2015 Fiscal Year Research-status Report
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15K13069
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
川端 亮 大阪大学, 人間科学研究科, 教授 (00214677)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
渡邉 光一 関東学院大学, 経済学部, 教授 (30329205)
猪瀬 優理 龍谷大学, 社会学部, 准教授 (60455607)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 社会調査法 / 宗教 / 体験談 / ライフヒストリー |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度は研究分担者に加え、このテーマに関心のある研究者とも共同し、10回の研究会を開催した。検討内容は、クラス図、ステートマシン図などのUMLで、体験談が図示できるかどうかである。 体験談は、いくつかの状態が移り変わるものとして定義した。いくつの段階かは難しいが、最初なので、便宜的に3~4段階に区別することとした。ライフヒストリー研究ではしばしば問題となる、事実と認識の違いをどのように示すか、という議論の結果、ステートマシン図は認識を扱うにしてもある時点の認識に基づいた状態の変化を示すものなので、体験談のように認識の時点が異なると、事実の認識も異なるような場合があり、またそのように異なること自体に大きな意義がある場合には、それを使用することはふさわしくない可能性が示された。 そこで、認識の変化はオブジェクトのクラスの変化として示すのが適当ではないかという仮説に基づき、体験談をクラス図でとらえる方法が検討された。 また、一方で体験談のテキストと信仰要素の関連を示すために、質的データの分析ソフトの利用の可能性も探究した。質的データ分析ソフトは、UMLと比べるとシンタックスが単純で、関係や操作を示すシンタックスが簡単に利用できないなど、短所があることが分かった。ただし、UMLでは記述の具体的なポイントを指し示すことが困難なため、記述の部分を示すためには質的データソフトを利用し、その結果を表形式で出力し、UMLに読み込ませて、より複雑な関係を示すようにするなど、両者を連結する利用方法もさらに探求していくこととした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
27年度の研究開始当初は、宗教的な体験談をいかにしてUMLで表現できるか、ということを研究目的としていた。UMLについて学習し、UMLで表現できる方法には、目処が立ってきたと言うことで、研究は順調に進展しているが、それに加えて、質的調査データの分析において、近年取り入れられつつあるいわゆるQDAソフトを用いて、体験談を分析することも合わせて行った。その結果、QDAソフトソフトだけでは、十分に表現できない点があり、その点についてはUMLを利用した方がよいこと、一方でUMLでは、体験談のどの部分、どの記述が信仰の要素として、抽出されたり、分析されているのかが明示されにくく、その点を踏まえれば、両者の間でデータを受け渡したりした方がよいことが、わかった。 また、体験談における変化の重要性が分かり、類型化、理論化に目処が立ったことなどが計画になかった予想以上に進展している理由である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度はいくつかの体験談を用いて、UMLやQDAソフトで表現することを検討してきた。28年度においては、その表現形式をさらに洗練させ、より多くの体験談の事例に当てはめることが必要である。 さらにそのモデルを用いた場合、宗教社会学的にどのような発見があり、どのような意義があるのかを明らかにしていく必要がある。 これらの定式化ができれば、それに基づいて、インタビューを行うことは、半構造化インタビューの方法論を大きく洗練させることになる。そのことを示すために、実際にその定式化に基づいて、インタビューを実施し、定式化以前の半構造化インタビューよりも有益な、構造化された情報が得られ、モデル化できることを示すことを試みていきたい。
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Causes of Carryover |
分担研究者が関東と関西に分かれているため、当初は研究会を関東と関西で開催したが、途中から研究会が、UMLを用いた分析の研究発表を中心に検討することになり、パソコン上での操作が主要な検討課題となった。そのため、実際に会って研究会をすることを決して軽視するわけではないが、この時期のこの検討課題のためには、ネットで研究会を行うことも合理的であり、後半はネットを用いた研究会が主となった。 そのために当初予定していた旅費などの費用が少なくてすんだ。 また、配分された研究費は、申請していたものよりも少なく、とくに今後、実施予定のインタビュー調査には費用が平成28年度、29年度に配分される予定の金額以上にかかる可能性が高いため、次年度に使用することとした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度に繰り越した金額は、今年度予定される、研究会やインタビューに使用する予定である。
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