa Hanaoka, Tomoya Hanibuchi
Total Pages
344(139-162)
Publisher
Springer