2015 Fiscal Year Research-status Report
日本発アイドル養成と中国青少年の主体形成に関する実証的研究
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15K13216
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Research Institution | Kyushu University of Health and Welfare |
Principal Investigator |
登坂 学 九州保健福祉大学, 社会福祉学部, 准教授 (50308144)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | アイドル養成団体 / 青少年の夢 / 居場所 / インタラクション / 主体形成 / 自己実現 / 社会教育的機能 |
Outline of Annual Research Achievements |
アイドル観をめぐって社会一般の側或いは大人の側と若者との間に共通する部分もあったが、多くのギャップがあることが明らかになった。前者は客観的・理性的ではあるがステレオタイプで硬直した眼差しでアイドル文化を解釈しているように認識される。それは日本の大人社会に比して顕著であるように感じられる。それに対し日本発アイドルグループのファンとなり、応援活動に身を投じたことのある青少年自身は柔軟に固定観念を超越し、種々の応援活動を通じ自由闊達にファンやアイドルとのインタラクションを実現していたのである。 ファンにとってアイドルグループのメンバーとは「自分は本当はこうありたい」と願う理想の姿でもある。と同時に、弱さを持つ自分の生き写しでもあり、さらにはファンの支えがなければ羽ばたくことのできない雛鳥でさえある。こうした見方は、一部において大人の側の考え方と共通する部分もあるが、その理性の枠に留まらないチャレンジ性と自己実現への欲求及び実行力を有するのが大きな違いであった。ファンにとって応援活動とは自己の居場所を確保しアイデンティティを確立する重要な行為である。 劇場公演やコンサートの入場券を欠かさず購入してメンバーの歌やダンスを鑑賞し声援を送ること。周辺グッズ及び握手券や総選挙の投票権が入ったCDを大量購入して特定のメンバーを支援すること。握手会や誕生日の食事会等様々な行事を通じてアイドルに直接声をかけること。ブログへの書き込みを通じてアイドル及びファン相互の忌憚のないやり取りをすること。これらを通じて相互交流を実現し、そこから学び成長していく学習主体であるとも考えられるのである。 その中には一歩進んで自ら若者文化の担い手になろうと当該団体のオーディションに応募し、実際に入団する青少年も多く存在する。メンバーの回顧に耳を傾けることでアイドル団体の持つ意外な社会教育的意義が一層見えてきた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
【主な原因と対策】 1)校務繁忙のため中国におけるフィールドワークに十分な時間を割くことができなかった点。これについては学科長及び同僚の理解を得つつ、事前に学内業務の調整を行い、現地に滞在する十分な時間を確保する。 2)現地研究協力者や関係者との調整が進まなかった点。前項と関連して、現地と調整するための時間的余裕がなく、現地に着いてから始めるしかなく、効率の点で問題があった。渡航前から十分な調整を行う必要性を痛感した。 3)文献研究の遅れ。第1項に関連して、ネットアーカイブを含む文字資料の読解が進まなかった点。これについては現地ファンの協力も仰ぎつつ、有用な文献資料の収集及び読解に努めたい。
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Strategy for Future Research Activity |
1年目に行ったウェブコンテンツ及びメディア分析と同時に、フィールドワークを積極的に行っていく。この取り組みは上海市を中心にする。その理由は、前述の如く、①上海が本アイドルグループの活動本拠地であるという理由のほか、②上海市はそれぞれ中国最大の商業都市であり、経済の中心地であると同時に中華民国時代から続く芸能界における一大拠点でもあり、エンターテイメントのニーズが中国で最も大きい地域であるため、③そのため中国各地の出身者が集まるとしてあるため調査対象の偏りをある程度防ぐことができる点、④上海及び広州には家族ぐるみの付き合いのある親しい友人(前述した元上海師範大学教授 他)がいるので関連資料の収集及び現地関係者への面会、青少年へのアンケート調査等実施の際に、事前のアレンジをお願いすることが可能なためである。フィールドワークにおいては、ファンである青少年との面談、聴き取り、アンケート等を重ね、自己形成の記録を紡いでいく。 具体的には、本年度第1回FWとして、8月10日~8月22日にかけて上海に滞在し、1)上海におけるプロモーション担当者へのインタビュー、2)ファンへの面談及び聴き取り(調整可能ならばメンバーとの面談)、3)上海ブックセンターにおける資料購入、4)上海市図書館における資料収集、5)報告書作成等を行う。 第2回FWとして、12月23日~1月4日にかけて上海に滞在し、1)「上海音楽谷」整備進捗状況の視察及び関係者へのインタビュー、2)SNH劇場及び周辺の視察及び関係者へのインタビュー、3)ファンへのインタビュー及びアンケート調査(可能な限りメンバーとの面談も実施)、4)上海ブックセンターにおける資料購入 5)上海市図書館における資料収集、6)報告書作成等を行う。また以上の成果に基づき、1)研究論文を1篇執筆・発表する、2)上記論文に関する学会発表を1回実施する。
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Causes of Carryover |
主な理由としては、1)パソコンの周辺商品等(プリンタインク等)を購入しなかったため、2)ホテルのランクを下げた結果、旅費を少々節約できたため、が挙げられよう。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用額により、プリンタインク及びパソコンソフト等を購入する。
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Research Products
(1 results)