2015 Fiscal Year Research-status Report
トランスナショナルなアソシエーション活動の可能性―フェアトレードによる構造変革
Project/Area Number |
15K13070
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
太田 和宏 神戸大学, 人間発達環境学研究科, 准教授 (00273748)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | NGO / コミュニティ / フェアトレード |
Outline of Annual Research Achievements |
2015年度はフィリピン・セブに拠点を置くフェアトレードNGO[SPFTC]の組織状況に関する調査を行った。これまで農民を組織してココナツ栽培および加工を中心とするフェアトレード活動をこれまで行ってきたSPFTCに対して、フィリピン政府貿易産業省DTIが地域を拠点とする小規模事業への補助政策の枠組みを利用して、財政・技術支援を始めた。これを機に、SPFTCではココナツの加工の一部を各農村で行って付加価値を高める「コミュニティ生産」方式に取り組んでいる。その実態について現地を訪れ聞き取り調査を行った。 ここでの検討課題は、第一に新しく導入された加工システムが各農村にどのように定着をしていき、農民にいかなる変化を与えているのかという地域レベルでの問題と、第二に、草の根活動が貿易産業省の支援を受けて政府の経済振興政策の一環に組み込まれることの意義である。そこには貧困農民が単なる政治構造の改変や転換を運動として目指すだけでなく、生産流通活動に密接にかかわりながら市場や国家との新しい関係を作りを通じて生活戦略を立てていく実態がある。従来の社会運動が前提とした、国家対草の根運動、という二者対立構造ではなく、国家、市場、草の根運動が融合しながらいかなる新しい可能性と課題を生むのかという問題を検討してきた。さらに市場や草の根の連帯活動は国境を越えたトランスナショナルな広がりを持って取り組まれている。これららの意義について考察してきた。 研究協力者であるフィリピン大学第三世界研究センターのJoel Ariate氏とはマニラでの研究調査に関する情報交換を行った。調査成果の一部は論文、および国際会議での発表という形で公表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
主たる研究対象としている草の根組織SPFTCへの聞き取りは、更なる補完的な調査が必要とはいえおおむね進められた。貿易産業省DTIの支援するコミュニティ拠点生産方式の取り組みは一昨年前から緒についたばかりであり、更なる進展を見た段階での追跡調査が求められる。 さらにSPFTC以外の諸団体の実態調査、およびフィリピンのフェアトレード団体をまとめるフィリピンフェアトレード協会への聞き取りなどの課題が残されている。
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Strategy for Future Research Activity |
SPFTCへの追跡調査とともに、フィリピン・フェアトレード協会、ネグロス島で事業展開をするATJへの訪問調査、またオロンガポを拠点とするPREDAへの聞き取りを進める予定である。 すでに独自に一定程度の調査を進めているフィリピン人研究協力者との情報共有をはかり共同調査も追及する。 なお、調査成果は、論文という形で公表する予定である。
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Causes of Carryover |
昨年度、現地調査および学会発表を2回予定していたところ1回のみにとどまった。さらに研究協力者との協力体制が予定通りに機能せず、共同調査を行うことができなかった。その関連で、計画した旅費、謝金等の支出に変更が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度は2年目であり、かつ最終年度に当たるため、1年目に訪問できなかった団体(フィリピンフェアトレード協会)および実践現場(特にネグロス)に訪問し情報の収集に努める。フィリピン大学研究員との情報交換、および共同調査を予定している。
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Research Products
(2 results)