2016 Fiscal Year Research-status Report
新規拡散係数測定装置の開発および生体分子反応ダイナミクスへの応用
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15K13623
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
中曽根 祐介 京都大学, 理学研究科, 助教 (00613019)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 過渡回折格子法 / ストップトフロー / 拡散係数測定 / タンパク質反応 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は前年度に立ち上げたストップトフロー装置を用いて蛋白質の反応研究に取り組んだ。測定には過渡回折格子(TG)法を用いたが、光反応性の無いタンパク質からTG信号を得るためには、光反応性の分子でタンパク質をラベルする必要がある。そのために本研究ではフォトクロミックな性質を持つスピロピランを用いた。スピロピランの光可逆的な吸収スペクトル変化を利用することで、屈折率変化を誘起し、TG信号を得ることができると期待したためである。実際に様々なタンパク質をラベルして測定した結果、S/N比の高い信号を得ることに成功し、高い精度で拡散係数を決定できた。例えばシアノバクテリア由来の時計タンパク質KaiCをラベルして測定したところ、分子量から予想される拡散係数と良く一致する結果が得られた。またKaiCはATP存在下では六量体として安定に存在する一方、ATP非存在下では単量体になる。それぞれの条件でTG法を用いて拡散係数を測定したところ、明確な差が観測され、会合状態の違いに敏感な測定法であることを確認した。 次にストップトフローとTG法を組み合わせることで、高速混合によって引き起こされる分子間反応の時間分解検出に取り組んだ。具体的にはKaiC単量体とATPを高速混合し、その後の反応を拡散係数変化として時間分解検出することを試みた。その結果、混合後の遅延時間を長くしていくと拡散係数が減少する様子が観測され、六量体を形成する過程を捉えた結果となった。KaiC単量体が不安定であるため、解析可能なデータの採取には至っていないが、今後条件を改良することで、複合体形成ダイナミクスの詳細を明らかにする予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ストップトフロー装置の開発に成功し、サンプル消費量や時間分解能など当初の想定を上回るスペックを達成した。また高速混合により引き起こされるタンパク質反応を時間分解で検出することに成功し、本装置の応用性を示すことができた。一方で、スリット孔からの溶液噴射を用いた拡散係数測定は再現性が乏しい。噴射後に乱流が発生してしまい、拡散係数の正確な決定が困難なためである。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続きKaiCタンパク質の六量体形成ダイナミクスの解明に取り組む。単量体を安定化する条件を検討し、S/N比の高いデータの取得を達成する。他にも立ち上げたシステムをフォールディング反応や酵素反応など様々な系に適用し、その分子機構の理解に努める。一方で、格子状の溶液噴射による拡散測定を実現するために、流体シミュレーションを取り入れた条件検討を行い、スリット孔デザインや噴射速度の最適化を達成する。
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Causes of Carryover |
スリット孔を用いた溶液噴射による予備実験が難航しているため、格子間隔を変えた様々なパターンのスリットの発注を行えなかったためである。またタンパク質試料を自ら作れるようになったため、試薬代を抑えることが出来たことも理由の一つである。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
条件検討のために流体シミュレーションを行うため、そのソフト代として使用する。また予備実験に成功した際には、様々な格子間隔のスリットを改めて発注する予定である。
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Research Products
(8 results)