2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K13456
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
小澤 正直 名古屋大学, 情報科学研究科, 教授 (40126313)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 量子集合論 / 公理的集合論 / 量子論 / von Neumann 代数 / 実質含意 / 佐々木含意 / 自己共役作用素 / スペクトル順序 |
Outline of Annual Research Achievements |
量子論理では,論理的含意の選択に任意性があり,佐々木含意,対偶的佐々木含意,相関論理的含意の3種の結合子が適切な候補とされている.基本的問題は,量子論の操作的な概念の分析からどのようにして適切な含意結合子を選ぶかという問題である.本研究では,このような分析を量子集合論を用いて行った.量子集合論では,これまで,佐々木含意が採用されてきたが,本研究では,他の2種の含意に基づく量子集合論を展開して,集合論の論理式に対する量子真理値の相違を調べた.これまで,ZFCの定理の量子真理値を決定するための移行原理が導かれたが,本研究では,これらの3種の量子集合論で同じ形の移行原理が成立することが示された.また,量子集合論における実数の全体ともとのvon Neumann 代数にアフィリエイトする自己共役作用素の全体の間に1対1対応が存在することが示されたが,これら3種の量子集合論でも,同等の1対1対応が成立することが示され,また,量子実数の間の等号関係の真理値は,これら3種の量子集合論でも同じ値が与えられることが示された.ここまでは,異なる含意結合子を用いてもそれらの量子集合論は基本的な部分で同等の構造をもつことが示されたが,大変興味深いことに,量子集合論における実数の順序関係については,操作的解釈に明らかな相違が示された.順序関係の操作論的意味を明らかにするために,任意の2つの物理量の継続的射影測定の測定値の結合確率によって順序関係の量子論的真理値を特徴付けた.この特徴付けによって,それぞれの含意結合子の意味の相違を,物理量の測定によって得られる確率の相違と言う操作的な方法で,世界で初めて明らかにすることができた.本研究成果は,量子物理学と論理に関する国際会議QPL2016において採択率36%の口頭発表に選ばれた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
量子論理では,論理的含意の選択に任意性があり,佐々木含意,対偶的佐々木含意,相関論理的含意の3種類が有力な候補とされてきたが,なかでも佐々木含意が多数派を占めてきた.量子集合論の研究では,1981年の竹内の研究以来,専ら佐々木含意にもとづく研究がなされてきた.しかし,佐々木含意のみを特権的に扱う根拠は明らかではなく,量子論理の含意の他の選択についても様々な研究がなされてきた.にもかかわらず,量子力学の操作的な概念の分析からどのようにして適切な含意結合子を選ぶかという問題に明確な指針が得られたとは言い難い状況であった.この状況は,これまでの量子論理の研究が,命題論理の分析に終始して,量子力学と十分な関わりを持てなかったことに起因している.一方,量子集合論の研究では,量子集合論内の実数と量子物理量の間に1対1の対応が存在することが示され,量子力学の観測命題を量子集合論の命題に埋め込むことができることが示される等,量子力学と密接な関係が明らかにされてきた.本研究では,量子集合論における含意結合子を他の2種類の論理結合子に拡張して,それぞれの量子集合論における実数の構造を調べることにより,量子的含意結合子の物理学的意義を明らかにするという構想を得,今年度の研究では,このような分析の結果,3種類の含意結合子に関して,これまでまったく予想されなかった新しい意味が見出された.つまり,佐々木含意は,過去に行われた測定値から未来の測定値の論理的推測に対応し,対偶的佐々木含意は,未来の測定値から過去の測定に関する論理的推測に対応し,相関的論理含意は,その両者の推測を同時に行うことに対応することが示された.このように,永年の課題に対して全く新しい地平を切り開くことができ,当初の計画以上の成果を上げた.この成果は,当分野で評価の高い国際会議QPL2016において採択率36%の口頭発表に選ばれた.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,今年度の研究で得られた3種の含意結合子に関する成果に基づいて,当初の計画を拡大して推進していく計画である.また,研究成果の取りまとめのために来年度に延期した国際会議の発表を行う等,広く研究成果発表のための活動を推進する.
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Causes of Carryover |
今年度の研究において当初の計画で想定した以上の研究の進展があったため,予定していた国際会議等研究発表を延期したため.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次の国際会議で研究発表を行う計画である:Workshop “Hilbert’s 6th Problem” Leicester University, UK, 2016年5月2日-4日; The 13th International Conference on Quantum Physics and Logic, University of Strathclyde, Glasgow, UK, 2016年6月6日-10日 ; The 17th Vaxjo conference on Quantum Foundations "Quantum and Beyond", 2016年6月13日-16日, Vaxjo, Sweden.
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Research Products
(13 results)