2015 Fiscal Year Research-status Report
人的およびコンテンツ的ネットワークにより構成される「メディア」概念の研究
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15K13071
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
杉山 あかし 九州大学, 比較社会文化研究科(研究院), 准教授 (60222056)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | メディア / コンテンツ / ネットワーク / 社会意識 / アイデンティティ / 大衆文化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、「人的およびコンテンツ的ネットワークにより構成されるメディア」という概念の成否を検討するものである。これまで「メディア」と言えば、新聞、テレビ、ラジオといった形で、情報伝達技術を軸に概念構成されてきた。しかし同じ内容の新聞記事がネット上で様々な形で転載・利用され、また大衆文化分野では“同じ作品”がマンガ、アニメ、映画、ライトノベルにまたがってマルチメディア展開されるなど、メディアの技術的分類とは関係なく、“同じ”内容・作品を通して、その内容・作品に接触する人々が媒介(メディエイト)される状況が出現している。社会意識、文化、アイデンティティ、さらには一定の傾向性をもった経済的消費を行なう集団や政治的な意識を共有する集団がどこで形成されるのか、といった社会科学的議論を行なうにあたって、かつての技術的分類によるメディア概念とは違った形で、人々のつながり(媒介様式)を説明する“メディア”概念が重要になっていると考えられる。 本年度はこのような“メディア”探索の第一段階として、既にマンガやアニメというコンテンツを中心に人的ネットワークが構成され、現代日本文化の一端を形成する場ともされる、同人誌即売会「コミックマーケット」の実施主体、コミックマーケット準備会の構成人員に対しグループインタビュー調査(4グループ各1時間)を行ない、55,000字の発言記録を得た。このような場に参加することによって形成されるアイデンティティや、行動様式の同調などについて、有意義なデータを得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画では研究初年度の年年度は、ネット上の情報収集を通じて新たな“メディア”概念の構築に注力するはずであったが、「人的およびコンテンツ的ネットワークにより構成される」集団そのものと言えるコミックマーケットを運営するコミックマーケット準備会に接触したところ、ちょうどコミックマーケット40周年を記念しての調査を企画中であり、その一環として本研究の調査を企画すれば、この機会以外にはできないような調査が可能であるという話をいただいた。そこで、こちらの調査を先行させることにした。 具体的成果として大量のインタビュー記録を得ることができ、当初計画とは違った形ではあるが、研究は大きく進展した。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では研究計画調書において、新たな“メディア”概念の特に必要な分野として、大衆文化分野と、政治分野について言及している。 平成28年度は、夏に参議院選挙が予定されている。この機会に政治分野について、どのようなコンテンツ志向のメディア概念の形成が可能なのか、インターネットを利用したモニター調査を実施し、実証的知見を収集する予定である。 この調査結果を、平成27年度に実施済みの大衆文化分野における調査結果と合わせて検討することにより、新たな“メディア”概念の妥当性を検討していくのが最終年度、平成29年度の作業となるであろう。
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Causes of Carryover |
コミックマーケット準備会参加者へのグループインタビュー調査が本年度の最大の支出項目となるが、これに要する費用が当初予定を大幅に下回ったため、次年度使用額が生じた。 当初、グループインタビュー調査対象者には郵送によって調査参加依頼を行なう(2000人程度に配布)予定であったが、コミックマーケット準備会の協力が得られ、準備会が行なう3回の参加者説明会の1回めと2回めにおいて参加の呼びかけを会場で直接行うこととなり郵送費が不要となった。また、グループインタビュー会場についても、3回めの説明会開催施設の会議室を提供していただいたので、グループインタビュー会場借り上げ費も不要となった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度に行なう予定の政治メディア分野での調査において、充分な質問数ならびにサンプル数を確保するために必要な調査費用として充当・使用する。
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