2015 Fiscal Year Research-status Report
動きを生み出す分子集合体:静電気応答性の解明と応用
Project/Area Number |
15K13290
|
Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
神徳 啓邦 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 機能化学研究部門, 研究員 (60625614)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | 分子集合体 / 自己組織化 / ポルフィリン / 静電気応答 |
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度は計画1に記した「分子集合体の構造解析」と、計画2の「静電気応答性の定量化、ライブラリ化」についての取り組みを行った。計画1については静電気応答性を示す二種類の分子集合体についてUV-VIS吸収スペクトル測定や、ゼータ電位測定によって評価をおこなった。また、静電気応答性を示さない分子集合体と静電気応答性を示す分子集合体を意図的に分子分散状態にしたものについても比較測定をおこなった。これらの結果より、分子の配向状態が静電気応答性に大きくかかわっていることが確認された。また、ゼータ電位測定の結果、同一の静電気発生源に対して異なる応答性を示した分子集合体は、溶液中での分子集合体の表面電位も正と負で異なっていることが確認された。これらの結果は、国内学会において成果発表をおこなった。 当初予定していた電子顕微鏡観察とⅩ線構造解析については、所属機関の変更に伴い直近での使用が困難となったため、次年度以降に測定することを予定している。静電気応答性を示す分子構造、二次構造を解明することは、本研究においての一番の課題であり、次年度以降についても優先的に行っていく予定である。 計画2については、当初の予定通り、イオン性の化合物や、双極子モーメントの大きな化合物を合成し、分子集合体の形成と静電気応答性の確認をおこなったが、これまでのポルフィリン誘導体と同様の静電気応答現象を示す化合物を得ることはできなかった。静電気応答性の定量化に関しては、静電気量を測定する装置を導入し、静電気量と応答性の相関を調査したが、現時点では、定性的な評価にとどまっている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は所属機関の変更に伴い、実験環境が大きく変化した。そのため当初使用予定であった機器などが使用できなくなり、評価項目に変更を加えざるを得なかったが、計画にある分子集合体の構造解析に関して、予定通り進行している。ライブラリ化の為におこなった、 様々な低分子化合物の合成に関しては、候補となる化合物(アゾベンゼン誘導体やカチオン性化合物)を合成したが、期待される静電気応答性を示す化合物は得られなかった。その為、今後は静電気応答性を示すポルフィリン誘導体に絞って評価をおこなっていく予定である。 評価に関しては、ゼータ電位測定に置いて、同一化合物からなる分子集合体でありながら、真逆の表面電位を示すという、非常に興味深い現象が確認された為、次年度以降、より詳細な調査を行う予定である。
|
Strategy for Future Research Activity |
次年度以降は、ゼータ電位測定による表面電位の詳細な解析を主として、静電気応答性のメカニズムの解明に取り組む。ゼータ電位測定においては、真逆の表面電位を示した二種類のポルフィリン誘導体/配位性分子において、濃度や溶媒組成、温度等のパラメーターを変化させながら表面電位の変化を観察する。分子集合体の構造解析に関しては、単結晶XRDでの解析に取り組む。単結晶の作製が困難な場合においては、粉末や薄膜XRD測定を用いて、集積形態の違いに関する調査を行う。
|
Causes of Carryover |
所属機関の変更があり、当初の予定通り実験を進めることができなかったため、予定していた海外発表のための海外旅費を使用しなかった。また、研究の進捗状況を考え、当初購入予定であった機器の購入を延期した。上記の理由により、本年度の使用額が当初の予定よりも少額となり、次年度使用額が生じた。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
本年度は、静電気を定量的に発生させることが可能な装置の購入費用が必要となる。また、機器測定の外部依頼に伴う機器使用料の支払いが必要となる。成果公表についても、国内外での学会発表や論文発表を積極的に行う予定であり、そのための出張旅費や英文校正費用が必要になる。
|